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夫との10年#84

今日で夫と結婚して10年になる。

10年を思い返すと、2人の関係性は変わったと思う。
それを悲観することもないが、楽観しすぎるのもどうかと思うけれど。


夫は10年前、母親を病気で亡くした。
末期癌の闘病の末、10年前の春に亡くなり、それと同時期に私と出会った。

夫と話すようになったのは、遠藤周作の「深い河」を借りたのがきっかけだった。
「女の一生」や「沈黙」「海と毒薬」などを読んではいたが、「深い河」はまだ読んだことがなかった。


あらすじをAmazonから抜粋する。

喪失感をそれぞれに抱え、インドへの旅をともにする人々。生と死、善と悪が共存する混沌とした世界で、生きるもののすべてを受け止め包み込み、母なる河ガンジスは流れていく。本当の愛。それぞれの信じる神。生きること、生かされていることの意味。読む者の心に深く問いかける、第35回毎日芸術賞受賞作。
人は皆、それぞれの辛さを背負い、生きる。
そのすべてを包み込み、母なる河は流れていく。
死生観、宗教観に問いかける名著

「深い河」では5人の主人公のうち磯辺という男が、妻を癌で亡くしてしまう。
妻は臨終の間際に意識が朦朧としながらも自分は必ず輪廻転生し、この世界のどこかに生まれ変わる、必ず自分を見つけてほしいと言い残して亡くなる。

「深い河」の磯辺は、妻がこれほど情熱的な愛情があったのかと驚き、理性では転生を信じてはいないがとある印度ツアーに参加する。

夫の性格から考えるに、おそらく深く考えずにこの本を貸してくれたのだと思うのだが、亡くした母親のことを考えると当時胸が痛んだ。

結婚して10年、色々なことがあった。
どの家庭にも、表に出さないだけで様々な事情があるのだな、ということも結婚してから理解できた。

何も悩みのない夫婦や家庭があるのだろうか。

些細なケンカにもならないようなことから、ここには書けないような大きな問題まで、10年間積み重ねたり乗り越えたりしながら歩んできたように思う。

「深い河のように転生したら、来世も一緒になりたいと思う?」

という問いかけに、私も夫も次は別の伴侶と楽しみたいと答えた。
そういう冗談も言い合えるこの関係性が、わたしは好きなんだと気づいた一日だった。

良き友人であり、良きパートナー。
夫にはありがとう、という言葉だけを贈りたい。



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