共創の時代へ~なぜ今「共創」なのか~

企業などの組織の生き残りが激しさを増す中、枠を超えて「共創」を求める企業が増えています。

共創(Co-Creation)とは、企業がそれまで自社内だけで行ってきた企画や開発などの活動を、社外の組織と一緒に進めていくことと言われています。しかし、近年求められている「共創」は単なる市場優位のための関係構築ではなく、「新しい価値の創造」と「活力の創出」が最大のテーマとなっています。いったいどういうことでしょうか。

●なぜ今「共創」なのか。
1970年以降、豊かさが実現されてからは、当時絶対的な価値であった生活やモノの豊かさは求心力をみるみる失い、活力を生み出すものではなくなりました。多様な価値観が認められる現代では、どこにも「正解」はなく、パンデミック、戦争、災害、経済危機を経て何が起こるかわからないという意識が、私たちに深く浸透しています。
また2000年以降、ネット社会が進むにつれ、目まぐるしく人々の意識も変化するようになり、企業の実践・改革スピードが企業の生き残りを左右する時代となりました。築き上げてきたビジネスモデルがあっと言う間に崩れ去ってしまう事例も続出(Uber→タクシー業界×、Airbnb→ホテル業界×、Amazon→出版業界×、Netflix→レンタルビデオ業界×)。かつてのような明確な答えが見えないがゆえに、あらゆる場面で活力が低迷し続けています。
一方、先端の企業群も、取り組む課題がSDGsを始めとした人類的・地球的課題(脱炭素・新エネルギーなど)にシフトしていますので、どの位相の企業も自社内の人材や技術蓄積、設備投資だけでは答えを出せない未知の領域に突入したと言えるでしょう。
そこで生まれ始めているのが企業の枠を超えた「共創」です。特に対面による共創空間から企業間・事業間連携を推進する(=共創する)ことで、答えなき時代に「新しい価値」と「人材の活力」を生み出すことに可能性を描き始めているのです。
 
●「共創」の具体事例
例えばAGC。ガラス素材の会社ですが、新たな創造拠点として協創空間AO(AGC OPEN SQUARE)を設立。100年以上、向き合ってきた「素材」への視点や技術を「ひらく」、これからもお客様と一緒に新たな地平を「ひらく」というコンセプトのもと、今まで乃村工藝社、JAID、ブラインドサッカー協会、多数のアーティストなどと共創してきています。
他にも、味の素のCIC(CLIENT INNOVATION CENTER)、島津製作所のみらい共創ラボ、フクシマガリレイのMILAB(ミラボ)なども同様に、この5年でも企業内に対面の共創空間が続々と生まれています。何もかもが不確かな今、「共創」による価値創造と活力をどの企業も求めている、ということではないでしょうか。
 
このような「共創の時代」を50年以上前から見据えた偉人を最後に紹介します。

>「いいかい、君たち。分からなければ聞けばいい。持っていないなら借りればいい。逆に聞かれたら教えるべきだし、持っているものは与えるべきだ。人間一人でできることなど高が知れている。技術の世界はみんなで共に創る『共創』が肝心だ。」(佐々木正氏:元シャープ副社長 工学博士)
※佐々木氏は、スティーブ・ジョブズ氏(Apple)、松下幸之助氏(Panasonic)、李健熙氏(SAMSUNG)、そして孫正義氏(Softbank)など多くの経営者が憧れた伝説のエンジニアで、1964年にこの言葉を残しています。
 
共創の時代になればなるほど、贈与(Give&Giveなど)による関係構築が更なる共創関係を広げていくため、モノやサービスから「人こそが全て」に移行するのです。

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