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minecoP対談 前編

さて、告知からかなり遅れましたが、先日minecoPとの対談を終え、やっと文字起こしになります……。待ってくださっていた方には申し訳ない。

(ゆきますくもminecoPも、天海春香学会 学会誌vol2に寄稿させていただいており、その縁で対談させていただいた次第です)

4時間越えの超絶長い対談になったため、とりあえずは前編としましたが、もしかすると前中後の三部作、もしくはさらに増えるかもしれません、ご了承ください。

・注意
空気感をそのままにするために話した表現のそのままで表記しています。予めご了承ください(そのため、笑いながら話している部分を「w」で表記しています。また、話の段階で省略したものを一部補って()づけで表記しています)。

・前置き
何を話すかをまとめたリストをお互いに作ろうとしていた。が、お互い結局作らず、いきあたりばったりで始めることに。

・minecoPの新作「magical world」について

ゆきますく
「先日投稿された『magical world』を拝見しましたので、まずはその感想をお伝えしますね」
mineco
「ありがとうございます」

ゆきますく
「面白かったです。陳腐な感想になってしまって申し訳ないのですが」
mineco
「いえ、開口一番に聞けると嬉しい感想です」
ゆきますく
「この感想はインタビューや自分のnote、感想レビューで散々語っているのですが。自己紹介をすると僕は一応近畿大学文芸学部の文学系のところに所属しておりまして。そこは男が少なくて女が多い集団で……小説を書く授業とかもあり、女の子の書いた小説を目にする機会も多くてですね。それで、そういう文章と共通してるなと感じました。身体感覚に近い描写が上手やなって」
mineco
「ああ、はい、そうですね」
ゆきますく
「傾向で語っていいのかは分からないんですけど、男は割と技巧とかストーリーとかの部分にこだわりがちで、凝ったことをやりたがる、と感じるんです。でも(女性の書くものは)体に近い感覚の描写が丁寧だと思っていて。普段自分はあまりそこまでそういうところ(女性的な視点)に注目してないな、というのを痛感しましたね」
mineco
「そうですね……ジェンダーで区別するのは控えますが、文学的表現が好きな人と、私小説……?感情移入させる表現が好きな人と、いますよね」
ゆきますく
「そうなんですよね。僕は描写を凝りたいのに凝れないなぁ、っていつも言ってます。上手な人を見ると羨ましいなぁって思いますよ。まずはそれが一番目の感想です。この、学会誌に載せられた方も――」
mineco
「『降りた話』ですね」
ゆきますく
「そうです、今回のも同様に感じました」
mineco
「身体的感覚でいえば、『magical world』は降りた話より視点を引いたイメージです」
ゆきますく
「なるほど……」
mineco
「学会誌の方はやや前のめりに書きました。5000文字早口、みたいな。モノローグがものすごく長い。一人語りなので、身体感覚重視で書かないと……変な言い方ですけど、話がそれちゃうというか、人物らしくなくなるというか、そんな感じがして。一方文字数制限がない分、『magical world』は地の文も多めで、相対的には引いた描写をしました」
ゆきますく
「確かにそうですね」
mineco
「出てくる人物も多いですからねw」
ゆきますく
「そうですねw ストーリーラインというか、降りた話の方はモノローグ中心に進むのに対して、こっちは作中世界の現実のイベントみたいなものが――」
mineco
「そうですね、流れてますね」
ゆきますく
「そう、流れてます。そこの上に乗っかってるのかな、ってイメージがあります。そういう意味では、春香視点、春香が生きている時間っていうのが作中世界の現実なのかなとか、そんなことを感じましたね」
mineco
「いやほんとにありがてえw 読んでくださるだけでもありがたいのに、ちゃんと読み込んでいただいて」


