【読後感評】糸井重里『みっつめのボールのようなことば。』は余白がありすぎてつい思考してしまう

糸井重里さんのボールのようなことばシリーズ、3作目。
1作目から全部好きなのですが、
3作目も相変わらず素晴らしいので、
言葉をいくつか抜き出してちょっとコメントを。


「あ、いいこと考えた!」と、
こどもたちはよく言うけれど、
大人になっても、それを言い続けている人が
いろんなことを変えるんだと思う。

いいと思ったものを「これいい!」というのは難しい。
思いついたことでも、見たものでも。
「これいい!」と思うものを「そうかなあ?」と言われるのは
ちょっと恐ろしいことだし、とても悲しい。
そんな悲しい思いをするくらいなら言わなくていいかな、と。
それでもある種の鈍感力を持って、
「これいい!」をいい続けて、そして動き続ける人は、
何かを動かしているし、
逆に、動きがあるところにはこれが必ず存在していると思う。

これをやっている人は、最初にこう考えている気がする。

「いちばんいい考え」を探してぐだぐだやってるよりも、
「けっこういい考え」に合わせてどんどん進んでっちゃったほうがいい。
「いちばん」なんてものは、やがて「ただのふつう」になるんだし。

なにかを始めるときは、
「つべこべ言わずとりあえず始めてみる」
というのが大事だなと思う。
始めるからには確実に成功させたいので近道を知りたくなるけど、
どれだけ知ってもいきなりうまくやれた試しがない。
とりあえず始めてみて、
「もっとうまくやりたい!」と思ったときに初めて
いいやり方を探せばいいのだと思う。

今年は英語を勉強します!


「うまく伝えるのはむつかしい」という場合は、
たいていが、とてもおもしろいことである場合が多い。

さっきtetoというバンドのライブを紹介しようとして断念しました。
あまりにいいライブなのに、それをどう表現していいかわからない。
この言葉はとても救いになる。
表現できないことも「いい」と思っていいのだと。
こう思ってないと、いいものをいいと思えなくなってしまいそう。


「だれもほめてくれない」というのは、
どれくらいつらいことなのだろうか。
正直に言うと、ぼくにはけっこうつらいことだった。
でも、そういう気持ちが少なくなってからのほうが、
いろいろたのしくなった。

いままさに、僕は仕事でこのフェーズにいる。
褒めてもらうための仕事ではなく、本当にいいものを作ろう。


「100円のりんごがあるとき、
100円よりもりんごのほうが価値がある」

お金は、ほんとうに記号なので、
100=100なのだが、
りんごは、誰にでもではないけれど、
100=100+α というマジックを見せてくれるのだ。
だから、ぼくらは100円ではなく、りんごをつくる。

りんごのほうが価値があると、ぼくは言いたい。
そっちのほうが真実なのだと、ぼくは思っている。

どきどき「これがこんな値段!?」と思うようなものがある。
Amazon Primeみたいに、ものそのものの価値のこともあれば、
ここで言うりんごのように、付加価値であることもある。
広告会社の仕事というのはこういうことなんだなと思う。
シンプルなことを入り口にしたほうがうまくいきそう。


仕事についてもうひとつ。

足りていて過不足ないだけでは、人にとって苦しいのだ。「おもしろく」がメシの種になるというのはそういうことかもしれない。生まれたての赤ちゃんだって、おもちゃを必要としてるよ。

マジメに考えすぎるとこれを忘れる。
正しいことを超えて、素敵なことをしたい。

これに関連してもうひとつ。

「狩猟犬」であることを辞めたブイヨンは、これで、晴れて、愛すべき役立たずとなってくれた。

犬は、そこにいるだけでかわいい。
もともとがどういう役割であったかは置いておいて、
この「かわいい」に変遷できるのはとても尊いことだと思う。

昔野村證券に勤めている友達が言っていた。
「ニワトリを一羽飼うとするじゃん。
 最初は『毎朝1個卵をうむからいい』と思って買ったとする。
 でもそのうちに、そのニワトリ自体がかわいくなって、
 ずっと飼っていたいと思うこともあるじゃん。
 株もそうやって考えたほうがうまくいくんだよね」
僕の持っていた金融マンへのイメージが一転した瞬間だった。

「かわいい」をどう作れるかを、突き詰めて考えていきたい。


かつて、ほんとにずいぶん前に、
どういう流れだったか、家人と、
「来世もまたいっしょになりたいか?」
という話になったことがありました。
そのとき、我が愛妻は
「一回飛ばしがいい」と迷わず言いました。
ちょっと残念な気もしましたが、ご名答だと思いました。
ぼくには、そんなことを思いつくこともできないし、
とても相手にそんなことを言えないでしょうね。

なんていい関係性なんだ!
これくらい肩の力を抜いた考え方が、
夫婦に限らず、恋人にも、友達にも大事だなと思います。


とまあこんな感じで、
頭がじわじわと動き始めます。
ぜひ丸ごと読んでみてください〜。



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