【英語学習】『いっしょに翻訳してみない?(越前敏弥著)』を読んで
英文法の復習がてら、たまには試験特化でないもので勉強しようと選んだ『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文』の進捗があまり芳しくないので、同じ著者の方の中学生向けの本でちょっと気分転換することにした。
日本語と英語の力を伸ばす特別講義
この本では、著者が中学二年生を対象におこなった全六回の特別授業の内容がまとめられている。
オー・ヘンリーの『二十年後』という作品を読みながら、生徒たちが翻訳について学んでいった過程の記録だ。
中学二年生までに習う英文法で作品を全て理解しきれるわけではないということを前提に、一見難解で複雑な文章にもわかりやすい説明がされているところがありがたい。
一緒に授業を受ける気持ちで
「はじめに」では著者の経歴や翻訳の仕事などが紹介されている。
本を読み進める原動力になったのは、この最後の一文だ。
本編の構成
本編部分はいくつかの章に分かれていて、各章で小説のどの部分を取り扱うかは、章の初めの「学習範囲」という部分で触れられている。
また、課題(翻訳にチャレンジ!)や授業の中で生徒向けに実際にした文法関連の質問なども収録されているので、本当に一緒に授業を受けているような気分で読み進められた。
特別授業を受けた生徒たちと同じ中学生、あるいは大学に向けて進路選択をする頃に出会いたかった。
『翻訳の楽しさ、ここにあり -最上級のいろいろな訳し方-』
第3週の授業では、前週で課題になっていた次の英文の翻訳を振り返っている。
答えを見る前に、ぜひ自分ならどんなふうに訳すか考えてみてほしい。
この講義では課題に取り組むにあたって辞書を使っても良いとされているし、調べることはむしろ推奨されている。
読者も安心して(?)知らない単語を調べてから翻訳に挑戦できる。
学校の授業なら「そのまま訳す」ことが求められるけれども、ここで触れられているのは翻訳のおもしろさ、奥深さだ。
生徒たちが最上級の英文法や複数形の要素を取り入れて訳した文章と、その解説を一部引用する。
著者は生徒たちのそれぞれの訳のいいところ、気をつけるともっとよくなるところを指摘していて、それが読者の気づきにも繋がる。
翻訳者を生業としている人が文章のどんなところに気をつけているのか、事細かにわかって面白い。
黒田さんの文章で登場した複数形の部分を、著者は「そこにはどこよりも高いビルやにぎやかな駅がひしめいています」という文章で表現していた。
解説部分でこんなふうに説明している。
最上級や複数形の含まれたこの短い英文だけでも、たくさんの発見がある。
課題に挑戦してみて
本文を英文と訳文両方で読み、全部の課題に自分でも挑戦してみて、「みんな感性の方が鋭い……!」となる場面がたくさんあった。
学校の英語の授業では教科書的な型にはまった訳をよしとされてきたので、著者の訳文やら解説を見て「ぐぬぬ」となった部分もある。
全編を通して、言葉そのものや言葉を扱うことに対する発見が多かった。
特別講義は中学生向けに行われたものでありながら、大人が読んでもじゅうぶんに面白い。
特に、言語や翻訳に興味のある人は楽しく読めると思うのでぜひ。
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