映画『ディア・エヴァン・ハンセン』観賞

ミュージカル映画『ディア・エヴァン・ハンセン』を観てきました。

とっても良かった。
要所要所で泣いてしまいました。

まず楽曲がいい!
冒頭のエヴァンの歌から魅了されます。

そしてストーリーも秀逸です。

いつも孤独を感じていたエヴァン。
学校にも居場所がない。
群集の中にいても、誰も自分の事なんか見ていない。いないのと同じ。だから、明日自分が消えてしまっても誰も気づかないだろう…

そんな心の声を自分宛の手紙に綴る。
「親愛なるエヴァン・ハンセンへ」
そんな手紙を「ヤバイ奴」のコナーに奪われてしまう。

ネットにアップされたりして馬鹿にされないだろうかと、必死にネット上を探し回るエヴァン。

そんなエヴァンの元に、手紙が戻ってきた。
届けてくれたのはコナーの両親。

コナーが自死したという。
その時、持っていたのはポケットに入ったその手紙だけだった。

息子の突然の死にうちひしがれる母親は、その手紙はコナーからエヴァンへの手紙だと勘違いをし、二人は親友だったのだと思い込む。

何度もそれは勘違いだと説明しようとするエヴァン。

しかしコナーの母親の、「何も話してくれなかった息子が唯一残した物がその『遺書』なのだ」「息子との事を何でもいいから聞かせて欲しい」という悲痛な思いを聞き、エヴァンは思いやりから嘘をついてしまう。

エヴァンは夏に森で木から落ちて怪我をした。その時、ずっと待っていても誰も助けには来てくれなかった。誰も自分を見つけてくれなかった。

けれど、コナーの家族にコナーとの思い出話をせがまれた時、とっさにその夏の出来事を二人の思い出にすり替えて話した。

森はコナーが子供の頃によく行った果樹園に置き換わり、二人で木に登ったのだと。
そして、自分が木から落ちた時、コナーがいてくれたと。

ドラッグの更正施設にも行っていたような息子コナーが、思い出の場所に親友と出掛けていた。そんな楽しい思い出があったなんてと、両親はたいそう喜び、そして救われた。

そしてエヴァン自身も救われた。
独りぼっちの悲しくつらい記憶が、自分には大切な友人がいたという記憶に置き換わっていく…

エヴァンがひそかに思いを寄せていたゾーイはコナーの妹だった。

ゾーイもまた苦しんでいた。
兄には色々と迷惑を掛けられた。
嫌な思い出ばかり。
兄が死んでも悲しくもない。
だけど周りは哀れみの目でみてくる。

あんなに苦しめられたのに、私は兄の死を悲しむ妹の演技をしないといけないの?

そんなゾーイを元気づける為に、エヴァンは「コナーはゾーイの事を良く見ていた。愛していた。」という事を伝えます。

ただ、それももちろん嘘。
でもゾーイへの思いはそのまま丸々エヴァンからゾーイへ伝えたい事だった。

コナーの存在を間に置くことで、エヴァンはずっと伝えられなかった事を言えた。
そしてゾーイとの距離も近付いていく。

エヴァンの両親はエヴァンが小さい頃に離婚し、母親が病院で働きながら女手一つでエヴァンを育ててきた。
一人で育てていくために、やはり仕事を優先しなければいけないことも多く、エヴァンはいつも家で独りぼっち。

そんなエヴァンを息子のように思い、家に招いてくれるコナーの両親。ゾーイとも相思相愛に。

全てが順調で、これまでになく幸せを感じるエヴァン。
コナーの家族が、まるで自分が手にしたかった理想の家族の姿だった。
その幸せを手放したくないと思った。

しかし、やはりエヴァンの嘘がばれる日が来てしまった。

幸せな疑似家族体験は終わりを告げる。

あぁ、やっぱり自分にブレーキをかけるべきだった。失敗する前にはじめから何もしなければ良かった。

そして、その時はじめてエヴァンは母に自分の本当の気持ちを伝える。

木から落ちたんじゃない。
自分で手を離したんだ。

自分の気付かない所で自死までしようとしていた息子の苦しみをはじめて理解し、エヴァンの母も自分の気持ちを伝える。

余裕がなくて、足りない部分もあることもわかっている。
でもあなたは大切な息子。
あなたを愛している。
あなたには私がいる。
あなたのそばに私はずっといるから。


とてもメッセージ性の強い歌詞で、歌唱の場面では大概涙が出てきました。

私自身、エヴァンに似ているところがあり、考え方については共感しまくりでした。

でももう一人、エヴァンと自分は似ていると言ってくる女の子がいるのですが、その子の方が近いかもしれません。

その子はとても明るく積極的で大勢の前でスピーチもこなしてしまうような女の子。

でも彼女もエヴァンと同じような精神安定剤の類いを飲んでいるという。

その子は言います。
「隠す事が上手だとしても、決して楽な訳じゃない」と。

平気そうに見えるかもしれないけど、決して辛くない訳じゃない。ヘビーだ。

私も結構平気そうに装ってしまう事があるのですが、心の中は子供の頃から闇を持っています。

私が居なくなっても誰も悲しまないんだろうなぁ。
何も変わらないんだろうなぁ。
変わらずみんなは楽しく笑って生きていけるんだろうなぁ。

でもエヴァンは変わりました。
強くなったと思います。

重たいテーマと思われるかもしれませんが、少しコメディタッチの部分もあり、そして最後はとても気持ちがスッキリしました。

ミュージカルとしても公演があったら観に行きたいなと思いました。

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