戸田京介レフリー

今日は若の里(現西岩親方)以来の人物列伝。
その名は日本協会公認レフリー戸田京介。
私は学生の頃から10年以上もの間、公私共にお世話になった人物である。
私が悩んでいる時には、1番の相談相手であり、背中を押してくれる存在であった。
そんな彼が、トップレフリーとして100試合以上を積み重ね、いよいよ明日の神戸製鋼VSクボタのゲームでトップリーグラストマッチという節目を迎える。
現役トップレフリー最年長ながら、なお衰えを見せないフィットネス、選手とのユーモア溢れるコミュニケーション。
変幻自在なトークでその場を和ませ、時にはピリッと締める。このバランスが心地よい。時にはお茶目な姿を見せるのもご愛嬌。
ラグビーのエンタテイナーとしての存在感も示しながら、しっかりまとめる。
正に「人間味のあるレフリー」であり、ラグビー愛に溢れた人物であった。
そんな彼のレフリングをTVで観れるのも明日で最後となるのは、自分のことのように寂しい。
数あるエピソードの中で一つだけ。
レフリーの菅平合宿で私のレフリングを見てもらえる機会があり、試合後に2人で菅平名物「馬刺し屋」でビールとトマトスライスを頼んだ。
そこで、戸田さんが「このトマトをロールアウェイコールで動かしてみろ。あなたのプリベントコールは気持ちがこもっていないから動かない。」と。最初は何が言いたいかがわからず、もちろん私のコールでトマトが倒れるはずもない。
しかし、戸田さんがコールするとトマトは少し傾いた。笑(ズルやマジックではない)
その時、ハッと気付かされた。
私は必要でないときも、機械的に同じトーンで声をかけて、選手には全く伝わっていなかったのである。「ブレイクダウンの質の見極め」ができておらず、ただ自分を守るために声を出していただけであった。
このアドバイスは私にとってラグビー独特の「反則を未然に防ぐレフリング」とは何かをを掴むきっかけとなったことを鮮明に覚えている。
引き出しが多く、表現が巧みにあり、時には笑いもいれながら頭をスッキリさせるアドバイス。彼ならではの言い回しであった。
レフリングだけではなく、夜のひとときも一流であった。大阪で試合がある際の前泊には、必ずと言っていいほどノミニケーションが開催され、戸田レフリーを慕い、関西のレフリーや関係者仲間が集まる。楽しく過ごすルーティンの一環として、最初は緊張するメンバーをすぐに和ませて、自分のフィールドに引き込む技術も、試合同様に長けていた。
合わせて色んな人を受け入れる広い心があった。内容は、ラグビーの話はもちろんだが、時にはプライベートな話題と多岐に渡り、熱く語りすぎて、終電を逃すことも多々あった。しかし、あれだけ飲んだのに次の日は生まれ変わったように二日酔いを感じさせないレフリング。これにはいつも驚かされた。
ここでは言えないような数々の伝説を残したシーンが蘇るが、これ以上はやめておこう。
まだまだほんの一部に過ぎないが、戸田レフリーという人物を私なりに表現してみた。
「長過ぎるから簡潔に頼むわ」と怒られそうなので、まだまだ書き足りないが、この辺りでまた明日。


きっと最後に相応しいメッセージを画面を通して、いつもと同じように伝えてくれると思う。
ラグビーファンの皆さまから愛された戸田レフリー。

そんな彼にも熱い視線が届けられますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?