雪音の物語


 気が付くと、わたしはふかふかなベッドの
 上にいた。
 自分が誰なのか、ここがどこなのか、
 何も分からない。

 「お!ようやく起きた!」
 「よく寝る新入りだね~」
 「ほら、もう大丈夫よ」

 それぞれ話しかけてくるのは、たくさんの、
 色々な姿をした存在。
 猫耳がついている人だったり、
 角がついている人だったり、
 浮いている人だったり。

 人だったり、猫だったり、狐だったり…
 わたしのまわりには、たくさんのひとがいた。

 どうしてわたしは、ここにいるの?
 わたしは、どこから来たのだろう…

 不安になるわたしに、まわりのひとたちは
 鏡を持ってきてくれた。

 そこに映っていたのは、白い髪と、
 青と黄色のオッドアイの、女の子。
 頭の上には、髪の色と同じ耳がある。

 神様のようなひとが、
 「あなたは2つの魂を持っているのね」
 と言った。
 「大丈夫。あなたはひとりじゃない。
 その身体をくれた猫と、
  ずっと一緒になれたのよ」
 そう言って、優しく笑う神様。

 わたしがひとりにならないように、
 わたしが長く生きられるように、
 白い猫はわたしを守ってくれたのだという。

 「一緒に、たくさんの世界を見に行こうね」
 この身体をくれた猫が、そう言った気がした。

 このバーチャルの世界では、わたしのような
 存在はたくさんいるらしい。
 わたしが不安にならないように、
  黒猫のお姉さんは
 わたしに名前を教えてくれた。
 「あなたの名前は、ゆきね。
 雪の音と書いて、雪音よ。」

 この世界に生まれて、しばらく経って
 たくさんともだちができた。
 色々な世界を知ったし、見に行けた。

 これからも、わたしはこの目で、
 この手で、たくさんの世界を見にいくのだ。

 これは、ある少女のはじまりの物語。

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