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#3お題『ドラえもんのような』

※4000文字の指定で新規のお話を作るのが難しかったので、子供向けのアニメ(続き物)の日常回という構成になっています。ご了承ください。

【登場人物】
 魔法使いププル・・・人間界で修行している見習い魔法使い。マカロンが好き。ブン太の家に居候している。
 ブン太・・・ププルを一人前の魔法使いにするように頼まれたが、現状、ププルを便利屋みたいに扱っている。
 ハナ夫・・・お金持ちの家の子ども。ブン太の同級生兼ライバル。

〇道中
ブン太「ぐふふ……みんなに自慢しちゃお」
  ブン太(11歳)が、ラジコンカーを抱え、走っている。

〇公園
  ブン太の同級生のハナ夫(11歳)の周りを、女の子、男の子1・2が囲んでいる。
  その中心で、AIロボットがブレイクダンスを踊っている。
  子どもたちが歓声を上げる。
ハナ夫「最新のAIロボットなんだ。すごいでしょ」
  ハナ夫、指で鼻をこする。
  と、同時に公園の入口から、ブン太の叫び声。
ブン太「おーい! みんな!」
  ブン太、ハナ夫と子どもたちに駆け寄る。
ハナ夫「なんだよ、ブン太。今良いところなのに」
ブン太「ねぇ見てよ、ボクのラジコンカー。カッコいいでしょ」
  ブン太、ラジコンカーを見せる。
  子どもたちは気にも留めず、AIロボットを見ている。
ブン太「あ、あれ?」
  ブン太、首を傾げる。
ハナ夫「そんなの別に羨ましくないよ」
ブン太「でもこれ、最新のだよ?」
ハナ夫「ふん。ロボットの方が何倍も凄いさ」
  ハナ夫、AIロボットを指さす。
AIロボット、重い木箱を運び、積み上げている。
  拍手をしている子どもたち。
  ブン太、口を尖らし、
ブン太「ふーんだ、こっちだって凄いんだから!」
  と、リモコンで操作し、AIロボットの周りでラジコンカーを走らせる。
  ハナ夫、眉を吊り上げ、足を踏み鳴らす。
ハナ夫「それ、どかしていいよ」
  AIロボット、ラジコンカーを掴み、持ち上げる。
  向きを変え、地面に置く。
  ラジコンカーが、壁へ激突する。
ブン太「うわぁ!」
  ブン太、壊れたラジコンカーを手に取る。
ハナ夫「ふん、ブン太が悪いんだぞ」
  ハナ夫、腕を後ろに組み、口笛を吹く。
ブン太「そ、そんなぁ~」

〇ブン太の家・ブン太の部屋
ブン太「悔しいよぉ~!」
  ブン太が大泣きしている。
  居候のププル(見習い魔法使い)が、
ププル「いつものことじゃないか」
  と、マカロンを食べる。
ブン太「ねぇププル、魔法でロボット出してよ」
ププル「やーだよっ。そんな魔法知らないもん。ぼく、見習いだし」
  と、皿にあるマカロンを手に取り、頬張る。
ブン太「えーん、やだやだ! ボクもロボット欲しいよぉ!」
ププル「パパに買ってもらったら?」
ブン太「絶対ダメって言う」
ププル「じゃあ諦めなよ」
ブン太「やだよぅ!何か出してよぉ」
  ブン太、ププルの肩を揺らす。
ププル「うぅ目が回るぅ……。わ、分かったから! 揺らさないで!」
  ププル、魔法書を取り出し、ペラペラとめくる。
ププル「ロボットは出せないけど、これならどうかな」
  ププル、机のプラモデルを指さし、短い詠唱を唱える。
ププル「えいっ」
  キラキラした光がプラモデルを覆う。
  プラモデルがガタガタと動き、歩き出す。
ブン太「す、すげー!」
ププル「どう? これでいい?」
ブン太「うん! すごいよププル!」
ププル「まぁね」
  ププル、胸を張る。
ブン太「よーし、これで見返せるぞ!」
  ブン太、プラモデルを握りしめ、部屋を出る。

