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麻酔事故防止対策を頼まれて大学院に行った私

大学卒業後20年たっていた時、ITベンチャーの経営と大学講師・公的アドバイザーなどをやっていた時です。
麻酔科教授に統計数理研究所の赤池弘次先生の時系列多変量解析の世界初の応用である「セメントの焼成」の英論文を使って、麻酔事故防止の装置開発をやって欲しいと頼まれました。

仕方なく仕事しながら論文を読むことになりました。
なかなか進まないので大学院に入学を勧められ受験勉強までする羽目に。
現役が落ちる中何とか合格し、統計学の講座に入れてもらい4人の現役学生と研究することになりました。

全て忘れてしまって錆びついた私の頭をクリアにするために、毎回私がゼミの発表をすることになりました。
どこに行くにも本とノートを持ち、社内の仕事やお客様との打合せ、企業のITアドバイザーや大学・専門学校の講義の空き時間は、統計学や確率論を読んで数式を解くのに必死でした。
お陰て白髪になりましたが、2ヶ月て数式もすらすら解けるようになり、大学院での研究も楽しくなりました。

ゼミの女性

教養部・教育学部・農学部など他学部の統計学の先生たち10人ほどと統計学の懇親会があり、何も知らない私も参加させていただきました。
その中で阪大大学院卒の生命統計学に精通する教養部の卓越した教授に出会いました。
件の麻酔科の話をしたら
「10年以上、生体反応ファクターについて研究しているが、未知のことばかりで統計解析までいかない」
と言われて茫然となり、2年では何もできないと分かりました。

一番の難問は時系列多変量解析を使うことではなく、麻酔事故の起きる原因について世界中に研究論文がないということでした。
つまり、生体反応にどんなファクターがあり、その中のどのファクターがどれぐらいの時間でどう変化したら死に至るかの情報がどこにもなかったのです。
その上、時系列多変量解析まではいかないうちに夏休みになり、担当教授は1年間の米国での研究に行かれてしまいました。

その後の1年間は情報理論でAIの研究をされていた教授について学ぶことになりました。
合間を見て我が社で開発した小規模小学校の複式学級で1人の障碍児を入れた3学年が学べるCAI(Computer-Aided Instruction)の論文を書くことにしました。
そのころCAIらしきものはなく全て自社で開発したものです。
その論文は膨大でしたが理学部紀要に掲載していただき、教育学研究者のCAI学会で何回か紹介されたようです。

1年後、米国から帰国された統計学の教授の下に戻り、回帰分析の修士論文を書くことになりました。
2ヶ月足らずで書き上げたら早すぎると怒られてしまいました。
しかし、システム開発の仕事に比べると本当に簡単なことでした。
研究は本人に必然性があるか、好きでのめり込めるかのどちらかがあると勝手にやっていくものではと変に悟った感じがしました。

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初期の目的は達成出来ませんでしたが、2年で2本の論文を書いて卒業させていただきました。
長女が高校、次女が中学、私が大学院で、3人が同時に卒業することになりました。


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