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第104回 これからのYouTuberさん(※一部を除く)が目指さなきゃいけないのは、「フォロワー数(再生回数)の最大化」ではなくて「利益の最大化」

UUUMの赤字転落に何を見たか?
商品の開発&販売が上手くいくYouTuber、上手くいかないYouTuber

今日は『UUUMの赤字転落に何を見たか?』というテーマでお話ししたいと思います。

広告収入からの脱却


最近、国内最大のYouTuber事務所『UUUM』さんが赤字転落したことが話題になりました。

会社のお金に関しては、「今は回収期じゃなくて、先行投資期なので…」みたいなことがあるので、「今季の最終損益が赤字に沈んだ」といっても、本当のところ(本当の会社の好不調)は外野の人間には分かりませんが、とはいえ『好調』というワケではなさそうです。

これに対して、「広告収入に体重を乗せすぎると、そりゃ、ちょっと厳しい」という意見もあると思うのですが、もちろんUUUMさんもそんなことぐらい千年前から分かっていて、だからこそ近年は、新たな収益柱としてP2Cブランド(クリエイターがクリエイターのファンに向けて販売するブランド)やグッズ販売に力を入れておられます。

ただ、それらの打ち手が上手くいっているかというと、外野から見ている限りでは「一部(の配信者)は上手くいっている」といったところで、会社全体として「広告収入(依存)モデルからの脱却に成功した!」とまでは言えない感じがします。

今回、UUUMさんが図らずも証明したのは「YouTuber(インフルエンサー)が商品を開発&販売しても、売れ続けるわけではない」ということ。

では、商品の開発&販売が上手くいくYouTuberと、上手くいかないYouTuberを分け隔てるものは一体何なのか?

ここの答えを見つけるのが結構難しそうです。
#仮説検証をひたすら繰り返すしかない

一つ確かなことは、「これからのYouTuberは自分の商品を持たないとマズイよね(自分のYouTubeチャンネルが商品のショーケースになってないとマズイよね)」で、YouTuberさん(※一部を除く)はこの問題から目を背けることはできません。

性格を変えるのは難しい


ににち自身のYouTubeチャンネルを、P2Cブランド(自分の商品)のショーケースにする時の問題は2つあるのかなぁと思っています。

1つ目は、『在庫リスク』の問題。

「商品を販売する」となると、多くの場合は「在庫リスク」を抱えることになります。

お店をやっていると「在庫を抱えすぎて(作りすぎちゃって)、倒産」は全然ある話で、P2Cブランドやグッズ販売に推し進めるには、この問題をクリアしなきゃいけない。

概要欄でアートパネルを販売しているバンドザウルスの場合は「デジタルデータ」がベースにあって、「注文が入れば、パネル化して、お届けします」という“受注生産型”なので、ここのリスクを潰せています。

ただ、バンドザウルスは、そもそものスタートが「デジタル」なので、「デジタルデータをパネル化して販売」というモデルがハマリましたが(=キャラクターとビジネスモデルが似合っていますが)、オジサンYouTuberが「僕の写真をパネルにして販売します」と言ったところで、それはチョット厳しい。
#そもそもオジサンの写真パネルは部屋に飾りたくない

「在庫リスクを潰す」というのは、なかなか難しい問題です。

自身のYouTubeチャンネルを、P2Cブランド(自分の商品)のショーケースにする時の問題の2つ目は、「広告収入で食っていくことを決めてスタートしたキャラクターが、商品の販売で食っていくキャラクターに変更するのは、メチャクチャ難しい」という問題。

テレビタレントさんに「クラウドファンディングをやればイイじゃないですか?」と提案しても、十中八九「…いや、お客さんから直接お金をいただくのは…」と返ってきます。

「え? ライブでチケットを売って、そのお金をいただくのはイイんですか?」と聞けば、「そっちはイイんだけど、クラウドファンディングでお金をいただくのは、なんか違う気がする…」といった調子。

これは僕が昔から言っていることですが、彼らのマインドとして…

『チケットぴあ』でのチケット販売→○
ECサイトでのチケット販売→○
クラウドファンディングでのチケット販売→×


というのがあったりします。
「『チケットぴあ』でのチケット販売は、要するに『ライブをやりたいので支援してください。支援してくださった方には返礼品として【チケット】をお贈りします』という“クラウドファンディング”ですよ?」と説明しても、彼らにはそれが理解できない。

理屈で反論してくるわけじゃなく、「なんか、チョット違う気がする…」の一点張りです。

長年染み付いたマインドを変えるのは、どうやらものすごーく難しいみたいで…というのも、これをやるには、自分のマインドも変えなきゃいけないんだけれど、フォロワーのマインドも変えなきゃいけない。

もっとも声の大きいフォロワー(コアファン)が、「クラウドファンディングをするのは、なんか違う気がする!」「お金儲けに走ったね!」と言えば、その声がプレイヤーに強く届いてしまうんです。

その結果、「なんか違う気がする」という、誰得ブレーキがかかる。

たくさんのフォロワーを集めて、広告収入で生きている人気YouTuberさんが、「メンバーシップ(有料配信)」になかなか踏み出せない理由はそれで、皆、揃いも揃って「う〜ん、有料配信はチョット…」と二の足を踏みます。

2〜3年前に、『資生堂』が高価格帯商品(化粧品)に注力する為に、「TSUBAKI」や「uno」といった日用品部門を、英国の投資ファンドに1,600億円で売却・分離したことが少しん話題になったのですが、性格(ブランド)を変えるには、それぐらいの大ナタを振るう必要があったのでしょう。

自分や自分のコミュニティーのキャラクター(性格)を変えるのは、僕らが想像している以上に難しくて、今のところの結論としては、「スタート地点から、自身のYouTubeチャンネルを、P2Cブランド(自分の商品)のショーケースにしておく」といったところになるんじゃないかなぁと思います。

そうすれば、フォロワーさんも「このチャンネルは、そういうチャンネルなのね」と理解してくれて、理解してくれた人だけがフォローしてくださるので、そこでグッズ販売をしても、余計な摩擦はおこらない。

というわけで、バンドザウルスのYouTubeチャンネルは最初から(広告をカットして)『アートパネルを販売するギャラリー』として走らせてみました。

メチャクチャ生々しい話をすると、これからのYouTuberさん(※一部を除く)が目指さなきゃいけないのは、「フォロワー数(再生回数)の最大化」ではなくて、「利益の最大化」で、「その為には何をすればいいのか?」を考えて考えて考え抜く必要がありそうです。

バンドザウルスに関していえば、どうやら「動画を量産すること」では無さそうで、これは冗談でも何でもなく、この夏、ティラ様で「1日限定の『かき氷屋さん』」でもやって、直にお客さんと触れ合って、コアファンを作ることが重要になってきそう。
#分からんけど


「5枚のアートパネルを売るために動画を作る」


このモデルがどこに着地するのは分かりませんが、良し悪しはともなく、“知らない場所”には行けそうなので、いろいろと実験を繰り返してみます。

現場からは以上です。

西野亮廣

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