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初見演奏が得意になったワケ#21

タイトル通り、わたしは初見演奏が得意だ。

初見で困ったことは、今までほぼないと言ってもいい。
どのくらいのレベルかっていうと、うーん、なんて言えばいいものか。
試しにヤマハグレードの6級の初見演奏の楽譜を見たところ、余裕で弾けた。

音楽科講師をしていた頃、教科書に掲載されているピアノ伴奏譜で初見で弾けなかったものはないと思う。

合唱の伴奏譜に関してはレベルも様々なので、弾けないものも多い。
一般的な中高の授業で扱うレベルの合唱伴奏譜は問題ないと思う。

例えばヤマハのぷりんと楽譜はたまに利用するが、最近の人気曲を弾こうと思ってサンプルを見ると初級は楽勝、中級も多分イケる、上級は曲によっては無理かも、という具合。
初見レベルでいえば中級くらいなのかなと思う。


そもそも「わたしって初見演奏がうまいんだな」と気づいたのは、音楽学部に入学した大学生の頃だ。

なぜ得意になったのか、それはズバリ練習をしなかったからである。

月刊ピアノを弾きまくる日々

ピアノは5歳の頃から始めた。
小学生の頃は練習も好きだったし、学校へ行く前に練習して、帰ってきてからも練習するような真面目さだった。

それに加え、わたしには3つ上の姉もピアノを習っており、楽譜をよく買ってきていた。
月刊ピアノという楽譜で、今でも出版されている。現在は1冊763円(税込)らしいが、当時は500円!
子供でも買いやすいワンコインだった上に、人気曲が詰まった楽譜は毎月の楽しみだった。

それをとにかく弾きまくる。
しかも曲は人気曲だから既に頭に入っているので、あとはピアノで再現するだけ。初見演奏を得意にしたいならば、知ってる曲から初めるのは良いと思う。知らない曲より、再現しやすいからね。

globeや安室奈美恵といった小室ファミリーの曲や、ドラマのBGMとして使われた曲、森山直太郎、福山雅治、ポルノグラフィティ、aiko、小田和正、ミスチル、Kiroro、GLAY、SPEED、SMAP、宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、Every Little Thing、サザンオールスターズなどなど、相当数の曲を弾いた。

当時小学生だったので、もちろん初見で演奏できない曲もあったが、毎月10曲ほどの楽譜を見て弾くことで自然と初見演奏が得意になった。

アレンジの良し悪しも、この頃にわかるようになってきた。

中学生の頃には楽譜を見れば初見である程度弾けるようになったので、ピアノの教則本の練習をしなくなってしまった。

練習せずにレッスンへ行き、初見演奏してその場を凌ぐ

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そんなこんなで、教則本の練習をしてもつまらないから(いま思えばもったいない…!)、練習をせずにピアノのレッスンへ行く。
目の前にあるのはソナチネかソナタか、そんな曲。
1週間も時間はあったのに、さっき自分のレッスン時間が始まる前にちょっと見ただけ。

「やばい、練習すれば良かった…」と思うけれど、意を決して弾いてみる。
「練習したんだけどここが難しくて弾けなかったんだよねぇ…」なんて雰囲気を出しながら、間違えても弾き続ける。(ここ大事)

練習していないのがバレバレな日もあれば、「まあまあ弾けてるわね」なんて日もあって、益々調子に乗ってしまった

さすがに大学に行ってピアノの先生についてからは、真面目にピアノを練習した。
課題曲も難易度の高いものだったので、初見で弾けたものはない。
ベートーヴェンのピアノソナタ23番「熱情」や、ラフマニノフ前奏曲op.3-2「鐘」、バッハやモーツァルトやメンデルスゾーン、ショパンやドビュッシーなどを弾いた。

初見が得意な人にはあるあるらしいが、わたしも暗譜が苦手。初見で弾けるのだから、弾きこむ必要がないからなのだと思う。
暗譜が苦手だということは自分でもわかっていたので、大学の頃には相当練習して、5分10分ある曲を最後まで目を瞑って弾けるようにした。

しかし、大学の前期後期試験の初見演奏の試験では、苦労したことがない。
ピアノ科のものすごくピアノが上手な友達でも、初見となると苦労していたのが不思議でならなかった。

わたしでは一生かかっても弾けないであろう曲を弾けるのに、初見演奏は苦手らしい。
でも練習すればその友達の方が上手いのだから、わたしのこの初見能力は一体…と思ったりもしたが、ピアノが上手い=初見演奏ができるというワケではないのだなと知った。

わたしのピアノの腕は大したことはないが、周りの学生を見ると自分は相当初見が得意なのだということには気づいた。

どうやって初見演奏をしているのか

わたしにとって初見演奏はゲームをする感覚に近くて、「この曲を初見でどれくらい正確に弾けるか」を試すワクワク感を楽しんでいる。

そこでうまく弾けると満足してしまって弾きこまないから上手くならないのだろうけど、初見のコツとして言えるのは「手元を見ない」ということだ。

まずは楽譜を正確に読み取る、調号、拍子、曲のテンポ、臨時記号等までザッと見渡して弾き始める。
音が跳躍するとき以外は手元は見ずに、常に楽譜を見続ける。1小節目を弾いているときには2小節目を見る、という感じだ。

初見演奏を「すごい」と言われることも多かったが、才能があるというより多くの楽譜を見て弾いてきたことで得意になったのだと思う。
パターンもある程度わかっていれば、指も自然と動く。
わたしの場合は数をこなしたことが、初見演奏が得意になったわけだ、ありがとう月刊ピアノ!と声を大にして言いたい。

そんなわたしだが、初見演奏がものすごく役に立ったのはたった一度だけ。

大学生の頃、聖歌隊のアルバイトで先輩に駆り出され、行った先の結婚式で新郎が前の日にお友達と飲みすぎてアルコール中毒になってしまった。そのせいで式は数時間後に予定変更。

次の式のアルバイトが入っている聖歌隊の方やピアノ奏者はいなくなり、わたしと聖歌隊の方が一人残っている状況で新郎が戻ってきて、予定より早く式が始まることになった。

さすがに音楽ナシでは入場しにくいだろうと思い、勇気を振り絞ってピアノを弾いた。入場曲はバッハの「主よ、人の望みの喜びよ」だったが、これは弾いたことがあったので難なくクリア。

その後は初見で賛美歌などを弾いたんだと思うが、よく覚えていないくらいとにかく必死だった。新郎の状況が状況なだけに、新婦の親族側が気のせいかお怒りモードだったからだ。

なんとかその場は切り抜けて、30分ほどの式は終わった。
この一件で、わたしの初見演奏能力はさらにレベルアップして今に至っている。

後にも先にも、これほど緊張した初見演奏はなかったと断言できる経験だったといえよう。

あの日の新郎新婦に、幸多からんことを!


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