〇公園
AIロボット、ジャグリングをしている。
男の子1「すごいね!」
ハナ夫「ふふっ、凄いだろボクんち。ちなみにこれ特注の非売品だから、どこにも売ってないよ」
男の子1「ふーん、そうなんだ」
  ハナ夫、ニヤリと笑う。
ブン太「おーい! みんなー!」
  と、公園の入り口から、ブン太の声。
  ブン太がハナ夫に駆け寄る。
ハナ夫「なんだよ、ブン太」
  ハナ夫、追い払う仕草をする。
ブン太「見てよ! ボクのプラモ! 動くんだよ!」
  プラモデルがブン太の手から離れ、ジャンプし、地面に着地する。
ハナ夫「わっ!」
  ハナ夫の声に驚き、周囲の視線がプラモデルに集中する。
  プラモデル、正拳突きの動き。
男の子1「すげー! かっけー!」
ブン太「でしょでしょ」
  ブン太、ニヤリと笑う。
ハナ夫「んぐぐぐ……」
  ハナ夫が肩を震わせる。
男の子2「これ、どういう仕組み?」
  子どもたちの視線がブン太に集まる。
  ブン太、頬を掻き、
ブン太「まぁ、ちょっとね」
  と、視線を逸らす。
ハナ夫「絶対、何か裏があるはず」
ブン太を睨むハナ夫。
  その下で、正拳突きを繰り返すプラモデル。
ブン太「まだ動くんだ……効果長いなぁ」
ハナ夫「効果……?」
ブン太「あっ、やばっ……」
  ブン太、口元を抑える。
ハナ夫「あっ、分かったぞ!ププルの仕業だな!」
ブン太「ちっ、バレたか」
ハナ夫「この卑怯者め!」
ブン太「良いじゃないか、別に」
  ブン太とハナ夫、睨み合う。
  女の子、プラモデルを見て、
女の子「良いなぁ、私のウサギさんのぬいぐるみも動いて欲しいなぁ」
  と、呟く。
  女の子に顔を向けるブン太。
ブン太「出来るよ」
女の子「ほんと?」
  目をキラキラさせる女の子。
ブン太「うん、ホントだよ。ぬいぐるみ持って、明日また公園においでよ」
女の子「うん、分かった!」
  声を弾ませる女の子。
ブン太「でも大人にはナイショだよ。約束守れるかい?」
女の子「はーい!」
ブン太「よし、じゃあ決まり!」
  男の子1が手を挙げ、ブン太を見る。
男の子1「ねぇねぇ、俺の戦隊フィギュアは?」
ブン太「うん、OK」
  男の子2がブン太の腕を掴む。
男の子2「壊れたオモチャでも動くの?」
ブン太「大丈夫だよ」
男の子2「やったー!」
  女の子、男の子1・2が走り回る。
ハナ夫「ボクも持ってきていいかい?」
ブン太「別にいいけど……」
ハナ夫「ふふ……とっておきのがあるんだ。楽しみにしててよ」
ブン太「わ、分かった……」

〇ブン太の家・ブン太の部屋(夜)
  机上に置かれたプラモデル。
ブン太「頼む!この通り!」
   手を合わせ、頭を下げるブン太。
   ププル、首を振り、
ププル「こ、困るよ、そんな……」
   と、呟く。
ブン太「立派な魔法使いになりたくないの?」
ププル「そりゃあ、なりたいけど……」
ブン太「なら、やろうよ」
ププル「うーん、気が進まないなぁ……」
ブン太「このままだと、落第かもよ」
ププル「それは嫌だ!」
ブン太「じゃあ、やるしかないね」
ププル「うぅ……マカロン追加だからね」
ブン太「はいはい。それじゃあ、お願いね。おやすみ」
  と、数秒後、布団に入り、寝息を立てるブン太。
ププル「おやすみ」

