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第二話シノノメナギの恋煩い

これは数年前に遡る。

わたしは家で「新婚ちゃん、おいでやす」をごろんと見ていた。日曜昼の番組だがルームシェアをしている相方が好きな番組だと言うことで録画しているものが流れている。
わたしは普通にやっている番組もつまらないし、昔からやっている番組ともあって惰性で見ている。

最近司会者がベテラン落語家から若手の落語家に変わったとのことだがわたしはあまり興味はないが素人カップルたちとの年齢差が無くなってとても和気藹々で楽しくなったと思う。

「あー、私っていつになったらこの番組に出られるのだろう」

わたしの横でごろんと一緒にテレビを見ているのはわたしより一個下のアパレル店員寧々だ。彼女とルームシェアをしている。リビング、台所、お風呂場、トイレは共有スペースである。

「結婚したからってこの番組に出る義務はないんだし、なんかわざとらしい演出とか方言とかだして恥ずかしいったらありゃしない」

って言ったら寧々が不機嫌になるだけだからやめておいた。

わたしたち2人とも彼氏はいない。寧々は婚活中と大々的には言うがわたしは……。

「ねぇ、こないだの合コンのメンズとはちゃんとメールできてるの?」

「してない」

「なによ、しなきゃ! 珍しく梛モテたんだから」

「モテたって……ただ連絡先もらっただけだし」

こないだ寧々と行った合コン、もう何回も行ってるけどなかなか次に発展しない。寧々は何度もデートしたり付き合ってたりするけど上手くいかないらしい。だからこうしてわたしとルームシェア続けているわけだが。

「あなた、婚活舐めてるわね。もううちらも三十超えたんだし! モテ期の波に乗らないと!」
「ん、んんーまぁ……次かな」
「まー! 贅沢」

そりゃこないだの合コン、イケメン揃いの寧々の同僚が大学の同期を連れてきてくれたんだけどね。開業医の息子とか社長御曹司とかだったらわかるけど冴えない男ばかりで。
ってわがまま言ってる場合じゃないんだけどさ。

1人ちょっと気になってる人がいたけど……なんというかシュッとしてハニかむと可愛くて。
でもその彼だけは連絡交換できなかったのよね。そこだけが悔やまれる。
だから他の奴らから連絡もらっても気が乗らなかったのかもしれない。

「まぁそんな私も返信してないけどねー」
と寧々はテレビ見て笑ってる。大股広げてお風呂から出てきたバカリのノーメイクで大きな口開けて。
彼女がまだ結婚できない理由はわからなくもない。こういう姿も愛せる人と一緒になれると良いわね。寧々は真面目で良い子なんだから。

とわたしは番組途中だけど立ち上がって風呂に行くことにした。

「入浴剤入れたけどいい?」
「うん」

脱衣所。

寧々の笑い声がここまで聞こえてくる。
ああ、わたしも新婚ちゃん、いらっしゃいに出られるのだろうか。

服を脱ぎ鏡の前に立つ。
膨らみもない胸、女にはついていないモノがぶら下がっている。

……わたしは男だ。体は。

続く
第三話


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