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トイレの回数は1日10回以上……患者さんの外出時のトイレの不安を解消する「I know IBDプロジェクト」

5月19日は「IBDを理解する日」です。推計患者数29万人と、国内でも患者数が多い難病にも関わらず、認知度が1割にも満たないIBDについてご存じでしょうか?

炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)は、大腸や小腸など消化管に炎症が起こり、腫瘍を合併することもある疾患で、主に指定難病である潰瘍性大腸炎とクローン病があります。主な症状は下痢や腹痛であるため、トイレの回数の急増や、食事の制限など患者さんの生活にさまざまな影響があります。

これから社会で活躍する世代である10代から20代で多く報告されていますが、現時点では完治につながる治療法は見つかっていません。国内のIBD推計患者数は約29万人と、指定難病の中でも患者数が多い疾患で、国内患者数は年々増加傾向にあります。

患者さんの外出をトイレの提供で支援するプロジェクトが全国に拡大中

IBDの症状は外からは見えないため、周囲の支援や理解も大きな課題です。そんなIBD患者さんの見えない壁のひとつである、外出時の不安軽減のため、製薬会社アッヴィ合同会社が立ち上げた「I know IBD プロジェクト」。趣旨に賛同した施設・店舗がIBD患者さんにトイレの貸し出しを行うほか、店頭に掲出したステッカーで患者さんに対する支援と理解を可視化しています。始動から2年で、協力店舗数は130社2883店舗(2024年4月1日現在)に拡大。

患者さんからは「I know IBDプロジェクトに何度も助けられました。賛同企業の薬局で『ステッカーを見て……』 と声をかけると、従業員の方が配慮し てすぐにトイレに案内してくれるので有難かったです」といった声が挙がっています。

多様な業界が協力を表明。今春からロードサイド(自動車販売店)の支援先が増加

IBD患者さんの外出(仕事やお出掛け)をサポートする動きは、薬局、 ホテル、美容室など18の業界に広がっています。中には、関東の人気観光地である「川越一番街商店街」も。

川越一番街商業協同組合の藤井清隆理事長は、「よりよいまちづくりを目指して活動をしている中で、困っている方をサポートしたいという気持ちから、I know IBDプロジ ェクトに参加することを決めました。IBD患者さんにも安心して川越を訪れていただき、観光を楽しんでいただけたらと思います」と述べています。


また患者さんは運転中も急な便意に襲われることから、駐車場を備えるロードサイド店舗の協力も増加。今年3月には、自動車販売店「北関東マツダ」(33店舗)が支援を開始しています。

協力を募るポスターを新たに制作。トイレの不安を感じやすい電車内でも啓発広告を展開

5月19日は、日本では「IBDを理解する日」、世界では“World IBD Day”と制定されています。これにあわせて、協力店を募るポスターを制作し、JR九州の主要駅で展開するほか、JR京浜東北線・東京メトロ東西線でのトレインジャック広告を5月13日から実施しています。

最後に、患者さんからのコメントをご紹介します。

女性患者さんからのコメント

日常生活でのトイレに関する困りごとはありますか? 具体例があれば教えてください。

発症から現在までおおむね寛解状態を維持できていますが、毎朝出掛ける前に十分なトイレの時間が取れなかった時には、出社の道中不安になります。また、私の場合はストレスによって腹部膨満感、緊張等によって下痢になりやすいので、そういった場面になりそうな時は事前にトイレの場所等チェックするようにしています。 

仕事中のトイレに関する困りごとはありますか? 具体例があれば教えてください。

今の仕事は職場での事務が基本です。就職活動時から病気について開示しており、就業中のトイレの頻度が人より多いこと等を伝えています。そのため、制限なく行くことができています。プレゼン等がある際は、緊張感から下痢や残便感があり、ギリギリまでトイレで過ごすこともあるので、ウォシュレット付きのトイレでないと安心できないです。 

「IBDを理解する日」に望むことを教えてください。

当事者以外の方がIBDについて知り、学び、理解しようという姿勢を向けてくださるのはとても嬉しく思います。一方で当事者である私は、ただ理解されるのを待っているだけではなく、互いに歩み寄ってこそ理解する道は短くなるとも思っています。年に1度のこの日をきっかけに理解を深め、その先にある日々にアクションを起こせる人が少しでも増えることを願っています。

男性患者さんからのコメント

日常生活でのトイレに関する困りごとはありますか? 具体例があれば教えてください。

自分は治療歴20年超のクローン病です。2か月に1回のインフリキシマブ点滴で病状は安定しています。日常生活において、トイレは調子が良いときは問題ないですが、体調があまり良くないときなどは便意の切迫感や、頻繁な下痢に悩まされることがあります。

仕事中のトイレに関する困りごとはありますか? 具体例があれば教えてください。

事務職内勤なので、仕事中にトイレへ行くことは支障ないですが、体調があまり良くないときは、トイレに行く回数やトイレにかかる時間が長くなってしまいますね。 

「IBDを理解する日」に望むことを教えてください。

IBD患者の見た目は病気でない人と区別がつきません。ですが、体調やトイレなどで困っている患者は多いので、是非「IBDを理解する日」で各種アピールして欲しいです。世間に理解されることで、トイレなどの悩みも緩和されると思います。「IBDを理解する日」でIBD患者の悩みが理解され、悩みが解消されるようになっていけば、病気の人も暮らしやすい世の中になっていくと期待しています。

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