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アルビノと黒染め~神原由佳さん~

アルビノと黒染めシリーズ、第一弾はシリーズ開始のきっかけの一つである番組に出演していた神原由佳さんに黒染めについて聞いていく。

神原由佳(かんばら ゆか)さん
アルビノ当事者の女性。社会福祉士/精神保健福祉士。福祉施設で働いている。日本アルビニズムネットワーク(JAN)スタッフ。

アルバイトで黒染めを意識する

雁屋:最初に黒染めって言葉を意識したのはいつですか?

神原さん(以下神原):大学1年のアルバイトの時ですね。大手のスーパーの陳列とショッピングセンターに入ってるアパレルショップを受けたんですけど、そこで「カラーコードがあって」、「黒染めするなら雇える」って言われましたね。

雁屋:カラーコードも黒染めもそういう時によく聞く言葉ですよね。その時はどうしたんですか?

神原:”じゃあ今回はいいです”ってことでこちらからお断りしました。

雁屋:そうなりますよね。高校とか大学での実習(神原さんの通っていた課程には実習がある)の時はどうでした?

神原:そちらでは言われることはありませんでした。地毛なので配慮してもらってて。染めて黒くない人は”働くのと一緒なんだから”って戻させられてましたけど。

雁屋:よかったです。

”自傷行為に近い”

雁屋:こちらのツイートの”自傷行為に近い”は神原さんだとおっしゃっていましたが、その意味を聞いてもいいですか?

神原:外川さん(MFMS代表、神原さんと一緒に1月14日の番組に出演)が「Abema Prime」(1月14日放送の番組、見た目問題としてアルビノを取り上げた)で言ってたのと似たようなことなんですけど、黒染めしたら、”自分はこれ(アルビノ故の色)で生きていこう”って決めているのに髪の色を自分で決められないってことになるじゃないですか。

雁屋:”見た目を変えるか変えないかは本人に決める権利がある”ってことですよね。

神原:そうです。それに、それって何か意思と行動が矛盾してるじゃないですか。そこまで自分の気持ちをないがしろにしたくないなって思います。それも自分で。

雁屋:そうですよね。

神原:それ(髪を染めさせられること)は何か違うなって。高校生の頃ファッションで染めてみたいと思ったことはありますけどね。

雁屋:私もあります。ファッションで自分の意思で染めるのと、企業に染めさせられるのは違いますよね。

神原:人に言われて染めるものじゃないですよね。

黒染めするかしないかは個人の価値観

雁屋:黒染めしていた方にもこの企画で取材させていただいてるんですけど、黒染めってすごい手間がかかるんですよね。

神原:すごい労力ですよね。黒染めしていた当事者の方の話とか聞いていてもそう思います。黒染めをやめた話とか聞くと、私達は”無理して(黒染めを)しなくていい”って思える世代なのかなって思いますね。

雁屋:そうですね。黒染め、大変ですもんね。

神原:黒染めするにしろしないにしろ、本人が納得してることが一番ですけどね。見た目問題全般で言えることですが、隠さなければ奇異の目を向けられるリスクがあり、隠せば周りに嘘をついているような気がしたり、ライフイベント(結婚など)等でいつかうちあけなくてはならないことに悩んだりすることになります。見た目を隠すことを選んでも隠さないことを選んでもしんどさっていうのはどこかに残るのかなって思います。

雁屋:どっちをとっても、しんどさは残りますよね。それと、アルビノは隠しきることが難しいかなって思います。

神原:そうですね。髪を染めても肌が飛び抜けて白かったり、目が悪かったりするので隠しきるというのは難しいですね。

雁屋:目が悪いの何でって言われたらアルビノって言う他ないですもんね。

神原:やっぱり本人が納得してることが一番なので、黒染めしてでも就きたい仕事があるとか染めた方が楽なら染めるのがいいと思うし、このままでいたいって思うなら染めなくていいと思います。そこは個人の価値観が大事です。

雁屋:自分のことを自分で決められる社会であるべきですよね。神原さんは今、髪の色などに対してどう思ってますか?

神原:もうすごく嫌だみたいのはなくなりましたけど、綺麗だからいいじゃんって言われるのはそれで嫌なこともあったし違うなと思います。苦労もあったんだってことをわかってほしいです。でも、変わりたいとか黒く染めたいとかは思ってません。

少数派の意見も言える社会に

雁屋:黒染めを強要する社会や空気に対して思うことを聞かせてください。

神原:同調圧力が強いなっていうのはすごく感じますよね。

雁屋:そうですね。

神原:皆と一緒じゃないといけない空気みたいなものが子どもの頃から養われてると思うんですよね。例えば、小学校で多数決をとる時に少数派は意見を主張しづらいとか。

雁屋:ありますね。

神原:少数派の意見を言うと変な空気が流れちゃったりしますよね。そもそも少数派の意見を言うことに自信がなかったりします。そういう経験を子どものうちから積んでいくから、皆と一緒じゃないと不安になるみたいなのはあるんじゃないかと。

雁屋:そうですね。

神原:少数派だとしても、意見をもっと堂々と言える空気があったらこの先違うんじゃないかなと思います。

雁屋:この先そうなってほしいですね。

神原:連帯が強いのはいいけど、裏目に出てる時もあるので、よい方向に変わっていくといいですよね。

雁屋:私もそう思います。


大学1年の時のアルバイトで黒染めという言葉を意識することになったが、”このまま生きていこう”と決めた神原さん。

これからの社会は自分の見た目は自分で決められる社会であるべきだ。

執筆のための資料代にさせていただきます。