〇公園
  10人ほどの子どもたちがいる。
  ププルとブン太、顔を見合わせ、
ブン太「増えたな……」
ププル「どうしよ、魔力足りないかも……」
  と、呟く。
  女の子、ブン太に駆け寄り、ウサギのぬいぐるみを差し出す。
女の子「はい、これ」
  女の子が笑う。
  頬を真っ赤に染めるププル。
ブン太「えー…では、これから手品をお見せします」
  ブン太、ププルに目配せをする。
  ププル、無言で頷き、
ププル「えいっ」
  と、指先をウサギのぬいぐるみに向け、魔法をかける。
  ウサギのぬいぐるみが、駆け回る。
女の子「わー! すごい!」
  拍手をする女の子。
  子どもたちがププルを囲み、群がる。
男の子1「俺のもやって!」
男の子2「ボクのも!」
  子どもたちに押されるププルとブン太。
  ププルが順番にオモチャに魔法をかける。
  子どもたちの歓声が飛び交う。
  と、そこにハナ夫の声、
ハナ夫「おーい、ボクも持ってきたぞ!」
  と、叫び、周囲の視線を集める。
  台車に載せたクマの剥製を見せる。
ブン太「うわ……」  
ハナ夫「おじい様から借りてきたやつさ」    
  ハナ夫、ププルの前に立ち、
ハナ夫「さぁ、動かしてみてよ、チビの魔法使いさん」
  と、ププルを見て笑う。
  ププル、地団駄を踏み、
ププル「チビって言うな!」
  と、指先を振り回し、クマの剥製に魔法をかける。
  クマの剥製が鈍い動きで立ち上がる。
  ハナ夫ニヤリと笑い、
ハナ夫「ふーん、やるじゃん」
  クマの剥製に寄りかかる。
クマの剥製が唸り、威嚇する。
  ハナ夫、クマの剥製から離れ、
ハナ夫「ひえっっ!」
  と、尻もちをつく。
女の子「きゃー!」
男の子1「怖いよぉ!」
男の子2「みんな逃げろ!」
  ハナ夫、女の子、男の子1・2と他の子どもたちが公園外へと逃げる。
  クマの剥製が、遊具に傷をつける。
ブン太「は、早く、アイツ止めてよ!」
ププル「えいっ! 止まれ!」
  ププル、魔法を唱えるが、何も起こらない。
ブン太「どうなってんだよ!」
ププル「しまった、魔力切れだ!」
ブン太「そ、そんなぁ~」
ププル「もうダメかも……」
ブン太「他に方法は無いの?」
ププル「回復すれば、また使えるはず……」
ブン太「分かった!その間、ボクが囮になって気を引く!」
  ブン太、クマの剥製に石を投げる。
  クマの剥製がブン太を見る。
  ブン太、後ずさりをし、
ブン太「来い!」
  と、背を向け、走る。
  クマの剥製、ブン太を追いかける。
ププル「今のうちに……」
  ププル、目を閉じ、両手をギュッと握る。
   クマの剥製、ブン太を追いかける。
ブン太「はぁはぁ……」
  ブン太、息を切らして走る。
ププル「あ、あと少し……」
  ププルの両手が光り出す。
ブン太「うわっ」
  ブン太が転んで、足を挫く。
  剥製のクマが、ブン太の前に立ちふさがり、両腕を大きく振り上げる。
ブン太「……ッ」
  ブン太、目を強く閉じる。
ププル「間に合え! えいっ!」
  ププルが詠唱を唱える。
キラキラした光が、剥製のクマを覆う。
  クマの剥製の動きが止まる。
  と、同時に、他のオモチャの動きも止まる。
  静まる公園。
  ププルとブン太が、へたり込む。
ププル・ブン太「つ、つかれた……」
  
〇ブン太の家・居間
  ブン太とププルが正座している。
  壊れたラジコンカーを持ったブン太の母、
フミ子(38)が眉を吊り上げ、
フミ子「もう!このオモチャ高かったんだから!罰として今月のお小遣いは無しね!」
ブン太「ごめんなさい……」
フミ子「ププルちゃんもマカロン一週間抜きですから! ちゃんと反省しなさい!」
ププル「とほほ……」
  深々と頭を下げるブン太とププル。

〇同・ブン太の部屋
  ブン太の膝に絆創膏を貼るププル。
ブン太「いてっ……」
ププル「まったくもう……付き合わされるボ 
クの身にもなってよね」
ブン太「ご、ごめん……」
 ププル、頬を膨らませ、
ププル「後始末大変だったんだからね」
と、呟く。
  ブン太、壊れたラジコンカーを見る。
ブン太「はぁ……自分で直すか」
ププル「うん、それがいい」
  ププル、接着剤をブン太に渡す。
ププル「はい、これ」
ブン太「やるしかないか……」
ブン太の家の外観。
  犬の遠吠え。
ブン太「げっ、パーツ変に付けちゃった!」
ププル「ぷぷっ、変なの」
ブン太「ええい! もう一回!」
ププル「逆だよ~」
ブン太「うるさい!」
  数秒後、画面が暗転。
                   
                   終

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