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生まれてこなければよかったなとぼんやり思う 死にたいというのではないし つらくてつらくてしかたがないわけでもない けどべつに 生まれてこなくてもよかったんじゃないかとは思う 上を目指す とか ありのままに生きる とか それぞれの生き方 みたいなのがある でもそれは真逆だったり多様だったりするように見えて 実のところ全部 生まれたからには というような意思が見えて おそろしい
生きたくても生きられない人 というのはどこかにいるのだと思うのだけど それが私の気持ちとどう結びつくのかは よく分からない
自傷をすることももうないと思うけど 今日眠る前にこのボタンを押せば 眠っている間に 知らない間に死ぬよ と言われたら 押そうかな と思う
それで急に思い出したけど 山田悠介の スイッチを押すとき という本がたしかあって 昔誰かが貸してくれて少し読んだ そのときあまり好きになれなくて全部読めなかったから内容もあまり覚えていないのだけど そのスイッチは押した瞬間なんの苦痛もなく死ぬというもので なぜそれを押すのにあそこまでみんなためらって逃げたりよく分からないことをしたりするのだろうと思った 押した瞬間にとんでもない苦痛がしばらく続くという性質でないと みんな押しちゃうだろうと思った でももしかしたら どんなに良い条件をつけられたって死ぬのは嫌だ と思うのが普通なのかもしれない

次の日になって今 23時58分 ここにボタンを持っただれかがあらわれて 0時までに押せば 眠ってる間に死ねるよ と言われたら と想像した 悪趣味なひとりあそび たわむれ にしては 一分数十秒のあいだ とてつもない動悸とともに考えた えっと ちょっと待ってください と時計を見ながら何度か言い 0時になる瞬間に お断りします と答えた
やっぱり死ぬのはちょっと違うと思った

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