はじまりとは

村上春樹が完璧な文章は存在しないというようなことを小説に書いていた。その言葉に勇気をもらって日々のことを日記のように少しずつ書いていこうと思う。

先日、スティーブ・アルビニが亡くなった。
私は自宅録音をしているのだが、それが高じてバンドの録音をすることもある。
どうしたらスティーブ・アルビニが録音した生々しくかっこいい音になるのだろうと動画を漁って研究していたのだが、彼はドラムセットの録音にたくさんのマイクを立てる。よくわからないところにも立てる。床にもマイクを設置する。
私もよくマネをしてドラムセットにマイキングしていたのだが、マイクが増えると、それに伴って位相が干渉していく。組み合わせることで音の焦点がボヤけたり、音同士が打ち消しあったりすることもある。まるでそれは人のようで、1本のときはひとつの思想しかないのに、2本になるとふたつの思想になり、3本4本と社会のようになっていく。
彼は基本的なドラムセットの音に、しっかりと部屋の音、壁の反射音も拾っていく。主役のドラムセットだけではあのようにかっこよくはならない。主役だけではなく、反射し響く空間が大事なんだと思った。私たちの住む世界のように。

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