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シェーンベルク著のCoherence, Counterpoint, Instrumentation, Instruction In Form (Zusammenhang, Kontrapunkt, Instrumentation, Formenlehre) を読む前に。

最近のさっきょく塾では、抽象的な音楽や思考を言語化するために塾生さんたちとほにゃっとした言葉にならないアイディアや悩みを一緒に言葉にしたり、音楽に関する書籍や論文を原語から読んだりしています。

日本語というのは、曖昧なことを曖昧なまま表現するの適した言語であり、非常に便利である反面、特に西洋音楽を日本語で学んできた者として、よくわからないけど理解している気になっていることが多くあったことに、他の言語を学ぶ過程で気づきました(これが10年間多言語空間で生活した一番の収穫だったかもしれません)。

それまでは誰かに言われたアイディアを何も考えずにそのまま受け入れてきたわけですが、ふと立ち止まってみると、その根拠がどこにあるのか、全く知りませんでした。そしてもしかしたら、それらの曖昧な概念やアイディアは見えないルール(もしくはシーン全体の)となって、自分の想像力を狭めているんじゃないか、そうも思いました。

あてがわれた(自分が核を理解していない)ルールにのっとって創作を続けることは、他者の価値観の中でいかにうまく立ち振る舞えるか、その技術を磨くことであり、長年それを続けることで内面の創造の世界が縮小を招いているんじゃないか? 少しでも、本質に近いところに触れてみたい、よく言われているような当たり前の概念もどこに根拠があるのか、そしてその根拠は自分にフィットするのか考えてみたい、というわけで、長くなりましたが、さっきょく塾でちょっとずつではありますが、論文や本、原語から読み解いています(が難しいです)。

今回読むことになったアーノルド・シェーンベルクの著作「Coherence, Counterpoint, Instrumentation, Instruction In Form (Zusammenhang, Kontrapunkt, Instrumentation, Formenlehre)」は日本語訳だと「一貫性、対位法、楽器法、楽式」と訳せるでしょうか。部分と全体、一貫性に関する内容であり、学生時代によく言われた「構成を持つこと」や「モチーフがどう全体の中で機能するか」など、作曲初期に極々当たり前のように言われてきた概念にも関係しているのではないかと思います。

まず、こちらの文献を読む前に著者であるシェーンベルクについて少し書いていこうと思います。

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