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「提案文」ってどう書くの?編集者さん6名の生の声×私の経験談

ライターの皆さんは、営業ってどのように行っていますか?

営業にもいくつか種類がありますが、ここでお話する営業は、Webメディアさんにライター側が、「書かせてもらえませんか?」と(クラウドソーシングを通さずに)直接交渉することです。

これから挑戦したい方も、すでに何度も営業されている方も、正解がないので「これでいいのかな?」と悩むかもしれません。私もそのひとりでした。

今から6ヶ月ほど前、すこしでも執筆のお仕事を増やそうと営業に力をいれた時期がありました。当時参考にしていたのは、少年Bさんの「"祈られない" 営業方法 ~提案の正解、たぶんこれです~」。

こちらで紹介されている提案文を、適宜アレンジして使わせていただいてました。

そのためこれまでは、「由希奈さんってどうやってお仕事を獲得されてきたんですか?」とありがたくご質問をいただいたときにも、「こちらを参考に、気になる媒体さんに応募メッセージを送りました」とURLをシェアすることしかできず(そのくらい完璧なテンプレートなんです)。

けれど今回は、やはり自分の経験をシェアしたい! ということで、私が何度か提案文を書くなかで生まれたこだわりと、各媒体でご活躍中の現役編集者さん6名のお声を盛り込んだうえで

「こんなふうに書けば(採用される保障はないけれど)先方に喜ばれ、うまくいけばご採用いただけるかも?」

そんな提案文の書き方を、テンプレートつきでご紹介します。

そもそも“ライターからの営業”は歓迎されているの?

まず、編集者さんたちは一体、ライターからの直営業をどう思っているのでしょうか? 少し聞くのが怖い気もしましたが、思い切ってたずねてみました。すると……

ぶっちゃけライターからの…

1位 内容による
2位 公に募集している時期以外は不要
3位 いつでも大歓迎

……もしかして、ライターからの営業は思ったより歓迎されていない!?と心配になる結果に。が、もちろん上記がすべてではなく、「いつでも歓迎!」というメディアさんもあるのはたしかです。

ただ結局のところ、大歓迎という媒体さん含め、ほぼ皆さんが「内容による」んですよね。採用に至る・至らないはべつとして、丁寧で好印象な提案文ならまだしも、そうでない内容は、先方の時間をうばうだけの残念なメッセージになってしまいます。

好印象な提案文と、悪印象な提案文のちがい

では「好印象な提案文」と「悪印象な提案文」のちがいって、何なのでしょうか?

Workship MAGAZINE/クレイジースタディのじきるう編集長が、こんなご回答をくださいました。

「媒体の方向性や過去記事をリサーチした上で、媒体にマッチした企画をご提案いただけた応募。即採用でした

なるほど! ……ただ、企画はべつとしても、応募する媒体さんのリサーチって最低限みんながするものではないのでしょうか? それが、過去にはこんなご応募もあったのだとか。

「媒体の方向性を一切理解せず、自分の実績アピールに終始している応募。自分の素性を一切聞かず、『オレ広告代理店で1億の案件動かしてるぜ! 付き合おうぜ!』って男いたら、ふつうにイヤなやつですよね。それと同じです」

ほ、ほんとうですね。この人もしかして、自分に酔っている? という印象です。

ただたしかに、自分がライターになり立てだった頃「ライター 提案 コツ」のようなKWで調べると、上位サイトではほぼこの「とにかく実績アピール法」が紹介されていました。

とくにクラウドソーシングは、提案の時点ではクライアントさんの情報がない(掲載サイトのURLすらわからない)ので、自然とこの方法になってしまうのかもしれません。私も過去にクラウドソーシングを利用していたので、すごくわかります。

では直接応募では、どんなふうに書くのが正解なのでしょうか?

