見出し画像

数年ぶりに喧嘩したら、意外と良かった話

今日は家族総出で結婚式に参列した。私の勤める会社の部下の式である。そんなめでたい日に、夫と壮絶な喧嘩をしてしまった。
自分で言うのも何だが、おしどり夫婦な私たち。喧嘩は実に数年ぶりである。
結婚式という幸せなイベント、そして夫婦のリアルな揉め事を通じて奇しくも「結婚生活」についてやたら考えさせられる日になったので、その気持ちを忘れぬようここに書き記しておこうと思う。
(日記的な投稿ですみません)

難易度Aレベルの子連れ外出

子連れでの外出の難しさは、親なら誰もが一度は感じたことがあるだろう。
生理的不快感や欲求で泣く乳児も、より複雑、そして多様な理由で愚図る幼児も、そのレベル感や性質は違えども、どれも一様に大変だ。
我が家には現在気が強い王様タイプの2歳児、そしてまだ首も座っていない2ヶ月の男児がいる。
この2人を連れての外出は「計画力、体力、持久力、判断力、交渉力、腕力、注意力」など様々な能力を問われる一大ミッションである。

それにお出掛けの距離、気温、手段などの情報が付加されると、ミッションの難易度が決定する。

例えば、歩いて10分の近所のスーパーまでのお出掛けは難易度Eランク。電車で1本の都市への子連れランチは難易度Cランクなどなど(※完全に私の主観です)
そして今回の結婚式への参列は、現地までの距離の遠さに加え、35度を超える猛暑日、次男の低月齢…という状況により、私の中でAランクに認定されていた。

怒涛の事前準備

大事な部下の結婚式に遅れるわけにはいかない。
祝儀袋・新札・袱紗、各自のフォーマルウェア、猛暑対策グッズの購入など、マストで必要なものは数ヶ月前から用意を始めた。
そして式の前日の夜、当日の持ち物の準備を念入りに行った。

子連れ外出の荷物は恐ろしく多い。子供が2人になるとオムツも着替えも2倍である。

また、モノの用意だけでなく、事前の情報取得も重要だ。ホテルに授乳室があるか、何階にあるのか、乗り換えの駅にエレベーターはあるか…神経質になりすぎるのもどうかとは思うが、こういった情報を知っているとやはり当日の動きが格段に変わる。
私は熱中症を避けるため、なるべく暑さをしのいで行けるルートを探し、1時間前に現地に着いて授乳を済ます計画を立てた。

家を出られたのは予定の45分後

これほどに準備をしていたのに、結果家を出られたのは予定時刻を45分も超過してからであった。

出発時間直前までトイレにこもり、挙げ句の果てに「ちょっと記事読んでたわ」と言い放った夫にはもちろん、事前準備をしていたことで大丈夫よね!とすっかり慢心し切っていた自分にも、私は大いに苛ついていた。そしてその後、事前にお願いしておいたにも関わらず、自分の服や靴の用意を全くしておらず、それを私のせいであるかのように夫から逆ギレされた瞬間、私は完全にキレてしまった。
路上で暴言を吐いたのは久々である。全く大人気ない…と冷静になった今なら思う。

嫌なことは続くものだ。乗換駅では夫の電子マネーのチャージが足りず電車を乗り逃したりし、結果到着駅についてから会場まではこの暑さの中、まさかの全力疾走である。

ローヒールとは言えパンプス、且つフォーマルウェアでの走りはかなりきつい。おまけに子供2人付き。海外で流行っているようなベビーカーランとは似ても似つかぬ、爽やかさ皆無の走りを続け、会場に着いたのは実に挙式開始の1分前であった。
せっかくセットした髪も、メイクも既にぐっちゃぐちゃである。無論授乳もできなかったため、次男も泣いている。
こんなに緻密に計画を立てたのに、子連れでの外出というのはここまでそれを狂わせるのだ。

怒号が飛び交う!数年ぶりの大喧嘩

私の怒りは収まらなかった。過去にも同じような夫の計画性のなさで頭にきたことは何度もあったが、ここまで感情を露わにはしなかった。多少小言を言っても直ぐに矛を収めてきたのだ。

