🔸「世界の潮流」その②は、さらに状況認識を深めて追求して行きます！

前回は、第一次世界大戦後に覇権国となったアメリカでしたが、他国も力をつけていったとき、世界は協調に向かうのか？新たな覇権に向かうのか？というテーマを追求しました。

今回は、SDGｓなどの「世界的な課題の解決」に焦点を当て、「世界の潮流」を読み解いていきます。

これからの社会はどうなってゆくのか、世界の潮流を掴んで行きましょう。

【１】石油枯渇説から地球温暖化説へ、さらにＳＤＧs（より包括的な課題解決）へと移行してきたのは何故でしょうか？

★これまでも環境問題はあったが70年以降注目を浴び始めたのはなぜ？
・それまでは社会全体が経済成長第一で豊かさを追求しており、環境保全よりも経済成長が優先されていた。
⇒◎それに対して、70年ごろになると先進国から徐々に豊かさが実現され、人々の意識の中で環境問題に目を向ける余裕がでてきた。
・同時に、市場の拡大⇒経済のグローバル化によって、先進国だけでなく後進国も含めた世界全体で工業化が進む。更に、生産力の安定や医療の発達によって人口も増大し、それに伴って必要な資源も増大→森林伐採なども加速していった。
◎そうして環境問題は、地域の公害問題から地球規模のへと“目に見えて”深刻化していった。
ローマクラブによる「成長の限界」は、コンピューターシミュレーションを用いて具体的に数値を出しながらも、そのような状況の深刻さを訴えた初めての提言。直後に起きたオイルショックとそれに対する省エネ対策は、「成長の限界⇒石油枯渇説」の現実味を一気に持たせることに繋がった。更に、それがマスコミや学校教育でも取り上げられ、「宇宙船地球号」「循環」「エコロジー」などの新しい言葉が生み出される中で、人々の中に環境に対する問題意識が浸透していった。

★石油枯渇説から地球温暖化説、そしてSDGｓへと移行したのはなぜか？
ex)危機発での共認ではみんなが動かなかった（他人事になった）のではないか？/新説によって新市場を開拓しお金儲けをしようとしている人がいるのでは？

・石油の起源には「有機（＝有限な生物資源からできている）説」と、「無機（＝地球が無限に作り出す）説」があり、石油枯渇説は前者に立脚している。しかし、有限説も無限説も今なお有力な仮説で決着がついていない。従って、石油（資源）をめぐる対立（特に資源国・途上国は枯渇説→成長の限界に反発）は科学論争の様相を呈し、収拾がつかずに頓挫することになった。
・代わって新たに登場したのが、地球温暖化説。（⇒COP3）
→CO2排出の削減目標を数値として設け、各国の温暖化対策を促そうとするも、CO2の筆頭排出国であるアメリカや中国が参加せず、途上国の参加度も低く各国の足並みは揃わなかった。
→◎環境問題に対して世界共通の課題意識を持とうとしているが、石油枯渇説でも地球温暖化説（CO2削減）でも世界共認を形成できず何も実現できなかったということ。
・そのような流れの末についに国連加盟国全員の合意が達成されたのがSDGｓ。
その前身は途上国支援を中核とするMDGｓで、そこに環境・健康等、17分野にも及ぶより包括的な目標を組み込んでいる。そのどれかに取り組んでいれば評価され、成果管理は年に一回取り組み状況を報告する程度。国際法や条約の縛りもなければ、取り組みが進まないことへのペナルティもない。従って、どこからも抵抗や反発がなく初の全員合意にこぎつけた。（しかし、どこまで有効性があるかは疑問が残る。）

★なぜそうまでして合意をとる必要があるのか？
その背景には、覇権の凋落があるのではないか。
かつてアメリカは「世界の警察」として、力の原理（覇権）で世界を統合していた。しかし覇権の力が凋落し、今や先進国でも世界共認を形成できなくなっている。（アメリカ一極支配→G7→G20の流れに同じ）
⇒◎覇権が衰弱して各国の力が均衡すると、あらゆる国のあらゆる思惑を対象にして、より有利な立ち位置を模索しなければならない。（アメリカの覇権が有力な時はアメリカだけ対象化していればよかった。）そのような複雑なバランスの中で現在の世界は成り立っており、同類圧力が高まっているともいえる。SDGｓのように協調へ向かうというと、平和で仲良くなるようなイメージがあるが、それは、どこかで喧嘩が起きても止めれる人がいなくなったという事でもある。（＝無秩序状態）
◎つまり力の原理に代わる新しい秩序を作る過程に入ったということ。力で秩序化できなければ、合意で秩序化するしかない。
⇒何かの目的のために合意を取るのではなく、みんながいいと思って目指すという事（＝合意すること）そのものが、目的になっている。
→金儲けのためであれ問題解決のためであれ、先進国も後進国もすべて含めた「合意（＝世界共認）」の中でしか、新しいものや価値を生み出すことができなくなっている。従って、石油枯渇説から地球温暖化説、そしてSDGｓへと抽象度を高め、実現性を下げてでも合意をとったということではないか。