・『読むのが嫌い』同士

ゆきますく
「やっぱり読むなら面白いものを読みたいなっていつも思ってて……実は僕、読むの嫌いなんですよ」
mineco
「おっ、気が合いますね!」
ゆきますく
「さっきも言ったように大学等で読まされる機会も多いんですけど、それがものすごく嫌で。内容についての課題が出た時とか、嫌すぎて毎回wikipediaとかコトバンクとかのあらすじを頼りにして、原本は一部だけ読んで、これのこと言ってんだろうなっていうアタリをつけながらあらすじを書いたりしてます」
mineco
「わあ、自分の大学時代を思い出してしまうエピソードをありがとうございます」
ゆきますく
「ですよねw いや、本当にそんな感じなので……できるだけ読みたくないものは読まないようにしてるんです。生活の中でも。好きな小説家が一人だけいるんですが、その小説家のしか買いません」
mineco
「うーんわたしに似てますなあ」
ゆきますく
「昔はライトノベルもゴリゴリ読んでたんですけど、読むのがしんどくなってやめちゃって。自分が書いたものは読み返すけど、他人の書いたものは滅多に読まないっていうキャラクターになっちゃいました」
mineco
「もうめちゃくちゃ分かる、分かり手になった」
ゆきますく
「その点今回の『magical world』は読みやすくて、そういう人にも読みやすくしてる、そういう配慮なのかなと思ってました」
mineco
「そうですね。ここでガチガチに文学しても仕方ないなって気持ちはありました」
ゆきますく
「やっぱりやってるものはエンターテイメントなんだなとw」
mineco
「そうですねw ラノベほどライトじゃないけれど、きっちりかっちり文学ではない。新規性のあるものでもないし……みたいな。私がそこまで文学的な表現が書けるわけではない、というのがあるっちゃあるんですけど」
ゆきますく
「なるほど」
mineco
「コントロールできる限りでは、エンターテイメント向きにしました」
ゆきますく
「それがしっかり現れてるのかな、という感じはします」
mineco
「ゆきますくさんの感想noteでそこを指摘していただいたのは、『おおっ』と思いました。さすが、読まないとは言っても、元々の文章のお作法が分かってないと読み取れない部分かなと思います」
ゆきますく
「沢山の本を読むのは苦手なんですけど、一つの本をしっかり読みこむっていうのは割とやるんです。好きな作品はゴリゴリ何周も読む派なんですよ」


・好きな作家と嫌いな作家

mineco
「ちなみに、一番好きな作家って誰ですか?」
ゆきますく
瀬尾まいこっていう作家なんですけど、ご存じですか」

mineco
「瀬尾まいこ……一冊持ってる気がする」
ゆきますく
「おっ、いいですね。僕が好きなのは、代表作かは分からないんですけど、『図書館の神様』とか『強運の持ち主』とかです」
mineco
「それは知らないな……。えっと、わたしが積ん読してるのはバトンが何とか、そしてバトンは渡される、渡された?ですね」

ゆきますく
「僕はそれ知らないですね」
mineco
「あっ『幸福な食卓』!これも持ってます」
ゆきますく
「お、それはぼくも持ってます」
mineco
「この本は好きです。すごく丁寧で繊細、優しい文章を書きますよね」
ゆきますく
「そうなんですよ。僕がこの作家の好きな所、多分変わってるんですけど、書き出しを見た時に必ず『瀬尾まいこ』って分かる書き出しするところなんですよ」
mineco
「おお、それは作品を横断した人にしか分からないな」
ゆきますく
「大学の授業で、十冊の作品と十個の作家名が並べられて、どれがどの作家の作品の書き出しか分かりますか、みたいな質問があったんです。それで分かったのが、瀬尾まいこと村上春樹だったんです。その授業で出た瀬尾まいこの作品を読んだことはなかったんですけどね」
mineco
「文豪とかだと分かりやすそうですね。『これは太宰!』とか。死のうとしたら太宰!みたいなw」
ゆきますく
「確かにw 瀬尾まいこと村上春樹が分かった理由は二人とも文体に独特の良さというか、自分らしさ、作家らしさが出ているからです。そういうのが出ている作品が好きで。でも何故その二人だけが分かったのか考えたら、僕が一番好きな作家が瀬尾まいこで、一番嫌いな作家が村上春樹だからだと気付きました」
mineco
「わたしも嫌い村上春樹!気が合いますねw」
ゆきますく
「w いやすごく嫌いで、村上春樹」
mineco
「気を抜いたら村上春樹の悪口discordになってしまう」
ゆきますく
「Twitterには書いてるんですが、僕は実は四月から教員なんです。で、教員をやるために教科書を開くと、教科書の中に村上春樹の作品があったりするんですよ」
mineco
「へぇ!採用してる教科書があるんですね」
ゆきますく
「高校の教科書に『鏡』っていう作品が」
mineco
「嫌すぎる」
ゆきますく
「模擬授業やる段で読んだんですけど、やっぱり嫌だなっていう結果に」
mineco
「好き嫌いはね、しょうがないですもんね。内容を把握することとは別ですし」
ゆきますく
「そうですね」
mineco
「私の高校の先生にも太宰が嫌いな人が居たなあ」
ゆきますく
「太宰は好き嫌い分かれますね」
mineco
「好きな作家の話をすると、私自身は夏目漱石キチガイです。現代だと凪良ゆうっていう……マイナーなんですが、去年に本屋大賞をとった作家さんが好きで」
ゆきますく
「その名前は初耳ですね」