今回は、とてもとても大事な部下の結婚式であったこと、それに遅れまいと計画を緻密にしていたにも関わらず失敗したという事実が私を心から落ち込ませていた。

さすがに披露宴の場では気持ちを切り替えたが、帰宅後に封印していた苛つきが一気に解放され、私の感情は爆発してしまった。
何よりも私が腹が立ったのが、自分の非を認めようとしない態度についてであった。今回のことについては100%正しい自信があったため、直ぐに彼が謝ってくるのが当然だと思っていた。
しかし謝るどころか逆ギレの様相である。論点をすり替えてきたりと交戦の構えも見えたため、「これはとことんやってやるぜ」と私の闘争心に火がつき、思いの丈をぶつけまくった。

男性に「察してよ」は無理

私たちには結婚の時に決めたルールがある。その一つが「思ったことはストレートに言う」ということだ。

所謂、日本人女性的と言おうか、私は彼と結婚する前までは気持ちを極限まで溜め込むタイプの人間であった。溜めて溜めて溜めて、我慢できなくなって爆発するので、その時には時既に遅し…というのが定番のパターンだった。

彼はこう言ったやりとりを嫌う。さらに明らかに機嫌を損ねているのに「怒ってないよ」と言われたり、男性が気持ちを察してくれるのを待つかのような態度を取られるのを苦手に思っている。

私も以前はそのタイプだったので気持ちはよくわかる。女性は機微を感知する。だからこそ、それを相手にも求めてしまう。「私は怒ってるのよ。その理由はわかるでしょう。ちゃんと考えて謝って私の機嫌を取りに来なさい」と。
だが、男性は察しない。女性の目からしたら明らかである怒りの要因すら正確に掴んでいないことも多い。

このすれ違いについて私は「でも言われなくちゃわからないでしょ」という男性側の意見を支持している。確かに正論だなと、彼と付き合いだして気づいたからである。
「察してよ」は時間と気力の無駄である。さっさと怒りの原因を伝えて、そしてどうするかを話し合った方が建設的だ。

信頼がベースにあれば解決できる

どれだけ仲が良くても、性格の合う2人でも、所詮は別の人間。意見が対立することもある。私はこんな時、全てを丸裸にする勇気があることが、夫婦をやっていくにあたってのお互いへの信頼を表していると思っている。
「自分が我慢すれば収まるのだからそうしよう」「揉めるのが面倒臭いからやめておこう」と問題に蓋をするのは、結局、相手を、そして相手の自分への愛情を心から信じきれていないからではないかと思うのだ。
勿論小さなことは我慢しても良いと思う。だが、自分が納得できないこと、将来的に尾を引きそうなことに関しては、絶対にストレートに話し合うべきだ。

数年ぶりの喧嘩であったが、結局30分ほどでそれは収束した。彼は心から謝罪してくれたし、私も大人気ない態度をとったことを詫び、そして彼が今日一緒に来てくれたことへの感謝を改めて伝えた。
たまには揉めるのもいいなと思えるほど、その後の気持ちは晴れやかであった。
安定した毎日によりふわりと漂っていた絆の糸を、きゅっと結び直すかのようなスパイシーな出来事だった。

奇しくも、今日の結婚式で上司がこう挨拶をした。「相手にこれをしてやったんだ」「私はこれだけやっているんだ」という気持ちがトラブルの元凶である、と。相手の気持ちを考えず独りよがりになっているからであると。
私の計画は確かに緻密だったかもしれない。だけれどもマイペースな彼にとっては、息苦しいものになっていたはずだ。
人間関係は正しさが全てではない。私は今回自分の正しさには自信があったが、それが「いいこと」であるとは言い切れないのだということを痛感した。
相手の気持ちを慮って、対話していくこと。それが本質的には大事なのである。
新郎新婦に向けられたはなむけのスピーチは、こうして私の心も打つことになった。
そして、何より大好きな部下の晴れの姿は心から美しく、愛情に溢れた結婚式は最高に楽しかった。結婚っていいなとシンプルにそう思わされた。

夫婦になること、夫婦を続けることには体力を使う。今日のようにすれ違うこともある。だけど、どんな問題もこの人と共に解決しながら生きていきたいと思ったからこの道を選んだのである。
新郎新婦ふたりの弾ける笑顔と、仲直りのハグから伝わった彼の体温を思い出しながら、私も自分自身への結婚の誓いを再確認している。

いいなと思ったら応援しよう!

YJ
本代に使わせていただきます!!感謝!