見出し画像

パターンが生み出す 「共通認識」と「創造性」

会話の中でも、言葉の認識違いによってミスコミュニケーションが生まれるように、ピッチの上でも現象の認識違いによって様々なズレが生じます。

例えば、「A」という現象に対する認識がお互いに同じであれば、プレーが成功します。
(確率が高い…プレーの成功の定義も難しいですが、、、)。

それは、攻撃においてはボールをゴールまで運んでいくまでの過程の最中に必要なパス交換であったり、フィニッシュの局面を作る瞬間であったり、

守備においては効果的にゴールを防いでいく過程で、味方間の関係性にアイソレーションやフリーズする瞬間を起こさずに、相手を狙い所に追い込んでスムーズにボール奪取することであったり。

もちろん、そこには「奪ったあと、奪われたあと」というトランジションの瞬間も含まれます。

上記の場面というのは非常に抽象的なビジョンであって、今こうして私の文章を読んでいる皆さんも、おそらくいろんなイメージが頭の中を駆け巡っていると思います。

もちろん、各チーム(国や地域、クラブ)によってその認識の仕方というのは異なるとは思いますし、どれが正解・不正解、良い・悪い、というわけでもありません。

ただ、一つだけ言えるのは、強いチームというのは攻守において「パターン」をもっているということです。


まずは、個人のパターンを構築する


私は、特に海外に出てから(10年前)この「パターン」について考えるようになり、その重要性を肌で感じてきました。

私自身、海外に渡る前の10年前あたり、パターン的に動くことの意義というのを理解できず、パターン化することをどちらかというと嫌っていました。

それは、「相手を無視してそのパターンのみを遂行すること」がパターンで動くことを意味すると認識していたからです。

パターンってクソじゃん。って思ってました。パターンてなんだよ、ロボットかよ、という感じでパターンを毛嫌いしてました。

ただ、海外に渡ったあとからその認識が変わり始め、パターンがあることの強さと重要性を認識するようになっていきました。

それは、個人のパターンをもっていないと味方に自分を認識してもらえない、逆にパターンをもっていない選手を自分が認識できないということに気づいたからです。

それからというものの、とにかく味方に認識してもらうためにしつこいくらいにひたすらピッチ場でパターン化した行動を繰り返し、その精度と成功率をあげていくトライをし続けました。


さらに味方のパターンを認識しそれを自分のものと組み合わせながら、結果に結びつくルートを導き出していきました。

攻撃的なポジションである私は、当然目に見える結果を求められました。その手段の1つとして、私はこの道を選択をしました。


個人のパターンがはっきりしていると、コンビ・グループ・組織のパターンというのを構築しやすくし、それがある程度チームの基盤となる攻撃になります。


個人のパターンが精度高く発揮できる状況を作り出すことができれば、得点する確率を高めることができると思います。

この「精度高く発揮できる状況」というのは、相手に邪魔をされる余地をなるべく与えず、個人の持っている技術を優位性をもって発揮できる「時間とスペースに余裕がある瞬間」と捉えます。

ただ、この「余裕」の定義は個人によって異なります。相手との距離3mが余裕と感じる人もいれば、50cmでも余裕だと感じる人もいます。

相手とのスピード関係や角度も関わってきますし、どのタイミング・状況でボールを受ければこの選手が力を発揮できるか?ということを認識し合う作業が日々のトレーニング、そして試合で行われていきます。

それに、人によって余裕の認識、力を発揮できる状況が異なるので、それをグループ・チームとして作り上げていく必要があります。

ただ、個人で自分自身に求める作業が前提にないと、いくらグループやチームでより次元の高いものを作り上げようと試みても、限界が生じます。コンマ何秒判断スピードを上げる、もう数十センチ相手に寄せる、より狭い隙間に正確にボールを通す・・・etc 

技術の向上はグループ・チームとしてのパターンを進化させていくためには欠かすことはできませんし、ボールを止めて・蹴るという基本動作の基準の次元が高ければ高いほど、チーム全体に余裕が生まれます。

技術」というのは歳をとっても向上させることは可能です。

私の場合そこに伸び代があったので、自分の身体能力に任せて本能でゴールに押し込むタイプだった私が、30歳を過ぎてもこうして現役選手として海外で地に足つけて歩むことができていると感じています。

時代の変化、チームの変化、サッカーの変化に対応し続けていくためには、この個人パターンの引き出しが多ければ多いほど、環境に応じて適応しやすくさせてくれると感じます。

そして、そういった確固たるパターンがあって、そのクオリティーが変わらない選手は世界をみるとやはり多いと感じます。

攻撃的なポジションで30歳を過ぎてからも変わらず活躍している選手というと、アメリカ代表のラピノやヒース、カナダ代表のシンクレア、ブラジル代表のマルタなどがあげられ、彼女たちのパターンはわかっていても止められない「型」になっています。

それが彼女たちのプレーに対する自信を生み出しています。

こうした「パターン・型」が発揮できる状況をチームとして作り出せたら、その選手たちが高い確率で決めてくれたり、チャンスを演出してくれるわけですから、攻撃においてはこのパターンが各ポジション毎にどれだけあるかというのは極めて重要なファクターになります。

守備においては、ボールを奪ったあとの攻撃まで考えた上で、個人がボールを奪える間合いに持ち込むこと、グループとして奪える状況をできるだけ多く作り出すというパターンは、ゲームの流れや勝敗に左右してくると思います。

パターンなくして共通認識は深まりませんし、創造性を発揮することもできませ。


お互いに共通認識を深めていくためには、まずは個人が自分の特性(パターン)をしつこいくらいに表現すること、そして、他人の特性を観察すること。

そして、自分と他人の特性をどう組み合わせるかを考えること

さらに言えば、相手のレベルに応じてそのパターンやその精度がどう変化するのかを見極めること。

自分たちより身体能力の高い選手を相手にするのであれば、相手とコンタクトをしながらの正確な技術の発揮が求められますし、パススピードの速さも求められす。

さらに、相手と駆け引きをしながら相手を優位にさせないポジショニングや、オフザボールでの身体のぶつけ合いも必要になってきます。


パターンといっても様々な場面で必要に応じたパターンがありますが、個人としてより多くのパターンを構築することは選手として最低限必要なことであり、その各個人のパターンの組み合わせが、相手の想像を上回る創造性を生み出すことを可能にしていくはずです。

サッカーは芸術的なもので、数字だけでは測れないものがたくさんあって、戦術やシステム、パターンという「」があるから、そこに互いの共通認識が生まれ、創造性が発揮されます。

自分と他者の関係性の中で空間的、時間的な軸を合わせられるかどうか。この次元の認識が高ければ高いほど、フットボールはより楽しくなります。

本気で目指した先にある真の楽しさを、またいつか感じられる日が来ると信じて。










みんなが協力しあって生きていける社会へ。愛と共感力で、豊かな世界を創っていきたい。サッカーが私にもたらしてくれた恩恵を、今度は世界に還元していきたいです。