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2. 違うチャンネルで発信すること、対話の場をひらくこと

秋田市文化創造館を利用するスケーターが増えはじめ、並行して館の利用者や近隣にお住まいの方から「やめさせないのか」といったご意見をいただくことが増えていった。

最低限のルールを決める

5月の連休中からは、利用者や歩行者の安全管理を強化するために、幾つかのルールや対策を決めてスケーターたちに口コミで共有をはかるようにした。

スケーターに対しては、滑りはじめる前にスタッフに声がけするようお願いをするとともに、「デッキや階段の上の走行や乗り上げは禁止」、「他の利用者の迷惑・危険になる使い方はしない」といったルールを拡散してもらえるよう依頼。また、スタッフも屋外の状況が見える1階のスペースに当番制で常駐するような取組みをはじめた。

スケーターもそれ以外の活動をする人も、通行するだけの人も、そして近隣住民にとっても、どうすることが多様な活動を応援しつつ、安全管理をはかる上で最大公約数の対策となるのか。すぐにはなくならないスケートボードに対する批判的なご意見に向き合いながら、秋田市やスタッフ間と協議を重ねつつ、頭を悩ませる日々がつづいた。

地元紙の協力

メールや電話、実際に来館して届く批判的なご意見や質問に接する中で、「このままでは館(のミッションやスタッフ)を守れないな」という想いが自分の中で強まっていった。批判的なご意見は文化創造館に対してだけではなく市役所にも届いているという。それが積み重なれば、市役所から「止めさせるように」とのお達しが届き、指定管理者としては従わざるをえないときが来るだろう。
このまま自分のSNSを通じた小さな発信や、直接ご意見をいただく方との1対1のコミュニケーションだけでは、その流れを止めることはできない。

自分たちだけで考えても埒があかないこと。自分たちだけで細々と発信するだけではほとんど届かないこと。町内会長からは「それって文化創造館だけで解決できる問題なのか」と指摘をいただいたこともあり、考える場やプロセスを思い切ってひらいていこうと決めた。

地元スケーターによれば、とある公共施設でスケボーをすると3分で警備員が飛んでくるそう

秋田魁新報は、発行部数20万部を超える地元の有力紙である。今年に入って「若者のミカタ」という企画をスタートさせ、秋田県の不寛容さを問う連載をつづけていた。
魁新報なら興味を持ってくれるかもしれない。そして記事になれば、届けたいと思っている層の目に留まる可能性が高い。そんな直感を抱きつつも、マスコミに出ることで事が大きくなり、さらに批判を呼ぶかもしれないという不安がよぎる。それでもやった方がよいだろうとスタッフから賛同を得て、以前名刺を交換しただけながら、秋田の社会課題に鋭く切り込む記事を書きつづけている記者に連絡を入れた。

その後、文化創造館とスケートボードに関し、イベントの告知やレポートを含めて計8本の記事やコラムを掲載いただいた。

※一番最初に出た記事は、ウェブ版のタイトルが最初ちょっとズレた形で出ていったため、創造館のTwitterで改めて館の姿勢を表明した。

記事に対するTwitter上での反応は、もちろん批判もありながらも、「対応に好感が持てる」と好意的な受け止めが多く見られたことは嬉しかった。また、新聞記事を見て、「素晴らしい取組み」とわざわざ事務室まで声をかけにきてくれるご高齢のご婦人もおり、それに救われる思いだった。

対話の場をひらく

一方で、秋田市文化創造館はスケートボードのための施設ではないことは明らかで、今後スケートボードに対してどう向き合うのが良いのか、スケーターやスケートボードに関心をもつ人、できれば批判的な人にも参加いただいて意見を交わす場をひらきたいと考えていた。
文化創造館としてできるのは、最低限のルールを守ることを前提としつつもスケーターが施設を利用するのを排除しないことであって、そこから先の方向性を決めていくのは行政であり、さらには行政に決定を促すために当事者たちがアクションを取ることなんだろうと考えていた。文化創造館が対話の場をひらくのは、あくまでそれに向けたお膳立てである。

加えて、「スケートボードは迷惑行為」とレッテルを貼って排除しようとする風潮があることは、なんだか健全なコミュニティのあり方とは思えず、自分が知らないもの、自分にとって異質なものをどう拒絶・排除しない寛容さをまちに広げていくことができるか、それを考える場や機会をつくりたいという切実な想いもあった。

そこで、6/15に自らがホストとなって、ゆるやかに語り合える場「カタルバー」を開催することにした。集まった人が語り合うテーマは「スケートボードと秋田市文化創造館と秋田のまち」。ものすごい批判的意見をもった人が来るかもしれないし、誰も来ないかもしれないと不安を感じながら、6/15当日を迎えた。

つづきはまた今度。


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