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冷水乃栄流さんを迎えて①

夏にさっきょく塾で行った冷水乃栄流さんのレクチャーから第一弾、ようやく書き起こしを掲載します。冷水さんは、1997年和歌山県生まれ、現在東京芸術大学修士課程で学ぶ若手作曲家さんです(2020年12月現在)。今年行われた第30回芥川也寸志サントリー作曲賞で最終候補作品、また聴衆賞を受賞した「Not Found for Orchestra」についてお話頂きました。

わたなべゆきこ(以下わたなべ):芥川也寸志サントリー作曲賞って由緒ある賞じゃないですか。オーケストラ作品を一日で複数曲聞けるなんて、それだけで大がかりだし、なかなかない機会だと思うんです。なんですけれど、実は作品そのものについて検証されていない。今年だったら「候補作曲家が全員現役芸大生」であるとか、以前ですと「全員女性作曲家」などというワードばかりが飛び交って、そればかりが記憶に残ってしまって、「昨年の芥川賞受賞作品って結局どんなだったの?」と思ってしまうことさえあって、もったいないと感じていたんですね。今回は塾生さんのご意向もあり、冷水さんから直接作品のお話をお聞きすることができ、とても嬉しく思っています。

冷水:機会を頂き、ありがとうございます。それでは、「Not found」に絡めて自身の音楽観などについてお話していきたいと思います。

引用への思い

冷水:まずこの作品を聞いて思い浮かべる言葉は「引用」だと思うんです。(この作品では、ベートーヴェンの「第九」が引用されている。詳細は作品解説より)師匠の鈴木純明先生も「引用」をよく用いているし、「あぁ、純明先生のお弟子さんだから、引用ね」って言われるんですけど、実は「引用」自体に、さほど思い入れがないんです。

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