mineco
「ずっとボーイズラブを書いていた人なんです。10年ボーイズラブを書いてて、一般文芸もちょこちょこ出してたんですけど、そっちはヒットしたのが去年です。この人がすごく好きで、この人以外はあんまり読まない。読むのが嫌いなんです
ゆきますく
「しんどいですよね、読むのはw」


・主宰の人徳

mineco
「正直言うと、同人を読むのもしんどいです。だから私、いわゆるオタク界隈に居られないんですw」
ゆきますく
分かる!
mineco
「社会不適合者の集まりみたいになってきたぞ」
ゆきますく
「いやほんとに、駄目なんですよ」
mineco
「駄目ですねw なれ合いが嫌いな訳じゃないんですが、かといって誰とでもなれ合えるわけじゃないんです」
ゆきますく
「そうなんですよね」
mineco
「だからね、今回の学会への参加もちょっと迷ったんですけど……そにっぴーさんが『界隈じゃない』って明言してくださってたので、『ああ、大丈夫だな』って
ゆきますく
「僕もスタントンさんやそにっぴーさんと面識があったから『やろう』って気になりました」
mineco
「人徳ですねぇ」
ゆきますく
「そうですねぇ」
mineco
「人徳もだし、あの二人なら大丈夫。クレバーだなっていう信頼もあります。学会誌の掲載順をらぁーたさん→私の流れにしてくれた時点で信頼しかないです」


・学会誌の掲載順と作品レビュー

ゆきますく
この流れ(らぁーたさん→minecoPの並び)は、マジで完璧だったと思います」
mineco
「『天海春香は人間である』の次のページから天海春香が人間の世界ですからね。ぞっとしましたw」
ゆきますく
「そうですね、びっくりしましたw」
mineco
「あと当然といえば当然ですけど、自分の話をちゃんと読んでくれてるんだなって嬉しくなりました。読むというのも読解って意味、内容を理解してくれてるって意味です」
ゆきますく
「いい作品だし好きだし、これ(『降りた日』)は読み込みたくなっちゃいますけどね。僕は知ってる人の作品はその人の視点込みでレビューを書いたりするんですけど、そうでないとSSや小説は内容の深堀りに終始しちゃうので……。そういう意味では運営さんすげぇな、となりました。
mineco
「そうですね、ゆきますくさんは確かにSSや小説の話に終始してるな、という感じはしてます。私の場合は正直な言及しかしてないので……刺さらなかったものについては感想やレビューでは特に何も言ってないという」
ゆきますく
「確かにそうですねw」
mineco
「実は読むのも嫌いなんですけど、ゲームも嫌いなんです。ゲームを実プレイすることが嫌いで……シナリオは好きだし(そういう意味で)したいゲームはあるんだけど、シナリオに辿り着くまでにあるシューティングや音ゲーとかをしたくない。私はこれを、『シナリオを人質に取られてる』って呼んでるんですけど」
ゆきますく
「面白い表現ですね」
mineco
「そういう人間なので、ミリオンの投票とかはちょっとよく分からないなってなっちゃって。しかも、私のスタンスはインタビューで語った通りに、公式の情報を全部拾う必要もなく、かつ人格の本質さえ拾えていれば問題ない、なので。公式の春香についての言説に対しての『春香ってこういう人なのかも』って推測があんまり響かなくて……なので、その手の評論は言及を飛ばさせていただきました」
ゆきますく
「確かに、その手の評論って公式を全部回ってないと『それ矛盾してるやん』っていうこともあり得ますし、拾ってないと楽しめない部分はあるかもしれないですね……」
mineco
「それを貫徹してしっかり書くなら5000字じゃ全然足らんやろ、って思ってたりします。でも、言及はしてないけどオタクがエッセイ的に狂ってる話は読むの好きです
ゆきますく
「分かるww」
mineco
「等身大パネルの人よかったです」
ゆきますく
「司令官さんですね」
mineco
「あとは本棚の話が好きでした」
ゆきますく
「本棚の話のなかやまさんはユニークさに定評のある人ですよね」
mineco
「1(天海春香学会 学会誌vol1)はまだところどころしか読んでないんですけど、1で『あまみはるか』(という六種類の音)だけで文章書いたっていう噂を」
ゆきますく
「そうですそうです」
mineco
「あとで読ませていただこうかなと……」
ゆきますく
あれはセンスの塊です、本当に。今回のvol2に出されている考察はかっちりやろうとしてる体裁はとってるように見えるんですけど、あっち(vol1での作品)はやりたいこと100パーセントと感じられるというか、ぶっ飛んでますね」
mineco
「対談前に読んでおけばよかった。今、手元にあるかなぁ……ないな」
ゆきますく
「じゃあ今度是非」
mineco
「また読んでみます」


