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議会の議事録が見えるサービスと、そこに込めた思いについて

 ほづみゆうきです。最近、議会の議事録を分かりやすく見えるようにするというサービスを作って公開してみました。今回は、そのサービスの概要と、なぜこういったものを作ったのかという思いについて書いてみます。

どんなサービス?

 まず、どんなサービスなの、という点について。単純に言うと議会の議事録を分かりやすく見られるサービス。あんまりややこしいことはできなくて、機能は3つ。

  • 検索キーワードでの議事録の該当部分の表示

  • 検索キーワードについて発言している議員のランキング表示

  • 検索キーワードでの議事録のテキスト解析結果の表示

 リリースにあたって、こんな動画も作ってみました。

① 議事録の該当部分の表示

 まず、機能の1つは検索キーワードで議事録を検索して、合致する部分を表示させること。キーワードを入れると、議事録の該当部分をこんな感じで表示します。

 議会のやり取りというのは、基本的に議員が質問して、区長や区役所内の担当部局が回答する、というやり取りになってます。

 したがって、議事録の中身も基本的にそのような構成になっています。以下のように、「質問」があって、その下に「回答」があります。判断する場所は3列目の「内容分類」。

 上記の例だと質問しているのは「高橋(ま)委員」で、回答しているのは「阿部子ども家庭支援センター長」。質問者についてはこんな感じで議事録上では「XXXX委員」と書いてあって誰か分からない場合もあるので、その補足として一番右の列に「人分類」として議員の名称があります。このやり取りは「高橋まきこ」議員によるもの。 

 基本的な見方はこの通りで、もうちょっと細かく言うと、各項目の見方はざっと以下のようになってます。

年月日
 
発言のあった会議の行われた年月日
会議名
 
発言のあった会議の名前
内容分類
 
「質問」か「回答」か
質問者
 
質問している議員の名前
回答者
 回答している人(区長とか担当部局の方)の名前
発言内容
 発言している内容
人分類
 やり取りしている議員の正式名称

② 発言文字数ランキングの表示

 次に、発言文字数のランキング。キーワード検索で出てきた議事録の該当部分の文字列を議員ごとに集計してランキング化したもの。用途として考えているのは、検索したキーワードについてどの議員が熱心に取り組んでいるのかを測るひとつの指標として。

 たとえば「学童」というキーワードで検索すると、結果は以下のように表示されました。学童に関して一番多くやり取りをしているのは「高橋まきこ」議員、次に「田中耕太郎」議員、「かみや俊宏」議員であることが直感的に理解できます。

 もちろん、カウントしているのは文字数だけで、その文字数の多いことがそのキーワードに関する行政の改善などについて何かしらの功績を挙げていることの証明になるわけではありません。好き勝手にそのテーマについて自説をだらだら述べている、という可能性だってあるので詳細については実際の発言内容を確認して判断することをおすすめいたします。

 ちなみに、その判断の助けるものとして「質問」と「回答」で色分けしています。「質問」は議員からの問いかけで、「回答」は担当部局からのその返答。議会でのやり取りは区長らから提出された議案や行政一般について追求する場で、これによって行政の考え方を明らかにする、さらにはその改善を求めていく機会という視点に立てば、文字数全体というよりは「いかに行政からの回答を引き出したのか」という意味で「回答」の方が重要ではないかと個人的には思います。

③ テキスト解析結果の表示

 最後に、そのキーワードでのテキスト解析の表示。検索したキーワードが含まれる発言内容の文字列をテキスト解析して、ざっくり1枚の画像にしています。いわゆる、ワードクラウドというもの。出現頻度の高い文字が大きく表示されます。以下は、「学童」で検索したときの結果。

 用途としては、そのキーワードに関してどのような議論が行われているのかについておおまかに俯瞰すること。「学童」で言うと、類似の制度である「プレディ」、近年の利用希望者増によって極めて厳しい「定員」、それによる「待機」、その代替策としての「民間学童」などがキーワードとして現れています。これらのキーワードでまた検索すると、より詳しく議会でのやり取りを理解できるようになります。

 ざっくりとした使い方については以上のとおりです。まだ気になる部分はあるので、少しずつ修正ができていけたらと思っています。

なぜ作ったの?

現状認識と課題

 これまで、作ってみたサービスの機能について説明してきました。サービスはサービスであって、それぞれの人が思うままに使えば良いのですが、作った側としては色々と思うところもありまして、サービスに秘めた思いについてウザいと思われるかもですが書いてみることにします。

 このサービスを作ってみた意図、これによってわずかばかりでも実現したいとわたしが考えているのは「フツーの人が行政に関心を持つ」ということです。こう言うからには、一部の人しか行政には関心を持っていないという現状認識を持っています。投票率は決して高くはないですし、よほど自分に関係のあるテーマや、やらなければならない手続きがなければ区役所のwebサイトや区のお知らせを見ることすらない人の方が大多数でしょう。

