夢分析の不思議な世界
「なに夢みたいなこと言ってるんだ?」「夢見る夢子さんではダメだぞ」等々、夢はたいてい荒唐無稽で愚かなものとして扱われますね。
しかし心理学では、この夢を無意識からのメッセージと捉え、重視する研究者がいます。フロイトは「夢分析」を著しました。ユングは「個人的無意識」だけでなく人類共通の「集合的無意識」からも夢を探りました。
この「集合的無意識」は世界中の神話やおとぎ話、未開人の心性などと共通するものです。
夢分析は、夢占いとは全く異なります。
見る人によって、同じテーマやシンボルが表す内容は違いますから、夢見手一人一人と話しながら分析をしないと「夢を解く」ことはできません。
しかし典型夢と言われるような、人種を超えて比較的多くの人が見る、共通した意味合いを持つ夢もあります。
例えば思春期、青年期に見る「歯が抜ける夢」は、これまでの段階を抜けて新しい段階に入る、イニシエーション的な意味を持つ夢と言われますし、「親が死ぬ夢」は、親の価値観をぶち壊し、親からの縛りを断ち切って成長していく時に見る夢とされます。
「親を殺す夢」はこのさらに能動的なバージョンと言えるでしょう。また、しばしば夢の中の車は自我を表し、誰が運転しているかが問題になります。人生のハンドルを握っているのは自分か、誰か他の人で、その人の言いなりやお任せになっているのか...。
このように、夢は意識が気づいていない面を伝える役割があるとされます。そのメッセージに気づかないと何度も繰り返し同じ夢を見たりします。例えば、トイレはしばしば心理的な悩みや問題を洗い流す場を表しますが、トイレに入りたいけど無い・使用中である・汚くて使えない、といった夢を何度も繰り返し見る時は、心の問題が解決されずに溜まっていますよ、ということを伝えている可能性があります。
また、夢には補償機能といって、現実に欠けているために辛いことを補うような役割もあります。
例えば、何かの事情で家に引きこもり不活発な毎日を送る人の夢が非常にアクティブであったり、ずっと会えない人に会う夢を見たり、毎日いじめを受けている人が大勢の人と仲良く話している夢を見たりするのがこの例です。
さらに辛い危機的状況においては、より深い「集合的無意識」の層から出てくる、心にエネルギーを与えるような絶景や曼荼羅図など、強烈な感動を伴う夢を見ることがあります。
皆さんはそういう夢を見たことがあるでしょうか。鮮烈な、強いインパクトを伴う夢で、眠りから醒めてからもしばらくぼんやりしてしまうような夢です。Big dreamと呼ばれたりします。
逆に言えば、そうした夢を見る時には、何か心理的に危機的な状況にある、ということかもしれません。
夢には他にも、今後内的に生じることの展望、予知・警告といった機能もあります。
このように、夢の世界は探っていくほどに不思議で魅力的です。
しかしもし、起きている間中夢のことを考えている、夢に見たことが気になって現実が疎かになる、といったことが生じたら、いったん夢のことを考えるのはお休みにしましょう。
夢には夢の文法がありますから、興味がある人は占い本ではなく、心理学の専門書を読んでみてくださいね。