吉野翼企画 女群音楽劇【初演 阿呆船】終演

吉野翼企画 女群音楽劇【初演・阿呆船】無事に終演しました!
会場に来て下さった皆様
オンライン配信で観劇して下さった皆様
本当に本当にありがとうございました!
今年で3年目の岸田理生アバンギャルドフェスティバル
吉野翼企画出演も3回目
去年【疫病流行記】をやっていた頃はまさか自分が本当の疫病に悩まされるなんて思ってもみませんでした
驚愕!

オファーを頂いた時に今年の演目は【阿呆船】でその原作がミシェル・フーコーの【狂気の歴史】だと聞いた時に調べた【阿呆船】
癩病が次第に姿を消し、狂気がそれに代わって排除されるべきものとなり、結果狂った人間(ありとあらゆる種類・階層の偏執狂、愚者、白痴、うすのろ、道化といった阿呆の群)を一隻の船に乗せて送り出したという【阿呆船】が現れたのが15世紀
はて?阿呆とは狂気とはなんぞや?と考えはしましたが最初に排除された【病】については私の中ではもはや去年の【疫病】で終了しており
今年はそれが去った次の時代の話だと思っていました

ところが!今年に入って中国でコロナウイルスが蔓延し始めあっという間に世界中に蔓延し私はまさかの【疫病】を体感する羽目に!

エンタメ業界はいち早く自粛に入りあれよあれよという間に数々の公演が中止&延期になり
お世話になった飲食店やライブハウスや映画館や劇場が続々休業しそれが続き閉店に迄追い込まれ
かくいう私も月1のイベントは中止になり、仕事は全滅し、人との接触は8割減どころか10割減になりました
早く終われという祈りからとにかく自粛した
人が活動する昼間は家から一切出ず
スーパーは夜中の人がいない時間にバイクで行き
必要のない外出を一切封じた
結果完全なるインドア派の私でも残念ながら自粛生活は全く向いてないと言うことが判明

仕事が出来ない事も
人と会えない事も
好きなお店のご飯が食べれない事も
美味しいカクテルが飲めない事も
せっかく映画館のクラウドファンディングに登録しても1日2.3本観てたらあっという間にWi-Fiが低速になった事も
うがーっっ!となりました
私は人との関わりも芸術も美食もなくなる事が耐えられない人間なのだと言うことを初めて知るという有り様
それは寂しいとかそう言う事ではなくて美味しいものも素敵なものも生きていくだけなら必要ないとされていく事に少しも共感できなくてむしろ苦しくて
日常って無駄なものに支えられてるんじゃないの?!ねぇ!!違うの??とゆるやかに発狂しかけておりました

まだまだ知らない自分がいるものだなぁとただただ猫とぐうたら過ごしていた4月のある日
演出家から「今年は全員マスク着用のマスク仮面劇にします。演目中に除菌し続けます。様子を見ながら開催決めていきます。」と連絡がありました
初めて【病】が今悩まされている【疫病】と繋がり
正しいものからフェイク迄あらゆる情報に右往左往する【阿呆】と繋がり
マスク着用はビジュアル的にも技術的にも新しくない?とアート的な感覚も刺激され
私はようやくワクワクし始めました
モノが作りたいという欲求は日がな一日猫と全く同じ生活をしてぐうたら暮らしていた私を人間に戻したのでした

そんな中「マスクなんかしながら芝居出来るか!ふざけんな!」とTwitterを賑わせた劇場再開へのガイドライン【観客と接触しないように求めるほか、出演者やスタッフも表現上困難な場合を除き原則としてマスク着用】が出まして
本当は役者はマスクしなくて良いって話だったけれど結果我々は「表現上困難ではないので」このガイドラインに乗っ取り皆様をお迎えする事に!
ヤバくない?コレ面白すぎるよってやや興奮すらしました
こんなの実現するの?と思っている皆様に
どうか期待してくれたまえ!凄い事になるよ!なにしろ私は今創作意欲に溢れているからね!!と思ってたし
誰も見た事のないこの時期だからこその舞台になりそうだなと思ってたし
模索しながら前に進んでいく処から見えてくるものきっとあると確信していた
けれどこの新しい試みは想像以上に地獄でした
いや、まぢで


