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翻訳者のつぶやき なんで私が『消える人々』を...その28

講演の後、聴衆がガットマンに拍手する。ガットマンも拍手する。これは自画自賛の拍手ではない…

拍手

【来日記念講演】

ガットマン滞在中、一般公開はしなかったが、サイン会での来日記念講演とほぼ同じ内容で、他の場所でも2回講演する機会に恵まれた。終わると聴衆に拍手されるが、ガットマンも拍手する。拍手を受けてお辞儀することはせず、拍手で返す。頭を下げないので、謙虚さに欠けるのでは、と日本ではち少々奇妙にうつる。しかし、彼が聴衆に送る拍手には、深い意味がある。

今回は正味20分の短めのスピーチを用意してもらった。長めのスピーチの時は、著書『消える人々』で描写された法輪功の証言者を取り上げるそうだ。現在の中国共産党によるウイグル人への迫害は、法輪功に対する拷問・殺人で培った手法が基盤となっている、というスピーチの構成だ。

法輪功をやっていたがために中国国内で迫害を受け、運よく国外に出られた人々を対象に、「自分が拘束されていた環境に何人いたか?」「何人が消えたか?」をガットマンは聞き出し、臓器狩りの犠牲者を推定した。キルガー元大臣とマタス弁護士が全く別の方法で概算したが、ほぼ似通った数字となった。

同様の手法でウイグル人の臓器狩り犠牲者の数も推定しているので、彼の調査も法輪功が基盤だ。

1999年7月に法輪功の迫害が始まった時、ガットマンは、道に迷った観光客のふりをして、地図を見ながら中南海(中国政権の中枢部)周辺を自転車でふらふらしたそうだ。そして、老人がバスに投げ込まれる様子を目撃した。自分のオフィスでは、法輪功とは関係のない職員らも、文化大革命以来の激しい弾圧を前に、ヒステリックに泣き出していたという。

法輪功は1992年に伝え出された。文化大革命で破壊されてしまった中華思想(道家の「真」、仏家の「善」、そして「忍」)が戻ってきた、と国民が進んで受け入れた。しかし、口コミで広がり、7000万人から1億人へと愛好者が増えたことで、法輪功は「脅威」とみなされ、当時の中国国家主席・江沢民が迫害を命じた。

ガットマンは、中国を理解するためには法輪功の理解が不可欠だとして、「中国と法輪功の対立」を自分のジャーナリズムのテーマに据えた。中国共産党政権はヨーロッパにルーツを置く。中華文明の流れとは相入れない。現代中国を読み解くには、この異質な中国共産党の性質を理解する必要がある。

中国共産党政権は法輪功をカルトと定め、ことごとくプロパガンダをばら撒き、国外でも法輪功を擁護する者は異常であるかのような状況を生み出した。

ガットマン、マタス弁護士、故キルガー元大臣も、世界の先々で、イベントが突然キャンセルされたり、議員に冷遇されたり、とにかく様々な不快な思いをしてきている。現状を見て見ぬ振りしなければ、自分の身が危ないと感じる人々が世の中の大半を占めてきたからだ。

だからガットマンにとって、自分の話を聞いてくれる人がいること自体が、すごいことであり、思わず聴衆に向かって「ありがとう」の拍手をしてしまうのだろう。

講演会などで出会った一人ひとりの日本人に、力強い握手をしていた。人間であり続ける大切さを確認させてくれる握手だ。

大好きなお好み焼きは思わず、もう一枚、おかわりしてしまった…
至福…  (浅草のおこげで)

ガットマンのサイン会での講演内容はこちら。
http://jp.endtransplantabuse.org/archives/42732


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