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#3 行き止まりの夜

ダンスホールには、かつてのアイドルたちが残していった曲が電子音に変わって鳴り響いていた。 形を覚えていた。 あの形は、彼に違いない。 プラスチックのコップを片手に零しそうになりながら、夢中でその形に近づく。 逆光で表情は見えない。 でもたしかにその横顔、髪型、肩のシルエット、どれを取っても彼だった。 見つけた!とばかりに駆け寄った。 「おつかれさま!」 コップを彼の手元に近づけにいく。 まだ表情は分からない。 真っ暗の中、ミラーボールの緑の光線が眩しすぎて

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