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測定値至上主義派の限界

過去記事でAudio Sience Review(以下ASR)フォーラムを取り上げました。
今回の投稿はそこから派生して、私の経験から個別の案件を語る形式となります。

英CHORD DAC3機種のASRレビュー

ASRにて相当数のレビュー投稿が蓄積されてきました。私が所有するCHORD QUTESTと、上位機種のHugo TT2、そしてフラッグシップのDAVE。3機種の測定結果が揃いました。

この結果を見て意外に思う方も、いるかもしれません。3機種とも、ここで確認できる差はSINADで2~3db程度でしかなく、しかも一番良好な結果だったのはDAVEではなくHugo TT2でした。
現在では10万円で買えるTopping D90SEがSINAD:123dbで、CHORDのDAC群は112~115dbとなっています。ASRではエントリークラスのQUTESTには一定の評価を与えていますが、DAVEにはその存在価値が分からないという態度です。

QUTESTとDAVEの比較

では私の体験からQUTESTとDAVEの違いについて印象を書いてみます。Hugo TT2は聴いたことがないので省きます。DAVEは所有こそしていませんが、複数の環境で何度も試聴していますので、普段聴いているQUTESTと比較する程度のことなら出来ます。
確かに奥行方向の描写力と高域情報量においてはDAVEの方が高性能です。しかしそれはASRの測定結果の相関性としてはあまり強く表れていないようです。
性能面よりも私が強く印象に残っているのは、音のキャラクターと品位によってクラス分けされていて、その振り分け方と塩梅が絶妙なのです。

QUTESTは、「音楽の楽しいところを引き出す」点に長けています。QUTESTとは、その外観が小さくて可愛らしいという名付けかもしれませんが、私の感覚から別の言葉を当てれば「チャーミング」と表現したいですね。(古い?)
DAVEではより「アキュラシー」で透明感が際立つ音になります。動的な躍動感のQUTESTに対して、極限までに背景ノイズが抑えられた何もない空間から静かに滲みなくポッと音が立ち上がる、「静的な」空間表現がDAVEの独自性です。そしてこれはハイエンドオーディオの文脈で、新たな表現技法をCHORDは確立したと言えるでしょう。

測定値至上主義派の限界

私はここに彼等(ASR)の限界というのが見えました。それは見えていない領域よりも、思慮を巡らせず「見ようとしない」その態度を私は指摘しているのです。それは閲覧する側にとっても広く悪影響を与えるものとなりかねません。
彼等のものさしで価格競争力のない製品は、全て存在価値がないのでしょうか。
そのプライスタグに十全な正当性を見出せないにしても、そのメーカー、機器特有の魅力というものがあるはずだ。そこを汲み取ろうという精神は趣味を取り扱うフォーラムにおいて、当該の住人は幾ばくか持ち合わせていて欲しいと思うのです。

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