【小説風プレイ日記】超探偵事件簿 レインコード【0章 解決編#9】
©スパイク・チュンソフト | RAINCODE
『…違うぞ。私は犯人ではない。』
梯子を登った先は列車の上だった。
トンネルの中を進むアマテラス急行の上で佇むジルチさんは「もう…放っておいてくれ…!」とだけ言い残し逃げ去ってしまった。
『あっ、逃げたよ! ご主人様、追って!』
「う、うん!」
逃げるジルチさんを追いかける中で、ジルチさんはボクらに問いかける。
1号車で見た死体はエイフェックスさんの死体だった。
だけど次に発見したその死体は5号車に移動していた。
列車内をひとつずつ調べていったボクらを追い越してどうやってジルチさんはエイフェックスさんの死体を移動させた?
トンネルの先にあった分かれ道、今度はこの謎を解かないといけないみたいだ。
「列車内は通らずに、列車の外から死体を運んだなら、ボクらを追い抜かす事もできるけど…」
「いや、それは不可能だ…。」
「不可能だ…不可能だ…不可能不可能…」
「フカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウフカノウ…」
「うわぁ! ジルチさんも…謎怪人に!?」
『やっちゃえ、ご主人様!
グチャグチャの肉塊になるまでぶっキルしてやれぇ!』
☩ ☩ ☩
「列車の中を通ってないなら、列車の外から死体を運んだとでも言う気か?
窓は嵌め越しで、ドアは停車しないと開かないんだぞ。もちろん列車は停車していない。
窓もドアも使えないのなら、外から死体を運ぶなど不可能だ。
他に走行中の異常があった訳でもあるまい…。」
「いや、異常ならあったはずだよ!
ボクが2号車と4号車にいた時の"停電と揺れ"だよ!」
「バ、バカな事を言うなぁ!
あんな停電と揺れがなんだと言うんだぁ!」
謎怪人ジルチは動揺してる。
たぶん死体の運搬に、列車の停電と揺れは関係があるんだ。それを証明することができれば…。
「停電も揺れも関係ない。どちらも偶然発生したに過ぎない!
停電は単なる接触不良だった!」
「いや、停電が起きたのは接触不良のせいなんかじゃなくて…。
あれは、メインコントロールシステムが喪失して呼びコントロールシステムに切り替わったせいじゃない?」
「システムが切り替わる際の1秒間…それが、あの時に起きた停電だったんだ。」
「ぐっ、うぅ…」
謎怪人ジルチは、悔しそうにうめき声をあげるとそのまま列車に乗り込み逃げ出した。
『あっ! 逃げたっ!
逃げる謎怪人は、悪い謎怪人だよっ!』
「いい謎怪人なんているの!?」
『いいから追うよー!
今の謎を追求して、謎怪人をにぶっキルぞー!』
そのまま飛び出していった死に神ちゃんから伸びる鎖に引きずられてボクもジルチさんを追いかける。
☩ ☩ ☩
『死体の運搬方法』
『ご主人様、停電の原因はわかったかもしれないけど、それってホントに、死体の運搬方法と関係があるの?』
「喪失したメインコントロールシステムがあったのは、入れ替えに使われた死体があった1号車なんだ。
だとしたら、メインコントロールシステムの喪失は死体の運搬とも関係があるはずだよ。」
でも、ジルチさんはなんでメインコントロールシステムを壊したんだろう…。
死体を運ぶため?
でも結局列車は止まってない。運行記録でも列車は走り続けてたし。
だったら、死体を運ぶ為に壊したとは考えられないか…。
「うーん…死体の運搬に関係しているのは間違いないと思うんだけど…。」
『むむっ! ご主人様があんな真剣な顔で悩んでる…!
じゃあ…オレ様ちゃんも教育係として一緒に考えないと。えーっと…。』
『メインコントロールシステムが喪失して、そのせいで停電があって…で、列車も揺れて…。
…って、そう言えば、あの揺れって、結局なんだったの?』
『トンネルに入る直前に…停電があって…それは…メインコントロールシステムの喪失のせいで…。
でも…犯人が壊したんじゃなくて…だから…停電があったのは…えーっと…。』
『あぁ…停電の前に揺れもあったんだっけ?
