第4回牡丹餅句会

牡丹餅句会主催者・選者、雪上牡丹餅の第一川柳句集『降ってきたリンゴ』絶賛発売中です(自称)。ぜひ読んでください。

第4回牡丹餅句会には10句のご投句がありました。
だいたいこのくらいで落ち着くんでしょうか。
いいね、リツイートして頂いた方含め、皆さんありがとうございました。
以下、入選句発表と選評、軸吟、選外評、総評です。
題は、「死」。


入選句

0/西沢葉火

第1位

引用ミスでも文字化けでもありません。これで投句が来ました。
…マジかよ。1句出しだぞ!?思いついても普通やるか!?…『HUNTER×HUNTER』のボマーみたいになってきた。
…カッコよすぎるだろ。第0回牡丹餅句会の題「ゼロ」がここで復活!?適当に決めてたとまでは言わないが自分で考えてきた題でブーメラン食らうとは。「入選するには選者にインパクトを与えろ」という言説もあるが、いくらなんでも選者にインパクト与えすぎだろ。完全に想定外。1文字で殺された。ど真ん中ストレートだけで完全試合された気分。全く歯が立たなかった。
死によって人間はどうなるのか。そもそも死といっても用語としての死かもしれない。野球用語としての死であれば、アウト。別に生物として死ぬ訳ではない。ただし、アウトカウントを増やしてしまうことになる。それが続けば上で言ったようにスコアボードに「0」が並んで完全試合されてしまう。ゲームセット。チームは敗北。トーナメントならチームは終わり。ある意味死ぬ。
人間は生物としてどこをもって死ぬのか。脳死説、心停止説、三徴候説いろいろな考え方があるだろう。
人間が生物として死んだらどうなるのか。信仰によって考えも異なるだろう。輪廻転生か最後の審判か。『ブラッシュアップライフ』や『DEATH NOTE』、『SHAMAN KING』など、作品によっても死後の世界は異なる。死という題に「0」をもってくるのは『DEATH NOTE』っぽいか。
ボマーのことを冒頭で書いたら「0」が時限爆弾、しかもタイマーが「0」を指してる状態を連想した。「0」をれい、と読むなら、「0」の形もあって、梶井基次郎の『檸檬』も連想する。爆発すれば死。もっと現実的なことを言うと、病院のベッドにいれば、心電図がピーと音が鳴って数字も「0」になるだろう。
そういや『4分33秒』みたいに無音の曲みたいな雰囲気もあるかも。下手に言葉を使わないことで、周りで起きている死を意識させるということか。私たちが川柳を読んでいる時に、戦争、飢餓、疫病、災害などで世界では多くの人が死んでいるはず。
…でもこの句、第0回に題「ゼロ」を出してるという牡丹餅句会の経緯を踏まえているからこそ魅力が最大限に出るんだろうな。初めて行った対面の句会でいきなり出すのとは訳が違う。そもそも披講するとしたら何て読むんだ?ゼロ?れい?「それは川柳ではない」という人絶対出そう。マヂカルラブリーみたいな論争になるのだろうか。たぶん2音の句。まぁ、でも川合さんの蚊の句(といえば通じるだろう)はたぶん1音だからあってもおかしくないんだろう。
…Googleformで回答必須にしなかったら下手したら空欄で投句していたかも。そうしたら選者はどう応えるべきなのか。それは川柳なのか。
川柳とは何か。そんな問いも投げかけてくる1句。

軸吟

氏紙視肢四歯誌詩詞志市資士師子死史/雪上牡丹餅

選外評

死亡診断書そんなにはいらない/ミテイナリコ

個人としてはそりゃそんなにはいらない。社会全体としても死亡者がそんなに出たら社会を維持できない。一定の死亡者が出て新しい世代が生まれ、社会は動いていく。だから「そんなにはいらない」。

命題で死装束も汚れてる/成瀬悠

「死装束も」の「も」ってなんだろう?他に「汚れてる」もの…。心か?でも、その前に、「命題」という抽象的・論理的なもので「死装束」に物理的な「汚れ」をつけることができるのか?

