電車内にて

人のまばらな車内。

足元を見るとパステルカラーの液体が溜まっているのに気づいた。
自分のビニール傘は茶色く染まっている。

そして、そのまま目線を右に向けると、液体は枝分かれしながら、端の方まで続いている。

え??

一瞬頭が混乱したが、反対側の端を見て状況は把握できた。

空っぽになったプラスチックの容器と、大量の氷がそこにはあった。

カフェオレが車内にこぼれていたのだ。


そして、すでに直立したプラスチック容器の真横には、1人の男性がイヤホンをつけて平然と座っていた。


自分は嫌悪感を抱く事しかできなかった。

車内がビチャビチャになっていること。
自分の傘にも液体がついたこと。
そして、何食わぬ顔でその男性は次の駅で降りて行ったこと。

一方、嫌悪感を抱くのみで、どうしたらいいか、何をすべきか分からず、完全に頭がフリーズしていた。


そこへ、隣の車両から1人の女性が現れた。
そして、手に持った紙で、溢れたカフェオレを丁寧に拭き始めた。
結婚式の後だろうか。
ただ1人、ドレスを着たその女性は、四方に広がったカフェオレを1カ所に集めていた。

自分は自分が情けなかった。

絶対この車内は異常な状態にあるはずなのに、何もできなかったから。

自分が呆然としている間に、その女性は隣の車両のトイレでトイレットペーパーを入手して、既に行動していた事に気づいたから。


その女性は、「人が多かったらみんなビチャビチャでしたね」と、微笑んでいた。

そして、拭き終わった後は、何事もなかったかのようにイヤホンを耳につけ、スマホを見ていた。


自分に足りない部分だな、と思う。
バドミントン後に貧血で友人が倒れたとき。
旅行先で、つまずいたおじさんの額から血が流れていたとき。

いつも、先に行動に移した周りの人に乗っかって動くだけだ。
何をすべきか頭で考えていても、行動に移せず、いつも時間だけが過ぎていく。

周りのことを考えて動く人になろう。
他人に頼らず動く人になろう。
予習と復習ができる勉強とは違い、全く同じ状況は2度と起こらないからこそ、とっさの判断をしなくては。

次こそは、のためにこの気持ちをnoteに残した。

車内にはまだ甘い香りが漂っている。

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