列車が揺れ後に…停電が起きて…?』
『あー、もうっ! ワケわかんなーい!』
そうだ、停電の直前の揺れ…。
あの揺れの原因はまだわかってないままだ。
あの時アマテラス急行に"何か"が起きたって事だよな?
あんな揺れが起きるほどの…"何か"が。
その"何か"がメインコントロールシステムを喪失させ、停電を引き起こした…?
それが、死体の運搬にも関係しているとすると、あの時起こった事って…もしかして…?
『ん? オレ様ちゃんってばナイスアシストしちゃった?』
「そうか! わかったぞ!
1号車のメインコントロールが喪失した原因はボク達が乗る列車の編成から、1号車そのものが切り離されたせいだったんだよ…!」
『あのー、ご主人様…。
オレ様ちゃん、ワケわかんないんだけど…1号車が切り離されたって…どーゆうコト?』
「ほら、あの揺れが起きたのって、停電の直前だったでしょ?
あの時、ボク達が乗るアマテラス急行から、1号車が切り離されたんだよ。
その結果、メインコントロールシステムは喪失して、一瞬の停電の後、呼びに切り替わったんだ。」
『でも…なんの為に1号車を切り離したの?
どうして、そんな大がかりなコトを?』
「もちろん死体を運搬する為だよ。
車両ごと死体を死体を運ぶ為に、1号車は列車から切り離されたんだ。」
「車両ごと…死体を運んだだと…?」
ボクの導き出した答えが気に入らなかったのか、立ち塞がるようにして謎怪人ジルチが現れた。
「ふ、ふざけた事を…言うなああああああああああああああっ!」
「1号車は先頭車両なんだぞわ!?
そして、エイフェックス君の死体があったのは、最後尾の5両目だ!
先頭車両を切り離したとして、どうやって、その車両を最後尾まで移動させるんだ!?」
背中に巨大な翼を生やした鳥人ハーピーのような異形の姿に圧倒される。
お、落ち着け…! 落ち着いて…よく考えるんだ…!
切り離した先頭の1号車を、最後尾の5号車まで移動させる方法…そこに答えを出せれば、この謎に決着を付けられるんだ…!
一体、どんな方法があるんだ?
『そう言えば…その"停電と揺れ"なんだけどさ、ご主人様は言ってたよね…。
停電は1回だけだったけど、揺れは2回あったって?』
そうだ…確かに揺れは2回あった。
トンネルに入る直前と…トンネルから出た直後に。
その1回目の揺れで車両から切り離さるているなら。2回目は?
あの時も、列車に何かあったって事だよな?
切り離しに近い衝撃が? トンネルから出た直後に?
……あぁっ! わかった!
「あの時すべての車両がずっと同じ線路を走っていた訳じゃなかったんだ…!
ボク達が乗っていたアマテラス急行は、トンネルに入る直前に線路が別れて複線になっていた…この複線を利用すれば、車両の入れ替えを行う事ができるはずだ!
トンネルに入る前にあった"1回目の揺れ"で、1号車は列車から切り離された…。
その後、切り離さた1号車だけ複線に侵入させ、残った列車はそのまま本線を進み…トンネルから出た後の複線と本線が合流するポイントで、複線を走っていた車両を列車の最後尾に連結させたんだ。
"2回目の揺れ"は、その連携の際に起きたんだよ!」
「普通なら、1車両だけ複線を走らすなんて不可能だけど、全自動のアマテラス急行だったら、事前にプログラムしておけば、それぞれの車両に付いているモーターで自動運行してくれるんだよ。」
「いいや! それはおかしい!
お前が言った方法で車両を入れ替えると、切り離した1号車が接続されるのは最後尾…5号車の後ろになる。
つまり、存在しない6号車になるという事だ。
お前はその存在しない6号車で、エイフェックス君の死体を見つけたのか!?
わかったか! 間違っているのはお前なんだ!
お前の推理は間違っているんだよっ!!」
…いや、間違っない。
きっと、この先に真実があるんだ。
よく思い出せ! 何か見をとしている事があるはずだ!
最初、ボクが駅でアマテラス急行に飛び乗った時は確かに5両編成で止まっていた。
だってボクは1番奥の車両にあった1号車に乗ったんだから。
何となく興味本位で、乗ったドアのすぐ近くにあったドアを調べたら、先のない車両へのドアはロックされていた。
まぁ、開いたら外へ放り出される訳だからその時は当然だよね…って流してたけど…あれ?