花畑そこも霊場おびえるな/水の眠り

「花畑」と「場」という字を見て一瞬花畑牧場を連想した。ただ、本句では牧場ではなく「霊場」。「そこも」の「も」ってなんだろう?他の「霊場」…。日本三大「霊場」とか?
「花畑」の花の種類によっては死を連想するのが自然な場合もあるだろう。ただ、死に全然関係ない花の場合はどうだろうか?花もいつか枯れて死んでいく。そういう意味ではどんな「花畑」も死で溢れていると言えるかもしれない。そういう意味での「霊場」か。

神さまは不公平なく死を呉れる/春舟

そうだといいのだが…現実はどうだろうか。栄養失調、疫病で短命で死ぬ人もいれば、高度な医療で長生きする人もいる。これって公平だろうか。それとも皮肉?死ぬことは同じだろうという捉え方?

坂道を転がるような死を見たか/湊圭伍

「死を見たか」は一般的な問いだろうか、「どうだ、俺はこう死んだぞ。ちゃんと見たか?」という個人的な問いだろうか?
「あんなに元気だった人がねぇ」みたいな話?
それとも「坂道を転がるような死」とは、チーズ祭りのようにみんなで何かを必死に追いかけて競争する中での死のこと?過重労働。過当競争。

死神とベランダで吸う巻きタバコ/森砂季

「死神」と一緒というシーン。『DEATH NOTE』みたいだな。リュークはリンゴが好きだったが、「タバコ」好きな「死神」もいるのだろうか。それとも、「死神」はゲホゲホ咳き込みながら人間に付き合って「巻きタバコ」を「吸」っているのか。そうだとしたら、「死神」にしては弱いやつだな笑
「巻きタバコ」を「ベランダで吸う」点はどうか。他人のことを気にしているのか、単に外の風にあたったり、夜空の星を見たかったりしたのか。前者ならまた弱い「死神」だな。
でも、なんで「巻きタバコ」なんだろう。水タバコでも音数的には問題ない。ってか水タバコの方が変わった光景かも。自然?な方を取ったのか?

水中でKGIを議論する/まつりぺきん

「KGI」はKey Goal Indicatorだと思うけどな。なんで「水中」でそんなこと「議論する」んだ?まともに「議論」できないだろう。ちゃんと会議室か会議システムとりゃ良いのに。「KGI」についての「議論」がまともに行われていないことへの皮肉か?

ふたりでは神になれない温い海/林やは

「ふたりでは神になれない」とは、『DEATH NOTE』の夜神月の「新世界の神となる」という発言のことを言っているのだろうか?ラストはすごかったな。
「温い海」は前からつなげて読むべきか、切って「温い海」単体で読むべきか。「温い海」をそのまま読むと温暖化を連想した。月の考える悪が蔓延る世界では、環境問題なんて誰も真面目に考えず、自分の利益だけを考えているということだろうか。

総評

今回は特にレベルが高かった気がします。入選させたい句は複数ありました。そのため、選評も選外評もやや長めになってます笑
ただ、その中で西沢さんの句のインパクトがすごかった。選評参照。

お知らせ

次回は第5回牡丹餅句会です。
題詠1句。題「ゴン」投句締切7/29㈯23:59

次々回は第6回牡丹餅句会です。
題詠1句。題「蝋人形」投句締切8/5㈯23:59

ご投句お待ちしています。

なお、7/28㈮20時〜『降ってきたリンゴ』の批評会を開催します。評者は西脇祥貴さん、著者の私も参加し、第一川柳句集出版の裏側、掲載句についてお話させて頂きます。ツイキャスで配信します(Twitterで宣伝、ツイキャスのご案内をさせて頂きます)。奮ってご参加ください。

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