提案文の書き方①(「ライター募集」に応募する編)

旅行 冒険 YouTubeサムネイル (2)

さっそく、ICT教育ライターの回覧板メンバー・夏野かおるさんの例をみてみましょう。 ※「たこ焼きLOVE」「好きやでOSAKA」は架空の媒体です(読みたい!)。

たこ焼きLOVE編集部 ご担当者様

お忙しいところ、突然のご連絡となり恐れ入ります。フリーランスでライター業を営んでおります、夏野かおると申します。

このたびは御メディアのライター募集を拝見し、ぜひ応募させていただきたくご連絡申し上げました。

以下に簡単な自己紹介と主要な実績をお送りいたしますので、なにとぞご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。

=自己紹介==========

夏野かおる(なつの・かおる)

ライター歴3年。タレントのブックライティングに携わったのを機に個人事業主として開業。〇〇、〇〇、〇〇を得意ジャンルとし、取材記事、コラム等の執筆を多数経験。
上場企業含め○社以上と取引実績あり。

=自己アピール==========

私は関西圏出身で、小さな頃からたこ焼きを食した経験が多数あります。中でも、もち入りのたこ焼きには強い愛着があり、関東に引っ越した今でも、たこ焼き機を自宅に2台備えています。

粉もんジャンルでの執筆経験は残念ながらございませんが、関西圏を中心としたWebメディア『好きやでOSAKA』様では取材記事をはじめ、定期的なお仕事をいただいた経験がございます。

一眼レフを用いた撮影が得意で、Slack/ChatWork/Zoomでのコミュニケーションも日常的に行なっております。こまめな「報・連・相」含め、クライアント様を不安にさせない仕事を心がけておりますので、ぜひ一度お話しする機会をいただければ幸いです。

=主要実績==========

■取材記事(撮影も担当)
心斎橋のグリコの看板は何メートルあるのか?施工会社にこだわりを聞く
(URL)

■コラム記事
関西人がよく使う「イキる」の意味とは?最近では共通語化!?
(URL)

※ほか、詳しい実績は以下のURLにまとめております。
(ポートフォリオ)

===========

以上、長くなってしまい大変恐れ入りますが、なにとぞご機会をいただけますと幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

夏野

シンプルながらも夏野さんの人となりや“何ができるのか”が、ぱっと見で伝わる内容です。実績に「撮影も担当」と明記されているのも、差別化につながりそうですね。

こちらはあくまでも、公式サイトなどで大々的にライター募集をかけている媒体さんのケースです。

提案文の書き方②(ライター自ら応募するとき編)

旅行 冒険 YouTubeサムネイル (1)

つぎは、私が実際に「こんなふうに送っていました」という例をご紹介します。

株式会社●●社
「こどもとかぞくWeb(架空)」編集部 御中

はじめまして。札幌市在住のフリーライター、原由希奈と申します。

このたび、御社のWebメディア「こどもとかぞくWeb」にてぜひ執筆させていただけないかと、恐れながらご連絡いたしました。現在はライター募集をされていないにもかかわらず、申し訳ございません

代表作にはこのような記事がございます。

・実績①(媒体さんと相性がよさそうな記事)
・実績②(     〃      )

その他、〇〇関連のWebメディア「■■■」では、
「~~~~」という連載も担当しております。

2年ほど前に、△△さん(ライター名)の「〜〜〜〜〜」という記事を読み感銘を受け、それ以来こどもとかぞくWeb様を愛読しております。

もしも御社で書かせていただける場合は、このような企画がございます。いかがでしょうか。

●「シャボン玉はなぜ丸い?」の謎に迫る! 石鹸専門家に聞く、シャボン玉液のヒミツ
わが子に突然聞かれた「シャボン玉ってどうして丸いの?」。そういえばどうしてだっけ? 表面張力が関係するのはわかるけれど…?不意打ちの子どもの「どうして?」に応えるべく、石鹸専門家のSさんに正解を聞きました。