その時、ある人の言った言葉に違和感を覚えた。
「そうか…そうゆうことだったんだ…。
ボクらが乗ったアマテラス急行は5両編成じゃなくて、最初から4両編成で走っていたとしたら?
そうすれば、切り離した1号車をボクに5号車だと思わせる事ができるはずだよ!」
「この計画に沿って駅に用意されていた、"別の1号車"だったんだ。」
『本物の1号車がホームで待ち受けてたってコトは、そこにいた保安部の連中も、それを見てたはずだよね?』
『じゃあ、やっぱりあいつらもグルだったんだね!』
「むしろ、待ち構えていた保安部が"別の1号車"を用意したとも考えられるよ。」
「うっ…! うぐぐ…!」
謎怪人ジルチはまた消え去った。
☩ ☩ ☩
『大進撃 死に神ちゃん』
「なんか…雰囲気が変わったね。」
『真実の前の静けさってヤツかも。
何があるかわからないから慎重にね。』
死に神ちゃん曰く次が最後になるらしい。
景色も今までのエキゾチックな迷宮と違って、白を基調とした神殿のような神々しい見た目の建物へと変わった。
この謎解きで最後だと言われると心配になってくるな。
真実を手に入れて外に出たら、問答無用で捕まっちうんじゃ…。
死に神ちゃんは謎の自信で、真実さえ手に入れば、犯人は絶対に逃げられないって言ってたけど本当かな…?
☩ ☩ ☩
「な、なんだ…これ…!」
神殿の最奥に到着すると、ガチガチに護られた強固な砦の上に陣取る謎怪人ジルチがあった。
見た通りの最後の砦って奴らしい。
「お前なんかに、この砦を壊す事は不可能だ!
諦めてさっさと帰るんだな!」
1号車と5号車を入れ替えた痕跡…それは"歪んだプレート"で間違いない。
全体的に荒られていた車内だったけど、あのプレートだけがやけに念入りに燃やされていた。
あそこは、もともと"1号車"と書かれていたからだ。
それをそのままにしておくと"5号車"を"1号車"に偽装するのに邪魔だから…。
だから、あんなに念入りに燃やしたんだ!
「ただ燃えやすい場所にあっただけだろう。
お前の推理を裏付けるものは何もない!
あそこが1号車だったという決定的な証拠はない!」
「証拠ならある!」
「な、なんだとっ!?」
「救護室にあった血痕だよ!
あれは1号車に入ろうとした際、ボクは割れたガラスで指を切ってしまって…そのまま手を伸ばして内鍵を開けた時に、付着してしまったものなんだ。
ただ、あの血痕は解錠された状態では隠れてしまう場所にあったから…そのせいで、犯人は見過ごしてしまったんだろうね。
この1号車で付けたはずのボクの血が、5号車にあったという事実が…車両をすり替えたトリックの何よりの証拠だ!」
「ま、まだ…だ…ああああぁぁぁ!」
『えー、まだやるのー?
早くぶっキルさせてよー!』
「1号車が5号車になったんだとすると…救護室に隠れていたはずの犯人などうした?
お前だって5号車を調べたはずだ!
だが、犯人などいなかっただろう!!」
「いや。5号車のすべてを調べた訳じゃない。」
そうだ。ボクは入れるところはすべて調べてまわったけど一箇所だけ調べられなかった所がある。
「犯人は…ずっと鍵が掛かって開かなかったメインコントロール室に隠れていたんだ…。
あそこなら、鍵がないボクでは絶対に入れないから。
きっと、1号車が複線を走っている間に、犯人は救護室からあの場所に移動したんだ。
列車を管理するアマテラス社が事件に絡んでいたなら、犯人があそこの鍵を持っていても不思議じゃない…。
そして、覗き窓からも見えない死角に身を潜め、ボクをやり過ごしたんだ!」
「ち、違う…私じゃない…。
わ、私は…犯人なんかじゃ…ない。」
今までの自信満々だったジルチさんはどこへやら。
片膝をつき顔面蒼白で狼狽えている。
『後は、トドメを刺すだけだね!』
キリが悪いですが、今回はここまで!
真犯人はジルチでしたね。
皆さんは今回の事件どこまでわかりましたか?
感想はまたべつのところで書こうと思います。
それではまた次回、アマテラス急行殺人事件のフィナーレをお楽しみくださいませ。
to be continued..
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