【２】今回のコロナパンデミック時の世界同時期ロックダウン（生産制限や外出制限）は、ある意味「協調」の象徴とも言えますが、その見方は妥当か？

各国が“一斉に”ロックダウンしたのは人類史上初めての出来事。個人レベルで生産制限や外出制限を捉えると「強制」のように感じるかもしれないが、その点においては、国家レベルでは「協働」しているようにも見える。
世界各国が“同じ方向を目指した”ことはSDGsとの共通点だが、実際に「行動」にまでなったところに違いがある。この違いをどう見るか。

★なぜ「行動」まで行くことができたのか？
ex)情報も人もエネルギーも、経済各国と全て繋がっているのが当たり前の時代になっているから/SDGsで合意していたから/人命が関わることで危機の切迫度が高いから

・パンデミックにおいて“一斉ロックダウン”のような「協調行動」が実現したのは初めてだが、一国だけではどうにもできない危機に対して各国が協働で対応した事例はこれまでもある。
例えば、G20による金融危機（経済・生活の危機）に対しての、金利の引き上げや金融の引き締めはそれにあたる。
⇒◎危機状況では特に秩序が求められ、より具体的な実践方針と行動が必要となる。（SDGｓのように充足目標を共有して「合意」を形成するだけでは危機を突破できない。）だからこそ、一斉じゃないと意味がない（足並みを揃えないと、対応の違いによって更なる混乱が生じる）。
⇒◎今回の一斉ロックダウンも人命がかかった危機管理における「協調」行動だったとみることができる。
国家が協働に向かう動因となった危機として、グローバル化に伴う世界的な治安＝国内秩序の悪化も考えられる。（ex銃乱射、詐欺最多）
実際日本でも、マイナンバー制度の導入や、監視カメラの増加など、国家による管理圧力が強まっている。コロナに対するロックダウン＝戒厳令に近い対応の背景には、治安危機への対応という側面もあったのかもしれない。
そしてこの実践は、全員で合意・一斉にやれば何でも（ex戒厳令に近いような国家権力の行使でも）実現できるという証明（実例）にもなった。

・またこのような協調行動は、前提に世界で合意したSDGｓの認識があったからこそ実現できたとも捉えられる。（ロックダウンは忠実なSDGsの実践事例）
◎その視点で歴史を振り返れば「成長の限界があってG７が始動」「COP3があってG20が活性」等、同様に認識の共有⇒実践という構造が繰り返されている。協働を実践するには、その前提に認識（＝合意形成）が必要であるということ。
認識があるからこそ、実践に必要な国家権力も含めた力の行使も可能になる。
そしてその認識が、SDGｓのようにより包括的なものになっているということは、それだけ世界の共通課題が増えているということでもあるのではないか。

◎この議論全体からいえることは力の原理の衰弱から、新しい秩序の形成が世界的に求められているということ。

そのためには（国家であれ企業であれ金融であれ）合意形成⇒共通課題の設定による協働しか選択肢がない。世界は世界的な共通課題を欲しているようにも見える。
これは新しい時代の転換点であり、覇権or協調という軸では捉えきれない新しい同類闘争の土俵が作られる過程とも言える。
そこでは、人類的地球的課題の共認解決に向かうベクトルをもち、各国の世界観の多様性を認めながらどこまで協働に巻き込めるかが問われる。そして新しい秩序（⇒共通課題の突破）づくりをどこが先導していくのか？という創造競争の様相を呈している。協調協働の一方で、同類闘争がなくなることはなく、その圧力は世界（国家間）のみならず企業も含めて、どこで切っても相似形で強まっている。（今や、社会課題を起点としなければどんな事業も成り立たない。）
その中で何かを実現しようとすれば、どこかの国（や企業）と組んでいく＝共創関係を結ぶ必要がある。
どこと歩調を合わせてゆくのか、翻って日本は協働したい国だと思われているのか？が問われている。

★新秩序を形成していく潮流の中で、どのような国が同類闘争の競争と共創を先導していくのだろうか？
目的は未知課題をどう突破して実現してゆくか⇒秩序を形成してゆくかということ。
日本はできるのか？アメリカができるのか？中国やロシアか？
◎いずれにせよ、今までの時代にない創造競争に適応し、世界の創造力を高めるには、さらに秩序化の歴史を遡った自然の摂理をつきつめていくことが、求められるだろう。
そういう意味で創造共創のテーマとして、どんなものが考えられるか？どこと協同すべきなのだろうか？
⇒他国（他者）をよく知ること。他国から日本はどう見えているか？を知ることは生きていくうえでの大きな追求テーマになる。