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ギアチェンジ

最近仕事の話をnoteであんまりしていないんだけど(いつもか)、私は女性向けの漫画家で、ベッドシーンがわりと入るラブロマンスを描いているか(TL)、あんまり入らないラブロマンスを描いているか(女性漫画)、全然入らない少女漫画(原作・ネーム原作)を描いているか、どれかだ。でもわりと全部ラブロマンスかなあ。ごくまれに、青年誌(原作)や、恋愛がほとんど入らない少女漫画を描いたことがある。昔は恋愛ものが糞ほど苦手だったんだけど、さすがに25年以上描き続けていると得意になってきた。ラブロマンス上、ここはこうだろ、みたいなスキルが蓄積している。

どエロが得意だと思う。我ながら。エロを描くときは完全にギア・チェンジしているかんじがするのだ。世界に入り込む深さが違う。

じゃあ女性漫画や少女漫画が手を抜いているかっていうと、そんなことは全然無いのだけど、全体の構成を気にしていたりとか、キャラの見栄えを考えていたりする。TLはそういうんじゃあないんだよね。たぶんセクシュアリティ的な萌えしか考えてない。自分の萌えシチュ描いてるからこんなに世界に入り込むのだろうか。私の萌えシチュは『苦しみ』だ。セッ〇スがからむと苦しみを描かないわけにはいかない、みたいになってしまって、すごく苦しい、残酷な、愛憎ドロドロの耽美系な話になってしまう。キャラがもんどりうって苦しんでしまうのだ。

TLは特にセッ〇スが絡むゆえ物語とキャラが破綻しやすい傾向があるんだけど、破綻するギリギリまで責めずにはいられない。そういうギア・チェンジ。今回も攻めてしまっていて、最終回までキャラが破綻しないで済むのか、自分でもよくわからない、みたいになってしまっている。大丈夫なのだろうか。我ながら不安だ。

女性漫画や少女漫画は最初から「破綻ギリギリまで攻める」みたいなかんじではなく、話壊れないように普通に描いているかんじだ。TLだけこんな乱暴な描き方になってしまう。女性漫画や少女漫画が苦手か、といわれたら、そんなこともない。好きだ。TLだけたぶん、トラウマに触れててギア・チェンジしてるんだろうな、みたいな気がしている。トラウマなので、全然話を穏便に済ませられないのだろう。

歳をとってもこういう描き方になってしまうの、嫌なんだよな。なんだか。この歳までこの仕事をやっていると、トラウマの表象とかしたくないのだ。歌とか、曲作りとかもそうでしょ。若いころは自分の内面の表現とかするけど、歳とると、作中の自分自身の気配は引き気味になる。

『ラブ・ランジェリー』はその点、ちょうどいい距離感で描けた明るい馬鹿なラブコメでお気に入りだった。あんまりドロドロしていない。編集さんのアドバイス、というか、希望を入れたりしていたからだろうか。ありがたくもこの作品の次も、と言われてるんだけど、次はどういうのがいいだろうか。人間の滑稽さというか、馬鹿な愛おしさ、というか、そっち系のほうがいいのかな。

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