さらっと読める300字小説#6

「真夏の夜の妄想ドリーム」

二人の女性が言い争っている。
きつい感じの美人なおねーさんが言う。
「こやつは妾のモノぞ。ほれ、こうされるのが好きであろ」
突然僕の首筋を舐める。ざらりとした舌の感覚にゾクゾク……じゃなく、なにすんですか突然!
一方、小柄でかわいい女の子はこう言う。
「違いますぅ。ご主人様が大事なのは、私の方ですぅ」
黒い大きな瞳をウルウルさせ、僕の足にしがみついて頬ずりする。ついイジメたく……じゃない、構いたくなる。
困ったなあ、モテモテじゃん僕。

そのときだった。

ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ。
電子音が鳴り響く。
僕は、手探りで枕元のアラームを止めた。
「なんだ、夢か……あちー」
枕元には黒猫のヒミコが、足下にはチワワのマナが眠っている。いつものこととはいえ、熱帯夜が続くこの季節にはさすがに暑い。汗びっしょりだ。
暑さのせいだな、あの変な夢は。きっとそうだ、うん。


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