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キャビキュリフェス2021二日目から小出稚子「琥珀」

12月27・28日連日開催のキャビキュリフェス開催に先立って、プログラムより幾つか抜粋して作品をご紹介するシリーズです。フェス二日目12月28日COC Orchestra(指揮:馬場武蔵)公演で演奏される小出稚子さんの「琥珀」についてお聞きすべく、公演準備中の小出さんに直接お話を伺いました(インタビュア:わたなべゆきこ)。

ーこの作品はいつ頃書かれたものなんでしょうか。

2011年にアムステルダム音楽院の作曲科修士課程在籍中にオランダのニュー・アンサンブル(Nieuw Ensemble)との共同プロジェクトに参加して、そのときに書いたものです。

ーオランダ留学をされて数年経って落ち着いた頃に?

そうです。一年目はアスコ・シェーンベルク(Asko Schönberg)との共同プロジェクトがあって作品を書かせて頂いたんですけれども、二年目はニュー・アンサンブルだったんですね。

ー馬場さんとのミーティングでもお話されていましたが、初演の演奏はとても気に入っていると。

はい、指揮者のBas Wiegersととても相性がよく、深く理解してくださって、この演奏とても気に入ってるんです。今回は、新たに馬場バージョンが聞けることを楽しみにしています。

ータイトルでもある「琥珀」の意味を教えて下さい。

琥珀は英語で言うAmber(アンバー)の意味で、そのままなんですけれども、宝石のひとつで石ではないんですね。樹液がガチガチに固まったもの、べっこう飴のようなものだというとイメージしやすいかもしれません。樹液が固まって鉱物みたいに硬質に見えるときもあれば、はちみつみたいにドロドロ流動的な時もある。琥珀が見せる様々な状態を質感として音で表してみたいと思いました。

あと琥珀って生きたままの虫や葉っぱを化石として閉じ込めてしまうじゃないですか。結晶の中に虫や自然の記憶がそのまま閉じ込められてしまった、そういう感じも表現しています。

ー特に最初にキラキラした炸裂音で始まるのが印象的なんですが、様々な質感と動的な動きがとても印象的な作品ですね。

最初のところは、琥珀を地面に落としたような質感から始まります。透明感みたいなもの、鉱物的な、、ああいうのを固い床にたたきつけて割れるような感覚です。その中から虫や葉のかすれた記憶がじわじわと立ち上ってくる感じ。

ー冒頭はエネルギーが生まれてすぐ途中停止するような瞬間が連続しますが、後半になるとまるで虫が記憶を取り戻したかのように、様々な容態の音楽が現れますよね。閉じ込められた何か動的な記憶が蘇って走馬灯のように流れていくイメージがしました。公演で聞かせて頂くことを楽しみにしています。

小出 稚子 (Noriko Koide)- 1982年生まれ、千葉県出身。東京音楽大学、同大学院修了(2008)、ローム ミュージック ファンデーション奨学金、文化庁新進芸術家海外研修制度、デンハーグ王立音楽院より助成を受け、アムステルダム音楽院およびデン・ハーグ王立音楽院を修了(2009-2014)、インドネシア政府奨学金および野村財団より助成を受け、インドネシア国立芸術大学スラカルタ校でジャワ・ガムランの演奏と理論を学ぶ(2014-2015)。これまでに作曲を池辺晋一郎、伊左治直、遠藤雅夫、佐藤眞、藤原豊、福田陽、細川俊夫、Wim Henderickx、Martijn Padding、Yannis Kyriakides各氏に師事。オーケストラ作品《ケサランパサラン》で第17回芥川作曲賞受賞(2007)。その後、第76回日本音楽コンクール作曲部門第2位と聴衆賞、第18回出光音楽賞、アリオン賞等を受賞。2016年トンヨン国際音楽祭で初演された《布袋》で、アジア作曲家ショーケース・ゲーテ賞ならびに聴衆賞を受賞。作品は、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、Asko|Schönberg Ensemble、Nieuw Ensemble、東京混声合唱団、ヴォクスマーナ、アンサンブル・ジェネシス、大井浩明、大萩康司、村田厚生、吉原すみれ各氏、武生国際音楽祭、ガウデアムス国際音楽週間(ユトレヒト)、上海現代音楽週間、Music From Japan Festival(ニューヨーク)、Toonzetters(アムステルダム)、テレビ朝日「題名のない音楽会」、NHK教育テレビ、NHK-FM「現代の音楽」等で演奏、紹介されている。自作自演ユニット「鬼子母神不眠ガールズ」、エロティシズムをテーマとするアート・ユニット「すけべ人間」各メンバー。作品の題材によって様々な作曲スタイルを用いながらも、斬新なオーケストレーション、細やかな音形や特殊奏法などによって造られる音響のテクスチュアと色彩が、小出の作風を特徴づけている。

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