さらっと読める300字小説#1

「因果」

果たせたなら天国、果たせぬなら地獄。

あたしの願い?それは、こういうことなんです。
あたしは、吉佐って男が葵姐さんに贈ったかんざしなんですよ。姐さんは吉原に売られてきた、不幸な身の上のお方でしてね。惚れた男からの贈り物がそりゃあ嬉しかったんでしょう、あたしを大切にしてくれました。
でもあの男、嫌な身請け話で心底困った姐さんが心中してくれって頼んだ時、せせら笑ったんです。たかが女郎、って。
姐さん、それで死んじまいました。あたしゃ悔しくてね、こうして売られた先の小間物屋で、ずっとあいつを待ってるんです。

さあ、待ちに待った時がきました。胸がドキドキしちまいますよ。
結果はこうです。ああ、忘れもしないあいつの声……

「おやじ、若い女が喜びそうなものはないかい?お、きれいなかんざしだねえ……」

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