●20年ぶりのUNOで大混乱!?公式に聞く「偽ルール」「本物ルール」の違い
先日子どもへのプレゼントにと購入したUNO。家族でプレイしようと箱から出したはいいものの、すっかりルールを失念。覚えているのは「ドロツー返し」「記号あがりNG」のみです。ネットで検索すると、それが偽ルールだとの驚きの記載が。UNO公式に真相を聞きます。

●「卓上生ゴミ箱」に首ったけ!開発者Mさんが語る○○誕生秘話
長年使っていた生ゴミ箱が壊れたため、試しに購入した卓上タイプの生ゴミ箱「○○」。これが想像以上に便利で、わが家のキッチン生活は一変しました。○○がどのようにして誕生したのか、開発者のMさんを取材しました。

ご採用いただいた際には、現役の保護者目線での企画立案・取材・執筆をさせていただけるほか、ZOOM(有料版)やSlack、Chatworkなどを用いた迅速なやり取りも可能です。

お忙しいところ長々と、大変失礼いたしました。
ご検討、どうぞよろしくお願いいたします。

原由希奈(Twitternote

(ずっとWorkship MAGAGINEさんを参考にしてきたためどうしても似通っていますが)、個人的にこだわってきたのは

・「恐れながら」や「募集していないにもかかわらず」など、「一方的に送って読むお手間を与えてしまい、申し訳ない」というニュアンスを入れる
・媒体さんに喜ばれる企画を全力で考える
・シンプルにまとめるため、Twitterとnote(ポートフォリオ)は最後に添えるだけ

の3つです。

企画を3つ以上添えるようになったのは、あるベテランライターさんが「すべては企画。ぼくは企画を毎回10個添える」とおっしゃっていて、「こんなにすごい方でも10個添えるんだ!」と衝撃を受けたのがきっかけです。

まずは、その媒体さんが何を大事にされているのかを知るために、サイトのトップページにどんな記事が多いのかや、コンセプトページを確認します。(あれば)編集長ご自身の記事やnote、Twitterも読みます。

つづいて雑誌や新聞をヒントに、「こんな記事があったら絶対に読みたいな」と思うテーマをいくつか考えます。そのあとで、既存記事に似たようなタイトルがないかも確認。

媒体さんの方向性に合いそう!既存記事もない!しかも自分でも読みたい!となれば、そのネタを添えます(ひとつの提案のための企画に丸1日かかったことも。すごく大変なので、じつは最近は全然営業できていません……!)。

「企画を添えてほしい」という要望は、編集者さんたちのご回答にも。

書いてくれたら助かる

1位 何ができるのか
2位 企画(1~2本)企画(3本以上)/趣味やマイブームなど

具体的な企画の立て方は、こちらでも紹介されています。

さてでは、編集者さんたちのその他のお声をみてみましょう。

「こんな応募がうれしかった(うれしい)!」

「過去の記事で一番読まれた記事と、一番自分で気に入っている記事と、一番編集者さんに褒められた記事です」と3記事出してくれたとき。

これはわかりやすい! 過去実績の書き方の参考にしたいです。

向上心があり、「契約後にこういうお仕事を頼もう」とイメージが湧きやすい人は好印象です。あとは、自発的に動けるかどうかを重視しています。言い方は悪いですが、直接的に言えば、「お仕事が降ってくるのをただ待っているだけのライター」よりも、「面白そう・数字が取れそうなネタを自らキャッチし、アポイントをとってくれるライター」のほうがありがたい、という意味です。(SEO特化のブログでない限り、多くのメディアが同意見かなと思います)
ウチのメディアで何を目指しているか理解した上で、自分ならこう書きたい、このメディアでこれを学びたいなど具体性のある企画をくれたとき。経歴、メアド、電話番号などわかりやすくまとめられたポートフォリオが添えられていたとき。

