『魔性の子』を読んで

8月末から『十二国記』シリーズを読んでいる。子どもの頃アニメは見ていたが、原作本は未読だった。友人にお勧めの本がないか聞き、アニメを見ていたから、登場人物のイメージがある程度ついているため読みやすいだろうと判断した。ただ、壮大な物語なため、まずはアニメを簡単に見返してみようと思い、さくっと全体を見た。アニメ版では泰麒の話が子どもながらに消化不良で、どことなく漂う気味の悪さもありで避けていたが、大人になって見てみると、泰麒の愛らしさに心奪われ、泰麒の物語を読みたくなって、『魔性の子』を手に取った。

①『魔性の子』

これは泰麒があることをきっかけに蓬来(日本)に戻ってしまい、「泰麒」としての記憶を失い「高里要」として過ごす日々について書かれた話。アニメでは『魔性の子』の途中までしか描かれていない。高里要の学校に来る教育実習生の広瀬目線で物語が進んでいく。広瀬はアニメでは出てこないので、この物語そのものが新鮮だった。広瀬の思うことに、かつての私自身が感じたこともないわけではなかったが、単純に「泰麒」がどんな風に過ごしていたのかが気になって読み進めていたので、最後はひとまず泰麒が自分自身を泰麒であることを思い出して元の場所に戻れたことはよかったと思った。アニメの内容を知っていたから、本の所々に出てくる十二国記特有のモノがどんな風に絡んでいるのかを理解しながら読み進められたが、純粋に何も情報がないなかで読んでいたらどう思ったのか、また違った読後感があったのだろうと思う。

小さな泰麒が好きだから、淡々としていて、表情も乏しいように思えるこの作品の泰麒(高里要)は、本質を自分をどこかに喪失してしまったように思えて、少しだけ悲しかった。最後は少しだけ生き生きとしているように思えて、泰麒が自分を取り戻し始めたのかなと思った。

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