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文脈と音楽ー自作との関連について②

前回は、自作を語る上でわたしが重要だと感じている幾つかの点についてお話しました。ここからは、具体的に作品を取り上げてお話していこうと思います。度々レクチャーで、「やりたいことと作品といまいちリンクしていない」ということがありますが、恐らくそういった面もあると思います。全てを言葉で語り切れないことは承知の上で、今回はそこに挑戦させてください。

オーケストラとは何か

「What is (not) there」は、Ensemble S201 の委嘱によって書かれた作品で、編成はフルート、オーボエ、クラリネット、チェロ、アコーディオン、そして携帯電話と映像から構成されています。古代より音律研究において三度音程は厄介者でありました。しかし、だからこそ魅力があり、そこにある不合理は美しいものです。例えば平均律の世界であっても、自分で音程を作り出す弦楽器と音程が決められている鍵盤楽器等とのアンサンブルにおいて、そこに美しいずれが生じること、また本来音程が下がらないピアノも響きによって少し下がったり上がったりしているように感じるような、抽象的な世界の中で香る美しさは私にとって愛でる対象であります。

この作品は所謂長三和音、もしくは短三和音のみで進んでいきますが、その間の音の移行を非常に薄い紙を重ねるように、長く呼吸するようにゆっくりと同主調関係が変化していくように書かれています。構造としては単にそれだけの作品です。

この作品において取り上げたかったことは「オーケストラ」です。「オーケストラ」を書きながら「オーケストラそのもの」と対峙するのは非常に困難なため、異なる編成で「オーケストラ」の不思議に取り組んでみようと思いました。

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