 この無関心によってもたらされるのは「一部の関心を持つ人たちによる恣意的な行政」だと考えています。例えば、最近議論に登ったのが「年金生活者への一律5000円の臨時給付金」。高齢者世帯への選挙前のバラマキとしか言えないシロモノです。さすがにこの件は世間の反発が強く取り下げられましたが、世間が盛り上がらなければしれっと通っていた可能性は十分にありました。知らぬ間にこのような特定の層への利益誘導的な政策がひっきりなしに挙がってきてしまうというのが悲しいことに現状です。
 中央区で言うと、たとえば敬老イベント。敬老の日に歌舞伎座や明治座を貸し切って数千人を招待するというイベントを毎年実施していました(最近はコロナ影響で見送りのようです)。2017年に調べた結果だと、関連の予算額は以下のとおり。23区で見てもここまで派手にお金を使った敬老事業を行っているのは中央区だけでした。

<中央区の敬老関係の予算 2017年度予算>
・敬老大会 → 6,667万円
・敬老買い物券 → 4,685万7千円
・敬老入浴事業 → 1億462万8千円

中央区の敬老事業の充実ぶりを東京23区の他の区と比較してみる。

 トータルの予算が決まっている以上、何を取って何を捨てるかは優先順位の中で決められてしまいます。これによってないがしろにされるのは「フツーの人の、こうあってほしいという思い」です。たとえば、相対的貧困は他国と比較して高い水準にあるにもかかわらず、抜本的な改善策が取られる気配はありません。特に、シングルマザーの貧困率は50%近いという状況であるにもかかわらず。少子化がさんざん叫ばれている中で、子育て関係予算は増えないどころか新たに所得制限を設けられたりするという有様。

 中央区で言うと、子育て関係予算が十分でないという印象が強いです。やっとやっと保育園の待機児童の問題は収まりつつありますが、ここ最近まで23区はおろか、全国でも中央区は有数の待機児童の多い自治体でした。最近自分自身の問題として直面しているのは学童保育の待機児童。保育園が増えれば将来的な学童ニーズが高くなることはどう考えても自明なのですがまともに準備されているとは到底思えず、区の計画では2023年まで増える見込みはゼロです。

現状の救済モデル

 このような場合における1つのアプローチは、政治家という立場が十分に反映されていないその声なき声を拾い上げて行政に訴えていくというモデル。これは、いわゆる「市民派」とされているような政治家の方々がこれまで行われていたやり方。

市民派政治家モデル

 もしくは政治家ではない第三者が声を集めて、既存の政治家に対してその声を届けていくというモデル。これは世の中が複雑化する中で政治家が必ずしも現状の課題を把握できなくなっていることから、志のある者がその代弁をして政治家に伝えていくという形式で、わたしの勤め先でもあるNPOフローレンスの駒崎代表の「政策起業家 ――「普通のあなた」が社会のルールを変える方法」という著書に詳しく概念や実績について書かれています。

政策起業家モデル

ハードルを下げることで期待する効果

 これらのアプローチはもちろん大事ではあるかと思うのですが、一方でフツーの人たちの行政への関わりを促していくということもまた重要ではないかというのがわたしの考えているところです。行政に関する情報へのアクセスに対する障壁を下げることによって、多少なりとも関心を持つ層を増やしていくことができるのではないかということです。

 たとえば、双子や三つ子などの多胎児家庭は通常よりも子育ての負荷が高いことがやっと最近認知されてきて、都道府県や自治体でのサポート施策が少しずつ生まれてきているところです。ただ、その程度は自治体によって様々。「もっとこうだったら良いのに!」という思いがあったときに、現状でどのような検討が行われているのか、要望を出すにしても誰に伝えたら良いのかというところを調べるのは結構大変です。自治体のwebサイトを眺めたり、各議員のSNSを並べてみてみたりなどなど。

 一方、このサービスで「多胎児」と入力すればどういった議論が議会で行われているかという点はすぐに分かります。また、そのテーマについてどの議員が積極的に質問をしているのかという点も一目瞭然です。こちらは「多胎児」で検索してみたときの文字数ランキング。「高橋まきこ」さんが圧倒的。

 誰が熱心に取り組んでいるかが分かれば、SNSでつながってみたり、直接会話してみたりということで意見を伝える足がかりになります。また、現状での検討状況などを把握できれば、誰かに伝えなくても現状に対してのツッコミをSNS等でつぶやくことで政治家や政策起業家がその声を拾ってくれることもあり得ます。こういった声がもっと多く出てくるようになれば、住民の色んな困りごとや改善要望をより多く政治家なり政策起業家なりが吸い上げ、より多く自治体に届けられるようになります。

 こんなことが果たしてどこまで実現できるのかという点についてはまだまだ未知数ではありますが、こういうサービスの可能性については引き続き試してみたいと思ってます。さらに言うと、こういう発信を行っていくことがこれからの世代の政治家の役割としてもアリなんじゃないかも考えたりしていているところでして、この辺りについてはまた今度書いてみます。

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