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早稲田大学の「村上春樹ライブラリー」でコレをやってる人がいたらそいつは間違いなくハルキストだ(1)

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ファン大注目の早稲田大学国際文学館(通称:村上春樹ライブラリー)が2021年10月1日(金)開館する。
村上春樹全作品(小説、翻訳、随筆、紀行文、ノンフィクション、対談、絵本)や世界50言語以上に翻訳された作品のほか、小説の直筆原稿、執筆関係資料、インタビュー記事や書評、さらに蒐集したレコード等が村上氏本人より寄贈され、なんと無料で一般公開されるというのだから、世界中のハルキストが22歳の春に恋に落ちたすみれのような状態になっている(=これまでにない衝撃を受け、興奮を持て余している/『スプートニクの恋人』より)

ハルキスト歴20年のライターが、「ハルキストが村上春樹ライブラリーでやりそうなこと」を予想してみた。


やりそうなこと①建物外観を『ねじまき鳥クロニクル』や『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』や『IQ84』の小説と共に連写

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建物を設計したのは、いま日本で最も有名な建築家の隈研吾。隈研吾氏はもともと村上小説のファンで、本建物の設計を依頼されたときはこれまでにないプレッシャーを感じたと会見で語っている。
金属と木を組み合わせたひさしの曲線が目を惹く特徴的な外観は「トンネル」をイメージしており、ライブラリーへといざなってくれる。

ここで、次元を超える系を描いた『ねじまき鳥クロニクル』や『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』、『海辺のカフカ』、『騎士団長殺し』、『IQ84』といった小説を連想して、かばんからごそごそと本を取り出して外観と一緒に写真に撮ろうとする輩がいたら間違いなくハルキストと判断していいだろう。

下記は、開館にあたり、9月22日に早稲田大学国際会議場にて開かれた記者会見より。
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隈研吾氏:村上春樹さんは私がもっと敬愛する作家で、影響を受けている作家です。春樹さんから設計をと頼まれたときは、「大変なことになったな」と。世界的な作家のライブラリーは世界中から注目を集めることになるので、どのようなデザインにしたらいいかと悩みました。
春樹さんからは「新築ではなく古い4号館の改装なんですけど」と申し訳なさそうに言われましたが、これは願ってもない条件だと思いました。
春樹さんの小説を読んでいると、我々が生きている日常の世界から突然「ぽん」と別の場所に飛んでしまうような感覚があります。これを「トンネル構造」と勝手に呼ばせていただいているんですが、同じようになんでもない場所を入っていくと、突然違う世界が開けたら、私が思っている春樹さんの世界そのものをつくれると。とはいえ、建築で「なんでもない感じ」を出すのは難しい。新築の建築はどうしてもピカピカになってしまう。だから、4号館が古くて普通でよかったと思ったんです。ご本人に、「春樹さんの作品って、トンネルですよね」とプレゼンしたときはとても緊張しましたが。

隈研吾氏:「非現実感」をリアルな建物にどう落とし込むか。ひさしのディテールにはかなり凝りました。現実と非現実の境界を見てほしい。

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企画展「建築のなかの文学、文学のなかの建築」で展示されていた、建物の模型


やりそうなこと② 誰も気づかなそうな「トマソン」を見つけて写真を連写

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外観をじっくり見ていると、不思議なものが目に入る。
大隈重信像側の壁の地上3階あたりに、明らかに出ることも入ることもできないドアが残されているのである。

広報担当の方によると、もともとこの建物は隣の建物と渡り廊下でつながっていて、そのときのものだという。渡り廊下は撤去され、不要になったドアも外されることが検討されたが、「突然違う世界に開ける象徴」であるドアを残してほしいと図書館側が伝え、保存されることになったという。

早く建物内に入ればいいものを、超芸術トマソンを見つけて「春樹っぽい!」などと興奮して連写している人がいたら、そいつは間違いなくハルキストである。

やりそうなこと③ 階段本棚から離れようとしない

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館内に入ると、同館のいちばんの象徴ともいえる「階段本棚」が広がる。地下から2階まで吹き抜けになっていて両側の本棚にはズラリと本が並び、どこから見ればいいか迷ってしまう。
陳列されている本は、期間によって入れ替わる。
オープン時は、地下に向かって左側が村上作品を読み解くための副読本が、右側は川上未映子、柴田元幸らが選んだ世界文学の書籍が並ぶ。
選書は着眼点が多様で、階段から地下の棚まで陳列が連続しており、ひとつの興味から手にとった1冊が、あたらしい関心を呼び起こしていくような構成になっていて、永遠に物語世界が続いていくよう。
ちなみに選書は、書店や図書館のプロデュースなどを行っている「BACH」の協力がある。

このエリアの本は、階段のスペースとB1階で閲覧できる。
階段は、下に向かって右側が上り下りする場所で、左側がその場に腰掛けて本を読めるスペースとなっている。

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棚のなかやステップ上にいるフィギュアたちもユーモラス。
階段に座って一人前に脚を組んで本を読んでいたり、宙返りをしながら本を読んだりしているのである。

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本棚で本を見ている自分とは別に、彼らがいる世界が存在するようにも思えるし、リトル・ピープル達にも見えてくる。
まさに異次元空間を夢見心地で行き来しているような感覚で、ハルキストはここを離れられないだろう。

(2へ続く)


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