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娯楽の沼から歩み出て

 まずはこちらをご覧いただこう。

 よゐこのふたりのプレイングが楽しそうだったからという理由でヴァンパイアスルビボーズ、いやVampire Survivorsを購入したのが12月の話だ。ニンテンドーeショップで500円、追加コンテンツもひとつが150円程度でたいへんお安い。

 ルールはシンプルで、基本的には30分生き残ればステージクリア(でもクリア判定が出たのち結局キャラクターは死ぬ)。画面狭しとわき出る敵をひたすら倒すか逃げるかしながら30分が経過するまで耐える、そんなゲームだ。
 最初こそあっけなくやられてしまうが、繰り返しプレイしてゲーム内通貨を貯め、キャラクターをパワーアップさせていくと生存時間が目に見えて伸びてくる。このあたりのバランスが絶妙で、『強くなっていく感覚』がしっかりと味わえるのは非常に楽しい。さらにスキルの性能や敵キャラの耐久力など、ゲームへの理解が深まるほど面白みが増し、画面いっぱいにひしめく夥しい数の敵をものともせず30分を耐えきったときの爽快感はまさに極上といえる。
 いきなり追加コンテンツまで購入しなくても、500円のソフト本体だけで十分に遊べてしまうというのも魅力のひとつだ。実績を全開放して、いよいよすることがなくなった……といった時に買ったのでも決して遅くはないだろう。

 と、いうように、このゲームは大変面白い。しかし――しかしだ。
 30分と言いつつも、レベルアップでスキルを選択している時や宝箱を開ける演出の時にはゲーム内時間は止まっているので、一回のプレイにおける実際の経過時間は30分ではない。クリアまで続けるともう少し長くかかり、気がつけば小一時間が過ぎ去っている……ということもしょっちゅうある。一回ですんなり終われればいいが、楽しいゲームはついつい時間を忘れてプレイしてしまうことも多い。成果の分かりやすい、シンプルなゲームならなおさら……。

 本当に優れたゲームは、プレイヤーに大きな幸福感、満足感、達成感、あるいは感動まで――日常ではなかなか到達できない、もしくは到達までに手間のかかるさまざまな快楽をもたらす。ただそれは、ゲームだけに多くの時間を費やす、ということも意味する。
 何かに熱中する時間を否定するつもりはさらさらない。しかしながら、他にも多くの物事に触れ、現実の世界でより豊富な経験をしてからであれば、同じゲームでもより理解のレベルが上がったり、深い感動を得られたりするものではないだろうか。たとえば子供の頃にクリアしたゲームを大人になってからプレイして、新たな発見をする、そんな感覚の。

 ゲームをより楽しむために、あえてゲームから離れる時間も必要――
 そう考えたとき。

 あの伝説的名人の言葉が、至上の金言として燦然と輝きを放つのである。

『ゲームは一日一時間』。


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