心動いた瞬間のメモ:コピー研究会Week6
空のコーヒーカップが残される
神保町のある喫茶店に入ったときのこと。
カレーを食べ終わり、皿が下げられた。
コーヒーを飲み終わり、カップが下げられない。
チーズケーキを食べ終わり、皿が下げられた。
皿「だけ」が下げられた。空のカップは残された。
「お皿だけお下げしますね」
そこまで言われてようやく気づいた。チーズケーキが来たときに、すでにカップは空いていたのに、テーブルにカップが残されたのは意図的なのだと。
「ゆっくりしていってくださいね」と。
カフェでコーヒーカップを下げられ、水のグラスだけが残されるとき、「帰れ」という無言の圧力がきっとかすかにある。飲食店は、そうして回転率を上げるビジネスなのだから。でもきっとこのお店の誰かが、好きなお店でその瞬間を悲しく思って、自分のお店ではその「落ち着かなさ」を排除したかったのだろう。
ときには列ができるくらい繁盛しているお店のようだけど、一人ひとりを歓迎してくれているような気がした。
もちろん本当は、2杯めを注文することをおすすめされてるのだろうけれど。
壁一面の本棚も、ロースターも、落ち着いた音楽も、揃いの器も、どこにも取っ手のない本棚のトイレへの隠し扉も、ぜんぶ素敵だったけど。「カップを下げられない」ことで、ひっそりとファンになった瞬間だった。
今日は短いですが、ここまで。
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