まずシンプルにマスクが苦しい
大きく息が吸えない 吸うとピタッとくっついたマスクに殺されそうになる
声も響かない
そして表情が全く見えなくなる
目しか見えない
と言うことは声をいつもより明瞭に強く出さねばならない
お客様にマスクをストレスに感じさせない方法は自分の身体の呼吸の発声の使い方を変えないと無理だったしそれは本当に大変でした
しかも本格的な稽古は実質2週間
初立ち稽古時に持ち込んだ立ち位置、キャラクター、演技プランを固める形で本番を迎えたので文字通り皆で作る舞台だった様に思われます
共演者の方々があの皆様だったからあそこまで仕上がったと本当に痛感
めちゃくちゃ感謝しかない

という事で個人的に仕掛けていたあるピースをご紹介

オープニング、汽笛は港に近付いた合図だと思ってました
私がやっていた除菌の阿呆は【音の阿呆ちゃん】
最初のバケツを叩くのは合図を出す仕事でしたが色々叩くうちに楽しくなって次第に仕事を忘れちゃう
そんな彼女が汽笛の音で初めて船の外に目を向けると其処には阿呆を見に来た野次馬達がいる
後に阿呆見物に行く貴婦人が「檻の中の阿呆を見ながら飲む酒はとても美味しい」「阿呆のする事は滑稽でどことなくユーモラスで私達を楽しませてくれる」と言うのだけれど音の阿呆ちゃんは野次馬達を同じ様に感じている
だから最初の「なにも判らぬのに判った様な風をして耳を動かすのがロバの耳」この第一声があの言い方になったし、数を数え笑い転げた
ロバ、ロバ、ロバばかり!
「ヒロバ、フロバ(ひーふーみーと数えていた)ヤバーイ!広場と風呂場ww」と笑い転げ
「カサロバ(傘持ったロバ)、カサノバみたーいww」等と勝手にアダ名をつけ笑い転げ
「大量のロバ様おーなーりー!!」と笑い転げた
後に貴婦人は阿呆見物に行く途中で影の男に声をかけられそこで自分のロバの耳を指摘される
貴婦人が逃げ出したその後影の男が嘆くロバの羅列で気付いてゾッとしたらいいなと言うささやかかつ極々個人的な仕掛け

そのヒントになったのは自粛中元気がなくなっちゃった象の話からでした
実は動物園の象が人間を見てるときの脳波がペットを見てるときのものに似てるらしく
休園中ペットだと思っていたちいちゃい人間達が急に来なくなって元気が無くなっちゃったという話
可愛いな象め!

目の前にある檻の中を外から見ているつもりが実は彼方側が外で此方側が檻の中かもしれない
見ているつもりが見られている
そんな感覚
不意に気付いてゾワゾワさせられたらいいなという非常に気持ち悪い密やかな呪いみたいなやつでした笑

マスクで本番、除菌の徹底等初体験の事ばかり本当に今迄見たことのない新しい幕開けを体験させて戴きました
常に作品を第一に向き合う役者さんに助けられて
素敵なスタッフさんに助けれて
あたたかいお客様に支えられて
舞台の上で真っ直ぐ立つ事が出来ました
皆様のおかげで素晴らしい船出が出来ました
感謝の気持ちでいっぱいです

コロナウイルスの猛威はまだまだ落ち着きませんが皆様が健康で無事に過ごせます様に!と祈るばかり
人にパワーを戴いてようやく生きていける私はこれからも皆様に支えられていきたいので日々精進して参ります
うむ 頑張る
本当に本当にありがとうございました!

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