さらっと読める300字小説#8 (note甲子園終了記念。ロイヤルランブル参加作品)

「孤島にて」

怖くてたまらない。
俺はただ一人、置き去りにされちまった。いったいどうしてこんなことになったんだ。
時間とともに恐怖は大きくなっていく。ここは無人島だ。おまけに水も食料もない。船を降りたわずかな間に、身一つで取り残されてしまったんだ。

次に怒りがわいてきた。俺を置き去りにした船の連中に対する怒りだ。なんてろくでなしだ、血も涙もない連中だ!
俺は全身を駆け巡る怒りのままに、罵詈雑言を叫びまくり、暴れまわった。
だが、好きなだけ暴れて徐々に怒りがさめると、今度は悲しくなった。俺はここで一人寂しくのたれ死にしてしまうに違いない。

泣きそうになって海に目をやったそのとき、沖合からボートがやってくるのが見えた。
「すまねえ!お前が降りたのを誰も気付かなかったんだよ。遅くなったが、迎えに来たぜ」
俺は安堵のあまり、その場にへなへなと崩れ落ちてしまった。そんな俺を見て仲間が笑う。

「ほら、しっかりしな。次からクソは外じゃなく、船内でしろよ」


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