・普段の熱量について

ゆきますく
「vol1の時から感じてたんですけど、天海春香の同人ってこんなに人が集まるんだって言うのと同時に、こんなに天海春香に狂ってる人もいるんだっていうのを改めてひしひしと感じました」
mineco
「嬉しいですよね」
ゆきますく
「いや本当に」
mineco
「インタビューの前編でも言ったんですけど、狂って踊る阿呆がこんなにいることに嬉しくなっちゃってw ちょっとした町内会の盆踊り大会ぐらいにはいますもんね」
ゆきますく
「しかもそれを万人に見せようとする人の集まりですよ」
mineco
こんなにも多角的に春香を捉えようとする場があるっていうのは、ちょっと羨ましいなと思います。この学会みたいなことを年中無休で一人でツイートしてる身からするとね。語りつくそうとしてるの、私くらいしか見当たらないなって……」
ゆきますく
「普段ツイート見て、すごい熱量だなぁと思ってますw」
mineco
「熱量しかないですねw」
ゆきますく
「熱量があるのは大事だなって。天海春香学会のvol1、vol2やって感じました」
mineco
「そうですね……ところで、ゆきますくさんの普段のツイートって結構ダウナーな感じじゃないですか」
ゆきますく
「そ、そうですねw」
mineco
「そういう印象を受けたんです。お題箱に感想を入れる直前(お題箱に「『ゆめ』の続きの話をしよう」の件を入れてくださったのはminecoPでした)ぐらいで、『感想を書くしかできることがない』みたいなツイートをしてはったんで。そこにタイミング悪く自分がもにょもにょツイート(『ゆめ』の続き……の作中Pが嫌いという内容)をしてしまって、やべ!って思って箱に弁解を入れました」
ゆきますく
「あー……僕、人と喋らない間は軸がぶれやすくて。気分がアッパーな時とものすごくダウナーな時と二種類あるんです。で、ダウナーな時はひたすらダウンなのできっかけがないと治んなくて。プラスになった時もずっとプラスなんですけど、ダウンになるきっかけの方が多いのでダウンな感じにだいたいなっています」
mineco
「まぁ低空飛行で安定してるならねw」
ゆきますく
「安定って言っていいんですかねw そんな感じです」
mineco
「わたしはもうずっとアッパーで安定なのですが、かつてはゆきますくさんと同じ感じだったので、感覚は分かります。そうですね……人と喋ることによって、特定のトピックを自分にぶつけて上がったり下がったりのきっかけを得ることはありますよね」

今回はここまで。
っていうかすごい長さになってしまった……中編も書き始めていますが、既に同じ分量になったので、確実にまだまだ続きます。

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