見出し画像

手と手のきおく

作品はもちろん、話し方や考え方などが
すてきだなあ、とおもっている方がいる。

ひょんなことから、5日間、東の街に泊まって
彼の展示の手伝いをした。

はじめてとたのしいがあまりにたくさんで
帰ってきたいま、ふわふわと浮いている感じ。

心はまだ、帰ってきていないみたい。
心のぶんの質量が。

最後の日のよる、彼とぎゅっと握手をした。

友人がいった。

「握手をしたなら、また会えるね。
 体温を分け合ったもの同士の約束みたいな。」

わたしもそんな気がする。
だから、その約束をわすれないように、
手の感触をここに残そうとおもった。

 彼の手は、ほんのりあたたかかった。
 すぐに飲めるように冷まされた
 オニオンスープくらい。

 それほど大きくはなく、わたしと同じくらい。

 「シワだ」と感じ取れるくらいの、シワの深さ。

 サラッと乾いているけれど、
 皮膚の向こうに水を感じた。ぶ厚くない。

 力は、強かった。

次に握手をするときは、
どんな手になっているだろう。

ササギュッシワ。じわ…。

そうだ、これからはストリートピアノを
見つけるたびに、「おもいでのアルバム」を
弾くことにしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?