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ひとりで作曲する?それとも共同で?

2016年に販売された「えんとつ町のプペル」。キングコング西野亮廣さんが作った絵本として話題になりましたね。2017年、一昨年の時点で累計30万部突破。絵本としては異例の大ヒットを記録しました。

絵一つとっても、例えば空を描く仕事と、建物を描く仕事と、煙を描く仕事と、キャラクターをデザインする仕事と、色を塗る仕事っていうのは微妙に業務内容が違うんです。「空を描かしたら誰よりもうまい」って方がいらっしゃるだろうし、「建物をデザインさせたら私が一番だよ」っていう方がいらっしゃるだろうし、「キャラクターをデザインさせたら俺が一番だ」って方がいらっしゃる。「キャラクターは描けないけど、色塗らせたら誰にも負けないよ」っていう方がいらっしゃる。であれば、空のプロフェッショナル、キャラクターのプロフェッショナル、色塗りのプロフェッショナル、煙のプロフェッショナルで一つの作品を作ってしまえば、誰も見たことがない絵本ができるのではないか。
西野亮廣インタビュー【キングコング西野亮廣氏】お金とは信用である。出典:https://www.holg.jp/original-article/nishinoakihiro4/)


西野さんは、クリエイター凡そ35人と共に、分業制でこの一冊の絵本を作りました。アートの分野では、多くのアーティストが一緒になってチームとして一つの作品を作っているケースがありますよね(チーム・ラボやChim↑Pom等など)。もしくは、個人名で活動しているアーティストも、実際は分業制で行っている、ということも多々あると思います。大規模なものや、特殊な技術を必要とする作品など、確かにチームだからこそできる表現がありますよね。昔に戻ると浮世絵なんかも、絵師、彫師、摺師の分業体制で作られていることは知られています。

極端な例だと、1922年にアーティスト、モホイ=ナジが看板業者に電話で指示を与えて制作した「電話絵画」や、2009年にドイツ人作曲家ヨハネス・クライドラー(Johannes Kreidler)が発表した「Fremdarbeit (アウトソーシング)」など、委託して作らせることをコンセプトにした面白い作品もあります(Fremdarbeitと題されたこの作品では、クライドラー自身が中国の作曲家とインドに住むオーディオプログラマーに非常に安価な委嘱代で、自身の作品をコピーさせた作品を作らせ、それを自作と偽って発表したコンセプチュアルな作品)。

作曲家と演奏家、そしてコラボレーターの関係性って、なかなか割り切れないもののような気がします。

本思考論では、以下三つの項目に分けて、現代に至るまでの作曲家と演奏家の関係性、もしくは作曲家とコラボレーター、第三者の関係について、考えていきたいと思います。

(1)一体型〜演奏家(≠)or (=)作曲家

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