見出し画像

2020.12月 伊勢市クリエイターズ・ワーケーション滞在記(追記あり)

みなさんこんにちは! 伊勢市が運営するクリエイターズ・ワーケーション事業に応募し、2020年12月の中旬の2週間、現地に滞在してまいりました(事業のあらましは、こちら伊勢新聞の記事をご覧ください)。

「ワーケーション」とは「ワーク」に「バケーション」をプラスした新しい造語で、「休暇に乗じてどこかに行って遠隔で働く」というもの。コロナ前まではまさに毎月台北の事務所に行ったり来たりで仕事していたので、私の中ではなじみのあるスタイルです。デザイン業、執筆業に最近はリモート授業も加わり引きこもり多めで「ワー」の方が「ケーション」よりオーバー気味ですが、場所を変えると集中力が高まる私としては渡りに船! 私のライフワークのひとつでもあります『世界のご当地スーパーの取材』を目的に参加し、伊勢のご当地スーパーに頻繁に足を運ぶ毎日でした。

日本のご当地スーパーについて記録した拙著では、47都道府県のご当地スーパーのお惣菜を同じお皿に盛り付けて「スーパーディナー」と名付けています。今回同じお皿を持参して、伊勢らしさを感じるスーパーのお惣菜を盛り付けてみました。

画像1

画像3

画像2

我ながら美しくできました……!(お惣菜というか主食満載ですが)私が選んだ伊勢の味は、おなじみのもっちりやわらか「伊勢うどん」/マグロのづけの「手こね寿司」/お茶漬けでもOKな「あられ」/蒲鉾とはんぺんの間のような「はんぺい」/昆布「あらめ」の煮物。長めに伊勢に滞在する人には、ぜひ一度はこのスーパーディナーの食事をおすすめします。地元の人が普通に食べるものの中にこそ、美味しいものが潜んでいます。伊勢では特に「あらめ」が、関東ではなかなか見られない昆布で、味がしっかり浸みて歯ごたえも最高です。また「あられ」をお茶漬けにして食べるのも伊勢特有のスタイル。塩昆布をちょっと乗せお茶をかけていただきますが、おやつや夜食にしても罪悪感がなく、くせになる味です。

滞在中にはTV局の収録が入り、これらの地元惣菜についての由来や食べ方などをご紹介しました。オンエアについては日程がわかりしだい追記しますので、どうぞよろしくお願いします。(協力:ぎゅーとら様)

この時期スーパーの店先に積んであった伊勢独特の正月飾りも、他に見たことのない大変興味深いデザインで圧巻でした。正月に取り換えるものの、基本的には一年中飾るとのことで、実際入口に掲げている家屋はとても多かったです。

画像10


2週間の滞在のうちには、車で足を伸ばした日もありました。全国からやってくるワーケーションのメンバー約130人の滞在は、2020年11月から2021年3月までの間にばらけていますが、なんとたまたま同時期に友人の編集者・酒井ゆうさんとイラストレーターの上大岡トメさんがいたので、レンタカーでいっしょに出かけてみることに。
向かったのは水難に強い神様が祀られている安乗神社、(時流の)波に乗れるという御利益のあるお守りが、シンプルで洗練されたデザインです。物心ついてから初めて自分で自分にお守りを買ったかも……。それから土地の海女さんたちが参拝に訪れるという石神さん(神明神社)へ。安乗埼灯台にある伊勢特産「きんこ芋」のプリンも絶品でした。日中に車で外に出ることは滅多にないことなので、思いっきり光合成しました。

画像7

画像8

また別の日には地元三重県の友人が車を出してくれたので、古来人々がその汐で身を清めたという二見浦に行き……いっしょにネコを量産しました。

画像4

画像5

画像6

これらは私がデザインした『ネコカップ』『コネコカップ』というバイオマスプラスチック製のオブジェで、砂や雪、あるいは食品などを詰めネコを量産し、世界を平和に導くというプロダクトです。砂のあるところへは必ず持って行き、ネコを量産するのを使命としています。二見浦の砂質は粗めの大きめで、今まで訪れた浜の中でもなかなか個性的でした。

