医療AI推進機構(MAPI)設立発表_質問解答集

医療AI推進機構(MAPI)の設立を発表しました。

ありがたいことに質問やコメントも多くいただいており、その回答を速報ベースでこちらで回答し、随時更新します。本当は様々な意思決定に白熱した議論や葛藤、背景などがあり、簡潔に回答できない部分も多いのですが、それは追々記事にできればと思います。

1. 次世代医療基盤法の申請時期は?

次世代医療基盤法の改訂後の施行が5月までになされます。その新法に適用した申請を行うため、早くても6月ごろかと思います。適宜、内閣府とは議論し、準備を進めております。実績では、申請から認定までは1年以上かかっております。

2.なぜ株式会社なのか?

団体の性質から、一般社団法人で準備していたのですが、現在の経済や会計の仕組み(例えば助成金/融資/資金調達/会計処理等)などの環境が株式会社に最適化されていたためです。また、内閣府の認定審査項目の一つに「経理的基礎」があり、審査結果によっては大きな資金調達や法人の形態変更をせざるを得ない場合が想定されます。これらのチャレンジを残すよりも、ビジョンの実現可能性を少しでも高めるために最終的に株式会社にしました。現在の資本主義経済のデメリットと言われている「資本の再分配されない」点は、医療データの売り上げの一部は医療機関に還元しますし、そのほか希少疾患等のAI開発活動への寄付や支援活動等で補いますので、いわゆる一社のような性質も持ち合わせるかと思います。ポスト資本主義への挑戦もこの団体のテーマです。

3.なぜ次世代医療基盤法の認定事業者なのか?(悲観的)

少し本業界に明るい方であれば、次世代医療基盤法を悲観的な意見をお持ちの方の方が多いかと思います。私も現在の次世代医療基盤法を憂いている一人です。内閣府主導で2018年に「次世代医療基盤法」が施行されてから、医療データの利活用促進が図られることが期待されましたが、残念ながら医療AIの開発にほとんど利用されておりません。私はここ数年、次世代医療基盤法とは関係なく、厚生労働科学研究費補助金「保健医療分野におけるデジタルデータのAI 研究開発等への利活用に係る倫理的・法的・社会的課題の抽出及び対応策の提言のための研究」で研究員として活動し、医療機関に安心してAIの開発企業にデータ提供できるようにデータ活用のガイドライン整備にして取り組んでいます。しかし、1年ほど前に次世代医療基盤法(内閣府)の方面から「画像は"仮名加工医療情報"という新しい整理で進めていく」という方向性が示され、困惑したのを覚えています。次世代医療基盤法では、特に画像の利活用についてもガイドラインがあるものの、匿名化の定義が十分に整理されないまま、未だ取り扱いがありません。そのため、「画像は識別性が高いから仮名加工医療情報で」という安易な方向性で整理されようとしています。しかし、特に次世代医療基盤法で整理されようとしている仮名加工医療情報は第三者提供できず、共同利用という枠組みを取り、グローバルな開発がしづらい設計になっています。また、仮名加工医療情報を利用する事業者も認定が必要になり、ますます参入障壁が上がっております。その間にも、グローバルでデータ駆動型の研究開発が進み競争が激化しております。医療AIで最も勢いがある韓国が、国を挙げて匿名画像データベースを広く開放して産業を活性化させて結果を出している一方で、日本にはその整理が十分にできませんでした。
そうなると、次世代医療基盤法を見限る選択肢もあります。実際、LPIXELという創業した医療AIの開発企業では次世代医療基盤法以外の方法でデータ収集を進めてきました。しかし、大・中病院は「次世代医療基盤法があるのだから、それで対応したい。」という意見を幾度となくいただき、その認定事業者に画像の加工をお願いしても、画像は取り扱いがないと言われ頓挫してきました。なぜ次世代医療基盤法に頼り切る思考停止状態になるのかを考えると、次世代医療基盤法の方針は素晴らしく、それだけ見ると絶対に習うべきように思えるからです。医療機関側は、画像を取り出す作業は膨大な作業を要し、かつデータ漏洩のリスクから保守的になるため、内閣府の認定があり、大義もあり、最もしっかりしていそうな次世代医療基盤法に頼りたくなるのです。一種の権威バイアスともいえ、それを上回るコミュニケーションコストは双方にとって膨大であり、時に超えることが困難です。
次世代医療基盤法は、必要な時に、必要な議論がなされ、非常に素晴らしいビジョンを持った法律だと思います。最初に発想・推進された方に、その時の思いをお聞きし、いつか敬意を表したいと思っております(私だよ…という方がいればご挨拶させていただきたく、こっそりご連絡いただけますと幸いです)。一方で、正直申し上げると、次世代医療基盤法の認定を取るのは大変だし、コストもかかるし、楽しくないし、やる必要がなければやりたくありません。しかし、この法律に引っ張られて医療AIの推進しづらく環境が生まれ、それを憂いたり批判することに時間をかけるなら、前向きに主体となって変化の前線に立つべきで、その方が早いと思いました。次世代医療基盤法なんて・・・というご意見をお持ちの方に私は対抗するつもりは微塵もありません。むしろ使いづらい点や問題点をご共有いただき、我々も皆様の思いをお借りして動いてまいりたいと思いますのでお気軽にご連絡いただけますと幸いです。

背景にある思いについては以前Noteでまとめておりますので、よろしければご覧ください。

4. 他のデータ事業者との棲み分けは?

現在の次世代医療基盤法の認定事業者は3社ありますが、画像の取扱事業者は確認されません。また、次世代医療基盤法に頼らず患者同意を取得したり、匿名加工等の処理をして流通させるために準備もしています。どのようにデータ提供することを決めるのは我々ではなく、患者であり、医療機関です。様々なニーズに対しても、データを取得できる手段を持ち合わせ、我々が寄り添い対応することで、あらゆるケースに対応します。

5. 画像以外は?

画像以外も取り扱います。しかし、医療AIの中でも画像は最も盛んな領域であり、画像の取り扱いの難しさを当事者として理解している点を活かし、画像・レポートを中心に取り扱う予定です。医療データと一言で言っても千差万別なので、我々は我々の特徴を活かし、オープンイノベーションを戦略として掲げ、他の認定事業者やデータ事業者と連携してデータ提供しあうことも想定しております。

6. スタートアップなのか?

スタートアップが急成長をする組織であり、世界を変革するような事業を行おうとしている事業体を示すなら、そのような性質もあると思います。まずは最低限のデータセンター、システム開発に必要な資金調達も行います。しかし、社会の公器的な存在となることが第一優先のため、それが崩れるような資金調達や成長は追いません。

7. 協業/協力できるかも...!

我々はオープンイノベーションのHubとなることが、このMission/Visionの達成には重要だと思いますので、協業のご相談は大歓迎です!我々が医療AI自体を開発することはありませんので、その点についてはご安心ください。それ以外に医療AIが溢れるために必要なことは何でも取り組みます。

7. 何か手伝えることがあれば!Joinしたい!

大歓迎です!他に準備していることもあるので、お気軽にお問合せください!

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