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キャビキュリフェス2021一日目からBeat Furrer「Aria」

12月27・28日連日開催のキャビキュリフェス開催に先立って、プログラムより幾つか抜粋して作品をご紹介するシリーズです。第一回目は、オーストリア人作曲家クラウス・ラング(Klaus Lang)を取り上げました。

本稿ではベアート・フラー(Beat Furrer) の「Aria」についてまとめていきます。まず最初にベアート・フラーのプロフィールから書きだしていきます。

ベアート・フラーは1954年スイス・シャフハウゼン生まれ。同地の音楽学校で最初の音楽的教育を受ける。1975年にウィーンに移り、指揮をオトマール・スイトナー(Otmar Suitner)に、作曲をローマン・ハウベンシュトック=ラマティ(Roman Haubenstock-Ramati)各氏に師事。1985年にクラングフォルム・ウィーンを設立し、1992年まで指揮者としても活動。ウィーン国立歌劇場の委嘱を受けて最初のオペラ「Die Blinden(盲人)」を、2番目のオペラ「Narcissus」は1994年にグラーツ歌劇場のsteirischer herbstにて初演。1996年には、ルツェルン音楽祭のコンポーザー・イン・レジデンスを務める。2001年には音楽劇「Begehren」をグラーツで、2003年にはオペラ「invocation」をチューリッヒで上演。2005年にはオーディオシアター「FAMA」をドナウエッシンゲンで初演した。1991年秋からは、グラーツ音楽・舞台芸術大学の作曲科教授を務めたが、現在は退官。1990年代末には、エルンスト・コヴァチッチと共同で、グラーツに現代音楽の国際的なアンサンブルと作曲家のアカデミーである「impuls」を設立。2006年から2009年まで、フランクフルト音楽大学の作曲客員教授を務める。2004年にはウィーン市音楽賞を受賞し、2005年からはベルリンの芸術アカデミーのメンバーとなる。2006年には「FAMA」でヴェネチア・ビエンナーレの金獅子賞を受賞。2010年にはバーゼル劇場で音楽劇「Wüstenbuch」が初演される。2014年には、オーストリア国家大賞を、2018年には「音楽に貢献した人生」を称えるエルンスト・フォン・ジーメンス音楽賞を受賞した。2015年5月にオペラ『La Bianca Notte(明るい夜)』をハンブルクで初演。2019年1月にベルリンのウンター・デン・リンデン国立歌劇場で、オペラ『Violetter Schnee(紫の雪)』が初演される。1980年代以降フラーは、ソロや室内楽、合唱、オーケストラ、オペラのための作品まで幅広いレパートリーを生み出している。

・・・こんなにオペラ、ミュージックシアターを作っていることに言葉を失いますね。そしてそれを可能にしているヨーロッパの音楽シーンの充実度を羨ましく思います。気を取り直して、今回(ついに!)演奏されるベアート・フラーの「Aria」について書いていきます。

この作品は1999年に書かれました。本公演で演奏される作品は2000年以降に書かれたものが多いわけですが、そうでなくても既に20年前に書かれたものですので、ベアート作品の中では古いものになります。編成はソプラノ、クラリネット、パーカッション、ピアノ、バイオリン、チェロ、ピエロ編成の変形版と言えるでしょうか。初演は、同年のヴィッテン現代音楽祭、アンサンブル・リシェルシュが行いました。

解説の一部を引用して載せてみます(意訳を含む)。

「Aria」は、かつて愛し合っていた二人が偶然の出会いによって再びゆっくりと近づいていくという再会と分かれをテーマにした演劇的作品である。ギュンター・アイヒ(Gün­ter Eichs)のラジオ劇「Festianus Märtyrer - Bei geöffnetem Fenster」を中心に、ジョルジュ・バタイユ(Georges Batailles)の「L'Impossible」のテキストが添えられている。女性の視点から描かれた場面をソプラノが3つの異なる音の視点(もしくは3つの音のジェスチャーと言えようか)で対峙させる。音のジェスチャー;32分音符で書かれた半音階のフィギュア、6連符で書かれた変化する音程構造、16連符の連続する音型。それらは構造モデルの要素であり音響の背景であり明確に聞こえることはなく、全42小節がセクションごとに繰り返される。
(Musikprotokoll ウェブサイトより引用)
https://musikprotokoll.orf.at/node/8404

