PACHINKO/Lee Min Jin#27
先日の「竹林はるか遠く」に引き続き、朝鮮半島に関する書籍だなと思われる方がいるかもしれない。
大学生だった頃、バス停で韓国人の留学生と出会った。
彼女は同じ大学の文学部に学びに来ており、数人の韓国人といるところを話しかけた。
どう話しかけたかはよく覚えていないが、そのあとも卒業まで交流が続いた。現在は韓国に住んでおり、今でも連絡を取り合っている。
彼女は一人暮らしをしており、日本語も英語も上手だった。
特に日本の漫画とコタツ、ドラマをこよなく愛している大学生で、わたしはよく彼女の家に行き、韓国料理をご馳走になっていた。
わたしは遠藤周作の作品が好きだったのでそれを貸して、彼女からもおすすめの本を教えてもらった。
最近教えてもらったのが、このLee Min Jinの「PACHINKO」だ。
全米図書賞の最終候補作で、四世代にわたる在日コリアン一家の生涯を描いた上下巻の大作である。
物語は日本に併合された朝鮮半島、釜山沖の影島。1910年(日韓併合条約締結時)から始まる。
下宿屋を営む夫婦の娘として生まれたキム・ソンジャが、日本との貿易を生業とするハンスという男と恋に落ちる。
やがて身ごもったソンジャは、ハンスには日本に妻子がいることを知る。妊娠を恥じ、苦悩するソンジャを救ったのは牧師イサクだった。
彼はソンジャの子を自分の子として育てると誓い、ソンジャと共に大阪の鶴橋へ渡るというストーリーだ。
作家のLee Min Jinは韓国系アメリカ人で、2007年から2011年までパートナーの都合で日本に住んだ経験があるらしく、その時に在日の方々と対話して取材をしたらしく、かなりリアリティのある内容になっている。
詳しい話の内容はネタバレになるので控えるが、ただ単純に四世代にわたる在日コリアン一家の生涯の物語ではない。
いま以上に差別が厳しい時代であり、そんな戦中から戦後にかけて大阪を生き抜き、2人の男の子を育て上げ、そしてその2人の子供と、孫までの4世代の苦闘が描かれているのである。
そこには在日コリアンへの差別や、女性の生きづらさといった様々なテーマがある。脚色された部分は少なく、淡々と書き綴られているので超大作ではあるが3日で上下巻を読んでしまった。というより、読むのをやめられなくなるほど残酷で、壮大で、鮮烈な物語だといえる。
そしてタイトルの「パチンコ」が「在日コリアン」を表す一つのアイコンのように表現されている。
読み始める前にはなぜこのタイトルなのか理解し難かったが、「パチンコ」がどういう意味を持つのか、本を読み終えて納得した。
小説ではあるが、同じような境遇で生きてきた人たちがいるのかと思うと、自分はどう生きていくのかということを改めて考えさせられる一冊だった。