もちろん伊勢といえば!の伊勢神宮にも行ってまいりました。ここではなんと年間1500以上の祭事があるそうです(1日あたり平均3回以上……)。滞在中の12月17日には内宮で最も重要な祭りの一つ、『月次祭(つきなみさい)』の奉幣(皇室より送られた幣帛(へいはく)を奉納)を見ることができました。本宮の近くで整列し行儀良く拝見するため撮影は厳禁。古来より変わらない厳かな一時はタイムスリップしたような不思議な感覚でした。

画像9

とても気に入ってしまったのが伊勢神宮の外宮入り口にある小さな博物館『せんぐう館』。計2回、5時間以上食い入るように展示を見て回りました。20年ごとの遷宮(お社から宝物まで全て作り替える)についての博物館で、なんと館内には外宮正殿の(一部)原寸大模型も。圧巻なのは神宝の数々を完成まで再現した展示で、例えば「鏡を納めるための箱(轆轤箱・ろくろばこ)』は塗る貼る削るetc.など101の工程が非常に丁寧に順を追って示されています。特に手作業や工芸に興味のある人は必見です。

宿泊先は前半後半と違う場所に滞在しました。前半が昭和元年創業、老舗旅館の『星出館』。どこを切り取っても絵になります! 旅館ならではの、毎日バリエーション豊かな美味しい朝食がいただけました。

画像11

画像12

後半の宿は、河崎町に多く残る古民家をリノベーションした『たらちね』。向かい側のデザインショップ『中谷武司協会』共にどちらもアーティストの中谷武司さんとはしもとゆきさんによる経営です。宿のあちこちにはさりげなく中谷さんのアート作品が置かれているのがなんとも楽しく、心が躍ります。リビングの壁に釘と糸で周辺の地図が描かれていたり、トイレの天井が昔シュロ(束子の原料)を入れて運んでいた箱でできていたり。さりげなく手を尽くされた空間というのは居心地がとてもよいものです。
『中谷武司協会』には伊勢神宮にちなんだオリジナルのお菓子『サトナカ』(神様に供える米、酒、塩を原料としたクッキー)や、牛の頭がついた藁の門飾り(注連縄)など、私にとってどストライクなデザインのものばかりでした(前出の安乗神社のお守りも中谷さんデザイン)行動範囲は狭くとも、精神的充実度は計り知れません。。

画像13

画像14

画像15

滞在中に訪れた飲食店もたくさんあります。蔵を改装した新鮮な魚介の居酒屋『虎丸』や『向井酒の店』、サンフランシスコ発のチョコレートショップ&カフェ『ダンデライオン』、コンパクトなフレンチ『cocot』、超絶いかすバー『AHL』など……心の中で再来を誓った場所となりました。

伊勢市役所の須崎さんと立花さんには大変お世話になりました。我々クリエイターの習性?を的確に把握された上での運営は、かけがえのない体験に繋がりました。このコロナ禍以降、事務所のある台北にはおろか、世界のどこにも行けなくなり、移動しながら仕事をしていた私にとって正直生きた心地のしなかった日々に、大きな変化をもたらしてくださいました。事業はまだ2021年の3月まで続くのでご苦労は絶えないかと思われますが、お身体に気をつけてますますのご発展を! そしてまたいつか、伊勢に帰ってきます。

画像16

*オンタイムな滞在記は、森井ユカのFacebookをご覧ください。

<追記です>ワーケーション中に訪れたスーパーマーケットでの取材の様子が、1月26日(火)のNHK『ニュース シブ5時』にて放送されました。『NHKプラス』からは2月2日の18時までこの番組の後追い視聴ができます、後半です。どうぞよろしくお願いします。
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2021012622300

画像17

画像18

画像19

画像20


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?