これだけ多くの舞台音楽作品を生み出しているベアート・フラーですが、個々の作品での実験や研究がこれらの大曲を作り出すエレメントになっていることは明白です。一つ一つの作品の中で情熱的に思考された音響が着実な技法となり、その技法が結集したものが彼の音楽人生の軸である舞台作品の土台となっています。解説、続きます。

年末二日間の現代音楽フェスティバル<Cabinet of Curiosities 2021>
日程:2021年12月27日(月)・28日(火)
会場:ドイツ文化会館 1階ホール
チケット料金(日時指定・全席自由※変更になる場合があります):
フェスティバルパス※限定 50席(12月27日昼公演もしくは夜公演+12月28日公演)一般:5,000円 / 学生:3,000円
単券
ーアンサンブル九条山 [2021年12月27日(昼夜各公演)昼公演 16:30 start (開場 16:00)| 夜公演 19:00 start(開場 18:30)] 一般:2,500円 / 学生:1,500円
ーCOC Orchestra [2021年12月28日17:00 start(開場 16:30)] 一般:3,500円 / 学生:2,500円
*学生券をご購入の方は、公演当日年齢を確認できるものをご持参ください。
申込フォームURL https://forms.gle/pmDwdiLAe7xgbbRS8
主催・お問合せ: Cabinet of Curiosities
E-Mail: cabi.curi.coc@gmail.com
URL:https://www.facebook.com/cabi.curi
文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業
協力:ゲーテ・インスティトゥート東京
【プログラム】2021年12月27日(月)演奏:アンサンブル九条山
クララ・イアノッタ | Clara Iannotta (b. 1983): D’après (2012)*
カローラ・バウクホルト | Carola Bauckholt (b. 1959): Duett (2002)*
ヴィンコ・グロボカール(Vinko Globokar): Voix Instrumentalisée (1973)
クラウス・ラング | Klaus Lang (b. 1971): Die Fenster des Universums (1999)
ベアート・フラー | Beat Furrer (b. 1954): Aria (1998/1999)* 

アンサンブル九条山 太⽥真紀(Sop.)若林かをり(Fl.)上⽥希(Cl.))福富祥⼦(Vc.)畑中明⾹(Per.)森本ゆり(Pf.)
ゲスト:對馬佳祐(Vn. )後藤彩子(Va.)
指揮:石川征太郎

2021年12月28日(火)演奏:COC Orchestra
シモン・ステン=アナ―セン | Simon Steen-Andersen (b. 1976): Chambered Music (2007)*
小出稚子 | Noriko Koide (b.1983): Kohaku (2011)*
ドミトリ・クルリャンツキー | Dmitri Kourliandski (b. 1976): Negative Modulations (2006)*
マーリン・ボン | Malin Bång (b. 1974): blooming brume (2020)*
アン・クレア | Ann Cleare (b. 1983): the physics of fog, swirling (2018-2019)* *日本初演

COC Orchestra
齋藤志野(Fl.)、荒木奏美(Ob.) 照沼夢輝(Cl.) 中川日出鷹(Fg.) 岸上穣(Hr.) 星野朱音(Trp.) 森田小百合(Trp) 茂木光伸(Trb.) キム・ジョンヨプ(Tub.)沓名大地(Per.)新野将之(Per.)大瀧拓哉(Pf.)山田岳(Gt.) 太田咲耶(Hp.)望月豪(Mand.)松岡麻衣子(Vn.)山本佳輝(Vn.)美間拓海(Va.)山澤慧(Vc.)下島万乃(Vc.)近藤聖也(Cb.)佐原洸(Electronics)
指揮:馬場武蔵


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