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経験・思考の振り返り④~物流×数理最適化の案件(問題を複雑にするものたち)~

※ヘッダー画像の出典:esri

前回は案件を進める中で情報源としてお世話になった方たちを紹介しました。
今回は私が取り組んだ案件について、現実問題ならではの複雑なポイントをかいつまんで紹介できればと思います。

「シンプルに割当問題に定式化するだけ」と思いきや?

「各納品先への出荷を、どの倉庫が担えば費用が最小になるか」という問題なので、m個の倉庫→n箇所の納品先の割当問題として定式化して、運ぶ量×距離の合計が最小になるようにすればサクッと終わると思っていました。
しかし、後述の要因によって定式化はどんどん複雑になっていくのでした!

問題を複雑にしてくれた要因たち

  • 特定の倉庫に負担が偏る
    物量×移動距離の最小化だけを考えると、特定の倉庫だけ午前4時まで稼働してくださいみたいな結果になります。全自動化済みの倉庫ならまだいいのかもしれませんが、物流の世界はまだまだ人力の作業が多いので上記のような結果は避けなければいけません。

  • ケースとピースで話が変わってくる
    例えば12個入りの段ボールのような単位で運ぶものを「ケース」、消費者が手に取るような商品1点単位のものを「ピース」と呼びます。
    大口の納品先ならば基本的にどの商品もケース単位での納品ですが、小さめの店舗への納品ならば「商品Aを3点、商品Bを2点、…」みたいにピース単位での納品になります。
    この違いによって出荷作業は大きく異なります。

  • 倉庫によって得意なことは違う
    同じ企業の倉庫でも、建てられた年代や目的によって設備が大きく異なることがあります。
    マテハンと呼ばれる機械設備が入っているところもあれば、ほとんど人力で作業しているところもあります。
    自動化設備が豊富な倉庫だと、先ほどのケース単位での出荷は機械が自動的にピッキングして仕分けまでしてくれるのでケース単位を超効率的に扱えます。こうした倉庫ではピース単位の出荷作業も機械化が進んでいることも多く、ベルトコンベアに流れてくる折り畳みコンテナに、何を入れるべきかが画面に表示され、重量を測って入れられたことを確認したりしてくれます。
    一方で、人力の倉庫では大きな買い物カートみたいなものに折り畳みコンテナが4つほど載せられ、必要な商品をとりに倉庫内を駆け回る形態がとられています。ケース出荷に関してもフォークリフトや人手によってケースを取ってくる作業になります。
    自動化が進んだカートではケース出荷もピース出荷も、自動化されていない倉庫よりも生産性が高いです。しかし、ケース出荷の生産性の高さ度合がより大きいため、ケース出荷はなるべく自動倉庫に、ピース出荷はなるべく人力倉庫に任せた方が全体の生産性が高いといったことが生じます。
    したがって、多少距離が離れてもケース出荷である納品先は自動化倉庫に寄せた方がいいかもしれないということになります。

  • 運賃形態は複数種類ある
    物量×移動距離で運ぶ費用の代理として良さそうには聞こえますが、色んな運送会社さんに運んでいただいており、運賃の計算方法が様々です。
    どれだけの物量を運ぼうと、1台のトラックを一日拘束するから同じ金額になる「車建て」や、何ケース運ぶかで決まる「口建て」などがあります。この違いを無視すると現実と大きく乖離してしまうこともあります。

他にもいろいろあった

上記以外にも問題を複雑にする要素がたくさんありましたが、このへんにしておこうと思います。
ちなみに、このような複雑さを影響が小さければ無視することや、要素自体をなくせないか模索するを検討することも重要です。
例えば実際の運賃の契約方法自体を全て車建てにすることも可能かもしれません。今回記載したものはいずれも変えることができなそうだったため定式化に取り入れることにしました。


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