やはり企画力は大切なよう。契約後も意欲的にネタを考えてご提供したいですね。

採用担当というわけではないのであまりないのですが、ちゃんと調べて「うちで書きたい」って気持ちが伝わるとうれしいです

「こんな応募は引いてしまった……」

他のライターさんと懇意にして仕事をお願いしていることに対し、「そのジャンルについては私のほうがうまく書けます」という切り口から営業をかけられたとき。
求めていないことを上から目線で提案された。ライター業以外の業務をやりたいと言われた。

いくら実力があっても、だれかを蹴落としたり上から目線の提案をしたりすると、人間性を疑われてしまいます。

「なんでもやります!」「タダでもやります!」みたいなアプローチは、責任感がないのかなという印象。プロではないと判断します。

採用されたいからと、自分を安売りするのも逆効果なんですね。

引いたわけではないですが、自分個人宛てに(書きたいと言って)来られても、権限がないので困るな~という部分もあります。あと、色んなところに一括で送ってるんだなって雑な営業は、いい気がしないですね。
「応募する前に、内部の人と仲良くなっておこう」と考えるのかもしれませんが、同媒体で契約しているライターにあれこれ聞き込みをしたり、採用権限のない編集者にアプローチしたりする方は困るなぁ、というお話をよく聞きます。媒体さまのイメージにもかかわるためむげにできず、対応に時間を取られてしまうので。

これはギクリとします……! というのも、編集者さんと仲良くなる=いつかお仕事のチャンスが来るかも? という考えって、ライター界ではわりとメジャーというか、営業とは異なりますが、私自身もTwitterで編集者さんにフォローいただくと「興味をもってもらえた!?」とウハウハで(笑)フォローバックしてしまいます。

提案文はどこから送るのがベスト?

けれど現実は、「ぼく・私に営業されても困る!(採用権がないから)」という、苦いご経験をされた編集者さんも多いようです。上記にはありませんが、Twitterで相互フォローだというだけで、提案文に「〇〇さん(編集者さん)の紹介です」と書かれているケースもあるのだとか。ライターの皆さん、一緒に気をつけましょう......!

提案文を送る際のマナーとして、ライター用の応募フォームがある場合をのぞき、公式サイトのお問い合わせフォームから送るのがベスト。編集長のスタンスにもよるし一概にはいえませんが、TwitterのDMはやや軽い印象です。お問い合わせフォームなら、編集部皆さんで共有してもらいやすく、適度な遠慮感も伝わります。

どうしても編集者さんを通したいときは、「応募したいのですが、どこから送ったらよいでしょうか?」と確認しましょう。

ライターに一番求められているのは何?

ここまで提案文の書き方をご紹介してきましたが、そもそもの採用基準ってなんなのでしょうか。最後に皆さんに、こんなご質問をしてみました。

ライターに求めることランキング

1位 文章力
2位 コミュニケーション力/付き合いやすさ
3位 対応の速さ/企画力/数字が取れる
4位 SEO/取材につよい/その他(ライターを「仕事」と割り切っているか)

……! 「ライターに求めること」の堂々第1位は、基本中の基本「文章力」でした。頭から水を浴びたようです。

つまり提案文には、実績がほぼ必須ということ。どうしてもない場合は、その媒体さんに合った記事をnoteで書いてみるのもおすすめです。むしろ編集者さんのなかには、「メディアの記事は編集が入っているのでアテにできない。noteやブログを確認する」という方もいるようです。

「実績」「企画」「今自分ができること」の3つを添えよう

ここまでをまとめると、

・私はこんな文章が書けます(実績
・その文章力で、御社ではこんな記事が書けます(企画
・こんなことも可能です(できること

が簡潔に書かれた、謙虚なメッセージ。

それが、応募先に喜ばれ、採用されやすい提案文なのでは? と改めて感じたのでした。

営業に悩んだとき、応募したのにご返信がこないとき。「こんな方法があるんだ」と参考にしてもらえたらうれしいです。

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アンケートにお答えくださった編集者の皆さま、お忙しいなか本当にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。いただいたサポートは、書籍代などの執筆活動や、子どもたちの絵本に使わせていただきます!